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魔女で娼婦な男爵夫人ヌイヴェルの忙しない日々  作者: 夢神 蒼茫
第8章 魔女に捧げる愛の詩
203/404

8-11 魔女に捧げる愛の詩《うた》

 届けられた手紙。


 その中身はなんとも言い表し難い“詩文”でございました。




               ***




窓より入る月明り 不安な私を包み込む



静かに開くその扉 きしむ音色に胸跳ねる



あなたの笑みが眩しくて 私は顔を赤らめる



白く輝くその手指てゆび くしの代わりに髪を



腰に回したその腕で 抱き寄せられるこの体



今この時は大胆に 小さな胸を押し当てる



思慕に心を燃えさせて 私はそっと目を閉じる



口と口とが触れ合って 舌と舌とが絡み合う



今の今までこのような 口づけなどは覚え無し



愛に溺れしこの身では 支えなしでは生きられぬ



そしてあなたは手を放し 私は後ろに倒れ込む



投げ出されしはこの体 しとねがふわり受け止める



あなたは覆いかぶさって 指がころもに滑り込む



その手が肌をさすりては 裸を知ろうと撫で回す



巧みな手管に抗えず 真弓のように反り返る



あるいは肌を振るわせて 乱れる臥布がふは波のよう



ふるう私に微笑んで 登りて下りる熱い股



はだけたころも剝ぎ取られ 心も同じく盗まれた



赤い瞳が見つめるは よがりて狂うこの私



あなたの術に捕まって 魔女のとりこと成り果てた



気付けば窓に日が昇り 小鳥(さえず)る朝が来た



昇る朝日は輝いて 魔女の瞳を見てるよう



愛しの魔女は消え去って さながら夢か幻か



それでも魔女はここにいた 波打つ臥布がふはそのあかし



これはそのまま置いておく 体形からだかたちを記憶して 



乱れた御髪おぐしそのままに 指の触りが消えぬよう



今日は風呂にも入るまい 愛撫のあとが消えぬよう



べにも塗らずにそのままに 口の温もり失せぬよう



部屋の扉も閉めたまま あの思い出が飛ばぬよう



昨夜の記憶この胸に 寝床が私をいざなうわ



横になりては香り行く その残り香が鼻をつく



夢見心地のこの時を ずっと続けと乞い願う



このまま鳥になりまして あなたの側へ飛び立つわ



しかし私は籠の中 羽ばたくことは夢の夢



言い表せず口下手で 思いつづりて筆を取る



そんな私が好きなのは この世に一人あなたです




             ***




 読み終わった私は、素直にこう思いました。



「反応に困る!」と。

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