12-1 憂さ晴らしの後夜祭
どうも皆さま、初めてお会いする方は初めまして。以前にお目にかかられた方は、お久しぶりです。ヌイヴェルでございます。
先日は王宮でとんだ騒動に巻き込まれてしまいました。
本来はフェルディナンド陛下の御子息であられますジュリアス殿下の、1歳の御生誕日を祝う宴でしたのが、我がジェノヴェーゼ大公国とただならぬ関係にあるネーレロッソ大公国の御一行が来られてさあ大変。
特に、ネーレロッソの魔女レオーネとの激闘や、その後に暴露された数々の秘密。
未だに整理がついておりません。
特に陛下の無き姉君アウディオラ様と私が双子であったなど、方々に波及しかねない重大な情報に、ただただ困惑するばかりです。
とはいえ、ただ手をこまねいてばかりというのも性に合いませんし、何より知識の探究者たる魔女が思考を止めるなどあってはなりませんからね。
いずれカトリーナお婆様が何を目的とし、随分と回りくどい事をしていたのか、全て暴いてみせますわ。
などと意気込んではみたものの、やはり気分転換は必要と考え、今は御祭り騒ぎに飛び込んでいる真っ最中。
ジュリアス殿下の生誕日を盛大に祝えと陛下がお達しを出しておりましたので、公都ゼーナにおいても、盛大に祭りが開かれております。
前夜祭、本祭、後夜祭と、三日三晩のお祭りです。
今日は三日目の後夜祭。
先日の宮殿の事を忘れる、否、忘れたい私と妹分のジュリエッタが従者のアゾットを連れて、その祭りに繰り出しました。
ある種の“憂さ晴らし”でございますね。
そして、またもや騒動に巻き込まれる。巻き込まれてしまう。
さて、皆様、“シンデレラ”というお話をご存じでありましょうか?
私の住まう国とは違う別の国のお話なのですが、シンデレラという美しい娘が、継母やその連れ子である姉達からひどい仕打ちを受ける日々を送る境遇の中、お城で開かれる舞踏会に魔女の助力を得て出席し、王子様に見初められて幸せになる、というなんとも夢のあるお話でございます。
身分差がしっかりしている国ほど、そうした身分違いの色恋話が大沙汰になることもございます。
現に、私の従弟ディカブリオとその妻たるラケスがまさにその典型例。
ラケスは貧民街の出身で、それが男爵の令夫人になるというのですから、結婚前後はそれは大きな騒ぎとなったほどです。
シンデレラの場合は一応、王族が主催する宴席に呼ばれるほどの良家の出身とはいえ、招待状もなしに宴に紛れ込み、いきなり王子に見初められましたのは、なんと言っても気品あふれる美しさを始めから持っていた点が大きいのではないでしょうか。
ですが、我が国のシンデレラはそうは参りません。私の美貌を上の上といたしますれば、せいぜい中の上程度の容姿。
しかも、良家の出ではなく、完全にそこいらの村娘で、気品も何もあったものではありません。
挙句の果てには、シンデレラを助ける魔女は、業突張りで悪辣なこの私。
さてさて、今宵は我が国のシンデレラと、それを“売り飛ばした”魔女のお話をいたしましょう。




