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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第23話 不毛すぎたカラクリ~間に合わなかったバルサン(2)

「で、1─4号室? ここの住人ってどんな人?」


「ヤな奴よ。変態だし」


 お姉、吐き捨てる。

 突き放すような言い方だ。

 この人が他人をこんな風に言うのは珍しい。


 変態だらけやん、このアパート……。


 そう思いながら1─4のドアをノックすると、横からお姉が扉を豪快に蹴り開けた。

 中から悲鳴が響く。


「キャア! いきなり何だよッ。プライバシーの侵害だよ。訴えてやるからっ! それに、こないだのアレは何なの。ゴキ大量発生! 雨漏りするし、地震でもないのに家は揺れるし。こんな家もぅイヤだ! 引っ越してやるぅ」


 中の人物の性別すら判断できない金切り声だ。


「じゃあ、出ておいき!」


 お姉が勇ましく返す。

 (ちゃ)うやろ、追い出してどうすんねん。家賃払ってもらうんやろ。


「お姉は黙ってて! あの~、お忙しいところスイマセンね~。先月のお家賃をですねぇ……アッ!」


 8畳の狭さの部屋にいたのは、赤い髪の若い男だったのだ。

 見覚えのあるその姿。

 道で転ばされた、コインランドリーで会った、そしてスーパーでケンカした例の失礼な若者だ。


「アッ」

 向こうもアタシに気付いて指差す。

「メガネ桃太郎のお供?」


「お供違(ちゃ)うわ!」


「ああ、メガネ桃太郎の相方だっけ」


「相方でもないわ!」


 じゃあ、何だよ?

 訝しげに尋ねる赤毛を、アタシは睨み付ける。


「じ、事務方や」


 ……適当に答えてしまった。


「フーン。事務方なんだ」


 何だか納得した様子だ。


「あ、あの、違うねん。ホンマは……」


 言いかけた台詞を、空気を読まないお姉が堂々と遮る。


「この男が悪いのよ。この間のゴキブリ騒動の原因よ」


「なんで……?」


「バルサン買って来いって言ったのに、コイツがトロいせいで」


 赤毛は気楽な様子でポンと手を叩いた。


「あ、そうそう。大家さん。買ってきたよ、バルサン。これでいいの?」


 部屋の隅に置いていたスーパーの袋を持ってくる。


「もう遅いわ!」


 言いながらお姉、袋を奪い取る。

 中には大量のバルサンが入っていた。


「大家さん? あの、お金……?」


「……ちっ」


 お姉が舌打ちした。


「こ、この人、パシらせたうえに金払う気もないの?」


 信じられな~い、と若者は呻いている。


 ……読めてきた。

 姉はコイツにバルサン購入を命令してたんや。

 だから赤毛はこの間、スーパーでバルサン大量買いしてたんだ。


 コイツもコイツやけど、それはお姉が悪いで。

 何でも人にさせようという態度がアカン。


「お姉、この人の名前は? まさかここの住人やったとはな」


「あぁ……」


 さも鬱陶しそうにお姉、鼻の頭に皺を寄せる。


「名前ねぇ。ゴキ好き男、だったかしら」


 ゴキスキオと吐き捨てる姉に、赤毛が声を張り上げる。


「ゴキスキオなワケないじゃん! アンタ、人の名前を何だと思ってるのさ!」


 まったく同感や。

 そう思いながらも、アタシは2人の間に割って入った。


「まぁまぁ、それは置いといて。今日のところはアレですねん。1か月分の家賃を頂戴しに参ったわけで。ヘッヘッヘッ」


 できるだけ腰を低く、手を出した。


「キ、キミも何だかいやらしいよね? ボクはゴキスキオじゃないよ。奥菜(オキナ)


「オキナか。アタシはリカや。年は?」


 尋ねるとジロリと睨まれる。


「30歳になったばかりだけど、それが何か?」


「スゴイ若作りやな、自分。もはや若者違(ちゃ)うやん!」


「ま、まだ若者だよ。何、この失礼な子? それに何のこと? ボク、家賃滞納してない筈だけど?」


「は?」


 お姉を見ると軽く肩を竦めてそっぽを向いた。


「確かに家賃は遅れてないけど。いい機会だからこの男、追い出そうと思って」


「な、何言ってんの!」


 姉を問い詰めようとしたところに桃太郎が入ってきた。

 モジモジしながらアタシとお姉を見比べる。


「メ、メガネ桃太郎っ!」


 オキナが顔を輝かせた。


「メガネ桃太郎……? それは余のことか? そちは何者じゃ。名を名乗れい!」


「うわ、何ソレ? 何のネタ? ねぇ、テレビ出たりしてるの? 劇場派?」


「テレビとは喋る鉄の箱のことであるか?」


「いいッ! 日常生活からネタ作り? ね、一緒に写メとってよ」


「そ、それは何じゃ!」


「携帯だってば。それもネタ?」


「おのれっ、小さな化け物めッ!」


 ……アカン。ややこしくてしょうがない。




「不毛闘争2~あらためて桃太郎追い出し作戦・変なキレ方」につづく

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