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魔女で娼婦な男爵夫人ヌイヴェルの忙しない日々  作者: 夢神 蒼茫
第10章 金か、女か、信義を取るか? 全部取ります、魔女の企み!
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10-49 ハズレなき山師 (前編

 正直に言いますと、不正の多さに驚きました。


 アールジェント侯爵家は不正の温床と言うべきもので、横領とそれに伴う帳簿の改竄がごろごろ出てきたのでございます。


 まず、銀鉱石の横領、これは前々から続いていたようですわね。


 掘り出された銀鉱石の一部を着服し、横流ししていたのが常態化していたのです。


 侯爵家の当主自身が所有する銀鉱山まで出かけて、採掘状況の確認など行いませんし、上がって来る帳簿の数字を確認するだけですから、“多少”抜いたところで気付かないというわけです。


 鉱夫と一部の役人が結託すれば、余裕で可能な不正だったというわけです。


 そして、それが代替わりのゴタゴタの際、鉱山の管理を行っていた役人が、さらに増長してしまったのが今回の発覚に繋がりました。


 ゴスラー様は当主になってからも昔の放浪癖が抜けず、あちらこちらへフラフラ出かけ、帳簿の確認すら丸投げ状態でした。


 不正を行う者にとっては、これほどやり易い状況はなかったでしょう。


 結果、銀の産出量が減ったという嘘の理由をでっち上げ、銀鉱山が枯渇したと一芝居打ったわけです。


 当然、本来の産出された銀鉱石を横に流して。


 おまけに、銀の精錬に使う“隠し工房”まで用意するという念の入れ様。


 横領の擬装としては完璧でした。


 しかし、ゴスラー様が領地に戻って来られたのが、その計算を狂わせた。


 領地の方には一切話を通さず、いきなり結婚して、しばらく領内で暮らすとなったからさあ大変。


 銀の横領を隠すために、一旦横流しを止め、隠し工房も停止。


 処理しきれなかった銀鉱石は、山小屋近くの横穴に隠し、ほとぼりが冷めるのを待つという作戦に切り替えたようです。


 あとは適当なところで、「新しい銀の鉱脈が見つかった」とでも報告すれば、産出量を元に戻して、横領はなかった事になる。


 そういう手筈だったようです。


 しかし、そこはマリアンヌの魔術【笑顔の夫婦に祝福をビランチャ・フォルトゥナ】がたらした幸運が、上手く作用して秘密を暴いてしまったわけです。


 そこからが、こちらの腕の見せ所。


 派遣していた我がイノテア商会の面々と、パリッチィ銀行の人員も総動員をして、これまでの帳簿を洗いざらい調べる事が出来ました。


 隠匿された銀鉱石という不正の証拠が見つかった以上、“外部査察”を止める事はできませんからね。


 もちろん、ゴスラー様の許可を得ての話ではありますが。


 するとまあ、出てくる出てくる。


 どこもかしこも上手く隠されてはいますが、不正な支出が多く、それを懐に仕舞い込んでいたようです。


 主人の不在を良い事に、あちこちの役人が不正をやらかし、好き放題!


 泥棒に金庫を任せるという、とんだ悪い留守居役ですわね。


 マリアンヌがもたらした幸運がなければ、上手く誤魔化されていたかもしれませんが、不正の証拠を掴んだ以上、容赦はしません。

 

 おまけに、なぜかうっかり仕舞い忘れていた“裏帳簿”まで見つかり、もはや言い逃れのできない状況を作り出しました。


 しかし、そこで小芝居を挟み込みました。



「いや、まあ、留守にして、ちゃんと指示を出していなかったのは私だし、今回は許してもいいんじゃないか?」



 ここでゴスラー様の大甘裁定。


 不正の件は不問にするから、今後はしっかり働く様に、という御沙汰が下されました。


 そうなるのは既に織り込み済みで、侯爵家内部にガッチリと入り込みましたので、もう不正のやりようはありません。


 不正さえ直してしまえば、侯爵家の財政は健全化。


 結婚して運気が上昇したのは、本当に間違いなさそうだと確信を得ました。


 銀鉱山も元の状態に戻り、横流しがない様にしっかりと監視を付け、帳簿も抜かりなく検査して、この件は一件落着。


 そして、さらに月日が流れていき、約束しておりました二年の引きこもり期間も終了間際となりました。


 いつものように定期報告に目を通していますと、とんでもない報告が飛び込んでまいりました。


 曰く!



「侯爵夫妻が山に散策に出かけ、侯爵がなんとなしに(・・・・・・)『あそこ掘ったらなんか出るかも』と言い出して掘り返してみると、そこから琥珀アンブラが次々と発掘された」

 


 そして、私はその報告を聞き、確信しました。


 ゴスラー様の魔術【ハズレなき山師(コルポシクーロ)】が覚醒した、と!

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