大空洞3
茂みの隙間から水が流れている。月にあるはずの無い物、大量の水が流れ落ちる巨大な滝がそこにあった。低重力のせいで水は所々の植物に当たってはじけ飛び、球体になってから再び下に落ちたりくっついたりと奇妙な動きをしているのが実に奇妙な光景だった。
「すげぇだろ。こんな滝、地球ではみれないぜ」
「本当に…驚きました。こんな場所があったなんて…。放射線量も安全値内だし本当に奇跡的ですね」
「…ここだけ、重力が少し強いみたい」
俺が驚きで呆然としている間にも子供達は浮かんでいる水をつついたり、眺めたりと忙しく動き回っている。本来はあり得ない光景に興奮していると、子供の一人が服を脱ぎ始めた。
「な、なにしてるんだ!? なんで服を?」
「この水暖かいんだよ。久しぶりに風呂が出来るぜ!」
「安易に飛び込むな! 放射線は大丈夫だがまだ水質チェックが…」
「大丈夫だって、ちょっと入るだけだし!」
ドスくんはほとんど話を聞かずに水分の中に飛び込んだ。気持ちよさそうに潜っているのがちょっとうらやましい。しばらくこんな光景を眺めているのもいいだろう。流れる水の温度は35度くらいだろうか。どうやら本当にただの水らしい。こんなところに水がある理由は多分、植物園のほうから何らかの原因で漏れ出してきているという事だろう。おや、ドス君が苦しそうにもがいている。重力が弱いせいで水からなかなか上がれないようだ。ウノくんもさっきから手を貸そうとしているがなかなか上手くいっていない。
「……藤島、たすけてあげて」
「そうっすよ船長! やばいっすよ!」
「ああ、そうだな」
ドスくんをぬるま湯の中から引っ張り出すとタオルを渡してあげる。ゲホゲホ咳き込んでいたが大丈夫だろう。
「藤島さん、この辺りの植物には微量のルナメタルが含まれているようですよ」
「ああ、俺の乗ってきた船に使われていた素材と同じだな。温室の物より白っぽく発光している気がするのはルナメタルの影響なのか」
「自分としては居心地よく感じるっすね」
「ジーバはやっぱり月の生き物だろどう考えても」
「僕もそう思いますけど、ジーバさんみたいな石像があった場所に行けば何かわかるかもしれませんよ」
「そうだな。案内してくれジーバ」
ドス君が落ち着いたところで次の目的地に向かうことにした。




