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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第13話 不毛なまでに、乙女 ~8人殺ったマフィアはりりしくてピンクの割烹着(2)

「乙姫サマ、騙されちゃいけません。コイツはすでに8人殺ってる顔だッ!」


 攻撃を受けても微動だにしないカメさん、辛そうに目を伏せた。


「ひ、人のこと、見かけで判断するな!」


 アタシが逆上してうらしまの尻を叩くと、奴は「あふん!」と一際エロい悲鳴を漏らす。


 そこへまた1人厄介者──今度はワンちゃんが現れた。

(いや、悪いけど厄介者やで?)


 カメさんを凝視するなり「キャア」と黄色い悲鳴をあげる。


「とととトウが立った若執事のようですぅぅぅ!」


 挨拶も自己紹介も何もなく、いきなりそう言った。


 若執事って何や?

 薹が立ってるなら、別に普通の執事でいいやん……いや、だから執事って何やねん。

 何の妄想やねん。


 ワンちゃん、この子もよく分からん子やわ。


「な、何の用……?」


 アタシの問いにワンちゃん、ハッとしたように手にしていた袋を差し出した。


「もも桃さまに差し入れ。きききびだんご、作りすぎちゃったんで」


「ほぅ、かたじけない」


 桃太郎、受け取って1人でモグモグ食べだした。

 実はこれが初めてではない。

 ワンちゃんはこのところほぼ毎日、こうやって桃太郎にきびだんごを届けに来るのだ。


「何でワンちゃん、毎日きびだんごを作りすぎるくらい作ってんの? どういう食生活?」


 ワンちゃんはポッと頬を染めて俯いた。


「……恋か」


 ボソッと呟いたのはカメさんだ。

 アタシは悪いけど引いた。

 うわ、何やこの世界。居心地悪っ! ひどく甘酸っぱい!


「リカさん、ちょっと聞きたいことが……」


 突然カメさんに腕を引っ張られ、アタシたちは廊下に出た。

 そのままひきずられるように階段を上って、アタシの部屋に直行する。


「いきなり何? 聞きたいことって何なん? カメさん」


 アタシの部屋の玄関先でカメさん、立ち止まった。

 これは明かに部屋に入れるよう要求しているな。


 ……仕方ない。


 ドアを開けるなりアタシは言い訳を始めた。


「スイマセン。アタシも部屋グチャグチャです。着替えとか食器とかあまり片付きません。片付け方がよく分からないんです。できるだけ気をつけます。ハイ」


 お姉に比べたら随分マシだけど。

 それに今は家具も少ないし。

 フトンと服とカバンがグチャグチャに丸められているだけだ。


「か、片付けたい。きれいにしたい……」


 小さな呟き。

 見るとカメさんの両手はプルプル震えている。


 そのままスッと動いて、まるで呼吸をするかのような自然な動作で部屋を片付けてくれた。

 黙々と。

 美しいショーでも見ているような鮮やかな動き。


 頼んでもないことやけど、アタシ的にはラッキーや。


「さすがプロの仕事や! スゴイ。家事カンペキ! まさにスーパーハウスキーパーさんや」


「そ、そんな……褒めすぎです、リカさん」


 ヨイショするとカメさん、渋く照れた。


 部屋をきれいにしてくれたお礼にと、アタシは昨日商店街の安売りで買った饅頭を出す。

 カメさんは目をキラキラさせてソレをホッペいっぱいに頬張った。


 それで、聞きたいことって何? そう言うとカメさん、居住まいを正した。


「はい。こちらにお住まいの方々の人間関係をお伺いしたいと思いまして」


「そ、そうか。職場の人間関係って大事やもんな。でも、何でアタシに……?」


 アタシが語り部として最適なマトモ人間だと分かったのだろう。


 お姉からアパートの間取りと住人の人数は聞いたらしいが、それだけでは不十分らしい。


 自分も越してきてから日が浅いと前置きして、アタシは語りだした。

 高校浪人がいたたまれずトーキョーに来たものの、突然桃太郎に居座られ、しかもその桃太郎がなぜかアパートの中で徐々に市民権を得てきていること──特にそのへんを重点的に説明したのだが。


「そうですか。桃太郎さんとワンさんの出会いは、そういうさり気ないものでしたか」


 ……あっさりスルーされた。

 この人の関心は、もっぱら恋愛関係相関図にあるらしい。


「大家さんの再婚がどうとかおっしゃっていましたね」


 カメさん、アタシの失言もしっかり覚えていたようだ。


「あ、ああ、そのこと? 実はあの……お姉は結婚しててんけど、死に別れてん。それからずっと1人で……。そういや、旦那さんはカメさんにすごく似てる人やったわ」


 うらしま、ゴメンな……。


 心の中に僅かに自責の念はある。


 でもあわよくばこのままドサマギでカメさんとお姉がくっ付くことになったら……そうしたらお姉もアタシもきっと幸せになれる。

 部屋もキレイやし、変態ワールドにも巻き込まれなくてすむし。


「そ、そうでしたか。さぞかしお辛かったでしょうね……」


 カメさん、純真な性格なのだろう。

 旦那が死んだというウソ話に涙ぐんでしまった。

 胸がチクチク痛む。


「うらしまはお姉に施しを受けてる貧乏人や。近所の小屋に住んでるねん。ホンマは迷惑してるねん」


「そうでしたか」


「そうや。しつこいねん、アイツ」


 ……いや、胸が痛むのは本当のことや。


「デートです」


「は? デート?」


 突然何を言い出すの、カメさん?

 話の流れ、何も関係ないやん。


「アタシら、今日会ったばかりやで? 照れるやん……あ、お姉? お姉とデート?」


「思うに桃太郎さんが鈍感すぎるんです。このままではワンさんの想いは伝わらない。鈍感な男には恋の急展開が必要なのです」


 あ、桃太郎とワンちゃんのことね?

 アタシの話、何も聞いてないな。この人。


 カメさんは2人のデート計画に夢中になってしまった。

 何だかキラキラしている。


「全力を尽くします」


 言い切った。

 凛々しい。

 でも、どういう展開に持っていこうとしてるんやろ、この人。



 ※ ※ ※ ※ ※



「スーパーハウスキーパー」──それがカメさんの称号らしい。


 ちょっとだけマトモそうな人が来たと喜ぶべきか、ヘンな人また増えたと憂うべきか、アタシはちょっと悩んでしまった。




「不毛大作戦!恋だか変だか、何かそんな感じ」につづく

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