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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第11話 不毛な見栄~それが女心というやつなの?(2)

 アパートへと向かう細い道。


 歩道と車道を隔てる柵に、チャラチャラした若者がもたれている。


 脇をすり抜けようとしたアタシの前に、若者が突然足をニュッと伸ばした。

 そいつの靴が足首にガンッと激突する。


 アタシはバランスを崩し、見事に転んだ。

 地面に顎を強打し、すごい音した。

 通行人がみんなこっちを見る。


「どこ見とんじゃあ、ワレ! その足は何や!」


 アタシは久々にキレた。

 立ち上がって男に詰め寄る。


「その足は何やねん、オラァ!」


「えー、怖いオンナー」


 若者はアタシを見て笑う。

 赤い髪をした、品のない男だ。

 だらしない格好ナリをしている。


「謝れや! まず謝れや! アタシ、間違ったことは言ってへん。トーキョーって周り見えてへん奴、多すぎやねん。当たり前のことができてへん! だいたいなぁ」


 言いかけたアタシの背後で、何やら異質のざわめきがおこった……嫌な予感がする。


「その方ら、控えぃ!」


「勝訴」の旗を背に、「日本一」のハチマキをしたチョンマゲメガネ──見覚えのあるおかしな姿が、硬直したアタシの前に現れたのだ。

 言わずと知れた桃太郎だ。


 アタシは再びヘナヘナと地面に座り込む。

 すでに見慣れた感はあったのだが、あらためて外で見るとコイツ、凄まじいものがある。


 通行人はササッと道の端に避け、アタシらの周りにはおかしな空間がポッカリ空く。


「ももも桃さま……」


 ワンちゃんがポツリと呟いた。


「桃さまァ?」


 桃太郎は勝訴の旗を外してワンちゃんに手渡す。


「これで腹を隠せばよい」


「ははーっ、桃さまぁ」


 ワンちゃん、腹どころかパンツまで全開だ。

 勝訴の旗を恭しく受け取り、言われた通りグルリとお腹を巻いた。


「リカ殿。ほれ、手を」


 桃太郎はアタシの腕をつかんで引っ張り上げた。


「ギャッ! 肩外れるって。痛い! いただぃ! 外れたことあるねんってば!」


「ほれほれ」


 一回やったことのある右肩がゴリリと嫌な音を立てる。


 アタシは何とか立ち上がった。


「ああぁばッ?」


 おかしな悲鳴をあげて若者が、さすがに目を見開いて桃太郎を凝視していることに気付く。


 アカン。

 売れてない芸人と思われたらいいが、ヘタすりゃ警察呼ばれる。


「ス、スイマセン。気にせんといて。ほら、いくで。桃太郎」


「リカ殿? その方、顎から赤い滝のように流血しておるぞ」


「赤い滝って……。恐ろしい表現せんといて! ほら、早く行くで」


 何でアタシがこんなに気を遣わんといかんねん。

 警察呼ばれても、それはそれで別に構わないはずだ。

 いきなり部屋に居座られて、迷惑してんのはこっちなのに。


「何こいつら? かなりスゴめ。かなり濃いキャラ……」


 若者がアタシと桃太郎を見比べて──さすがにパンツ丸出しのワンちゃんを凝視することはしないけど──もじもじする。

 携帯を出して、写真を撮るかどうか迷っている風だった。


「クッ!」


 痛いのと悔しいので、アタシはギリギリと奥歯を噛む。

 若者は肩を竦めて背中を向けた。

 立ち去る直前、こちらを振り返る。


「ゴメンね。顎に使って」


 手にしていたのは小さなタオル。

 アタシは反射的にそれを受け取っていた。


「ア、アリガト……」


 礼を告げる間もなく、男は人ごみの中に消えてしまう。

 タオルを握り締めながらアタシはその方向を見つめていた。


「リカ殿、赤い滝が? ム、顔も赤いぞよ?」


「しっ! もも桃さま、いいいけません。おお女心です」


「大女ごころ?」




「不毛なまでに、乙女 ~8人殺ったマフィアはりりしくてピンクの割烹着」につづく

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