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月の子供達の帰還  作者: 七田手鞠
2/23

労働2

俺が乗っている船は光輝丸という名前で、大企業が研究者から合金の量産提携をした半年後に作られた船である。

完成当初は最新の月の資源を使っで作られた光る船ということでもてはやされたが、完成から7年たった今では当時の人気の残滓で利益を出している海洋観光船へと成り下がっていた。

そんな船に乗っている落ち目の操舵手が主任(すなわち船長の事だ。)に呼び出されるなんて、どうせ碌な事じゃ無いに決まっている。

眠気とストレスで重くなった足を引きずりながらようやく船長室に辿り着くと、そこには腕組みした主任が立っていた。

瞬時に俺、また何かやっちゃいましたかね?という半世紀前ミームになったセリフが頭をよぎった。

そんなふうにおふざけでもしていないと、この主任とはとても付き合えない。自分の失敗を当然のように部下の責任にするので、こいつにやめさせられた同期や先輩を何人か見ている。

「藤島君、よくきてくれたね。ちょっと座ってよ」

やたらと猫撫で声を出してくる主任を気味悪く思いながらも進められた椅子へと腰掛ける。

「藤島君はコーヒー好きだっけ? それともお茶の方がいい?」

いつもは絶対聞いてこないような不可思議な質問をしてくる上司に、余計な勘繰りをしてしまう。

もしかして俺に気があるのかも知れない。深夜の呼び出し、女上司と2人きり、ここは船長室なのて奥にベットも‥。いや、余計なことを考えるのはやめよう。この主任と、と想像するだけで下半身の力が無くなっていくのを感じる。

「いえ、結構です。それよりも何かありましたか?」

笑顔をつくりながら角が立たないように飲み物を断るとまぁまぁそう言わずに、なんて言いながら主任はコーヒーを2人分テーブルに置いた。

俺もニコニコしていて主任もニコニコしている。言い知れぬ緊張感が漂っている。

「君さぁ」

先に口を開いたのは主任だった。

「操舵室でラジオ聞いてたでしょ」

思いがけ無い一言に言葉を失った。

「あ、はい。あの、すみません」

柳田が裏切ったのか? それとも他のやつからか? 自分では用心していたつもりだったのだが噂好きの小堺あたりに見られていたか。

柳田は他のやつはVRゲームをやっていたとか言っていたので柳田では無いと信じたいが、出世にあぶれた意欲的な無能が集うこの職場、次の役員ポストを狙うやつは五万とある。誰が裏切っても不思議では無い。

「君、次から配属変わるから。よろしく」

ラジオを聴いていた言質がとれるやいなや主任はいつもの主任にもどり、あえなく船長室を追い出された。

次の配属先は追って伝えると言っていたが、どうせロクでもない部署に飛ばされるのだろう。

もし派遣チームに配属されたら本気で転職を考えなければいけないかも知れない。

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