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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第14話 不毛大作戦!~恋だか変だか、何かそんな感じ(1)

 暗くなってきたので電気をつけた。

 しかし電球はウィーン……と低い唸りをあげてパカパカ点滅を始める。


 嫌や、電球買いたくない。

 引っ越してきたばかりやし、お金もないもん。


「よし! 2,000アンペア喰らったアタシのパワーで、この電球を復活させる!」


 人差し指を突きつける。


「パワー充填~ッ!」


 ……アカン。

 やっぱり指1本じゃダメなんや。

 そう思って、今度は手の平をかざした。


「フルパワー! 充填ッッ!」


 そこへガチャとドアが開いた。


「何をしておる」


 桃太郎だ。


「ギャッ?」


 不意をつかれ、アタシはその場に尻もちをついた。


「べべべ別に放電能力を身に付けた超能力少女を強調したわけちゃう。アアアアタシはただ人間の力の限界ってやつを……」


「何をうろたえておる。まるでワン殿のような口調よの」


 桃太郎のこの上から目線、普段なら腹を立てるところだが、この時のアタシは違っていた。


「そや、ワンちゃんや!」


 自分に任命された重大な仕事を思い出したのだ。

 2人のデートをお膳立てする──カメさんに託されたアタシの任務や。


「も、桃太郎はどんなタイプの女の子が好きなん?」


 ……アカン。我ながらワンパターンの探り方や。


「タイプ? オンナノコ?」


 桃太郎、ポカーンと口を開けている。

 何かフォローしようかと口を開きかけた時だ。

 突然叫んだ。


「おなごになど関わっていては、世直しの旅ができぬではないか!」


「ヒッ? い、いや、世直しの旅も大事(?)やけど……アタシが言いたいんは……」


「リカ殿、早う! 早う電球を買ってまいれ!」


 桃太郎、熱いお茶をズズズと飲み干した。

 そして唐突に笑顔を見せると溜め息をつく。


「あぁぁーぁああぁ……、日本茶は良い。ほっとするのぅ」


 メガネが曇っている。


「人の部屋でなごむな! 電球やろ、買ってくるわ! あ、いや、違う……」


 アカン。アタシ、ここで財布持ってスゴスゴ出て行ったら負けやで。

 アイツは居候なんや(いや、それすりゃ認めちゃいないが)。

 言うこと聞いてたまるか!


「アンタも桃太郎なんやったら、月明かりで耐えて」


 アタシもズズとお茶を飲んだ。

 ハァ……確かにホッとする。

 夜が更けるとまだ冷えるし、熱いお茶が和むわぁ。


「年寄りくさいおなごよのぅ」


 桃太郎がアタシの顔を覗き込んだ。


「ほれ、おかわりはどうじゃ」


「ああ、ありがとうな」


 アタシたちは何だかホッコリしながら、向かい合わせでお茶を啜る。


「月の明かりも良いものじゃ」


「現代社会のオアシスかもしれんな」


 昔話のおじいさんとおばあさんのようだ。

 我ながらすごい不本意だ。


「どれ、歌でもうたうか」


「オーッ、桃太郎! いけやー!」


 アタシがはやし立てると桃太郎は興奮したふうにテーブルに片足を乗せた。

 握り拳をマイク代わりに声を張り上げる。


「もーっもたろさん、ももたろさんっ♪ おこしにつっけた……」


 ……ああ、そうきたか。案の定や。

 アタシは一気に冷めてしまった。



 そして翌日。


 オールド・ストーリーJ館玄関脇に建て増しした風呂の窓下──えらくみみちい待ち合わせ場所に行くと、カメさんはすでにそこに待機していた。


 さすがに今日はピンクの割烹着は着ていない。

 ナリは普通のシャツとパンツだ。

 マフィア的な顔面を除くとサワヤカで、りりしい。

 しかしよく見れば、ボタンにはお花やハムスターの模様が彫られている。


「カ、カワイイですね」


 そう言うと、本気で照れた。

 ちょっと痛い人やで、この男。年齢は40歳らしい。


「カメさん、アンタ、ヒマなん? ハウスキーパーなんやったら、他の家も担当してんのちゃうん?」


「今日は有給をとりました」


「そうなんや……」


 気合満々や。


「リカさん、今日1日よろしくお願いします」


「あ、こちらこそ」


 りりしい感じで言われ、とっさに好意的に返事をしてしまった。


 今日1日、アタシはカメさんと共に桃太郎とワンちゃんのデートの模様を見張ることになったのだ。


「見張るのではありません。俺たちで見守るのです。桃太郎さんとワンさんを見守りたい。見守り隊!」


 ……ソレ、どっかで聞いたフレーズやな。


 ともかく渦中の2人が玄関から出てきたので、アタシらの話は一旦打ち切りとなった。


 おかしな格好した小男と、挙動不審な女の子。

 2人は自然な感じで並んで歩き出した。


「い、いい感じじゃないですか!」


 カメさんが息を呑む。

 腰を屈め、2人の後を付いていった。

 本人、身を隠しているつもりなのだろうが、この体格。余計に目立ってしょうがない。

 ときどきアタシの方を振り返って、すごい勢いで手招きする。


 仕方ない。

 アタシは彼の元へコソコソ走った。

 このままだと逆に目立つことになりかねない。

 騒ぎでも起こって、アホのうらしまでも出てきたら収集がつかなくなるのは間違いない。


「それで、首尾はいかがですか?」


 カメさん、すっかりノリ気だ。


「首尾って……。アタシら悪代官と廻船問屋ちゃうで。まぁ一応、桃太郎にはちゃんと教育してから送り出したつもりやけど?」


 デートの心得たら何たらかんたら。

 昨日カメさんに吹き込まれたことをそのまま言っただけやけど。

 今朝方急いで。棒読みで。


 第一、アタシ自身がデートなんてしたことないからな。

 何言っても説得力ないわ。


「ゴ、ゴメンな……」


 ボソッと呟いた言葉を、カメさんは聞き流したようだ。


 実はデートとはちょっと違う。


 前を歩く桃太郎は気合いを入れて「もーもったろさん、もっもたろさん」と歌いだした。


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