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月の子供達の帰還  作者: 七田手鞠
11/23

異星の大地

お盆休みで投稿できませんでした。

 最後の一日はジーバの学習に付き合ったり小惑星にぶつかりそうになったりなどしながらなんとなく時を過ごした。その日の夕刻には光輝丸から到着のアナウンスが流れた。着陸地点も既に設定しているので何も問題ないだろう。何もしなくていいという点ではバス旅のように快適であった。(もちろん多少の計器確認の役目はあるが)

『目的地、”月のレストエリア”へ到着しました。長旅ご苦労様です。それでは皆様、良い旅を。』

 船体が大きく揺れて光輝丸が到着のアナウンスをした。おまけに次回ご利用時5%OFFのクーポンの案内までしているが船にはジーバと俺しかいないので5%OFFのアナウンスはむなしく流れていくだけだった。

「ここが……月っすか?」

 一日で大分言葉をしゃべれるようになったジーバは妙なしゃべり方を覚えたようだ。務めてしゃべり方は気にしないようにしよう。多分中二病というやつだ。

「月についたら管理者が来るはずなんだが妙だな」

 宇宙船の到着した周りはやけに静まり返っていた。月のレストエリアは巨大な岩盤で遮られた洞窟の中にあり、大気が存在している場所だ。月の表面は大気がほとんどなかいがレストエリア内では呼吸ができるから防護服がいらないのだ。

「かん…りしや…?」

「変な人間が入ってこないか確認する、ガードマンとか警備員みたいなものだ」

「ガードマンっすね。理解わかったっす」

 妙に人間臭い宇宙人を横目に見ながらとりあえず光輝丸の外を歩いてみると、平時なら旅行者がいるはずのベンチに人っ子一人いないことに気が付いた。ベンチだけではない。旅行者用受付窓口にも誰もいないし詰所にも人がいない。子供たちが取り残されているというのは知っていたが、本当に誰もいない中で残されているようだ。

 慌てて飛び出したのでラジオをよく聞いていなかったのだが覚えている範囲では、月の周囲に原因不明のスモッグがかかり、大気が汚染されるかもしれないとかで月からの全面撤退をしたと言っていた気がする。

「早く子供たちを見つけないといけないな。月の巨大温室へ行ってみるか」

「あ、自分も行くっすよ!」

 困ったような顔をしながら追いかけてくるジーバを横目に温室への道を歩き始めた。巨大温室は月の目玉でもあり一度は行ってみたい場所だったので行方不明の子供を探しに行くには不謹慎だとわかっていながら、実はとても楽しみだった。

 レストエリアにはそこかしこに案内看板があり、それでも道がわからなければホログラムのAI案内係が誘導してくれる。大都市のある街でもここまでの設備は見られないだろう。流石最新鋭の設備がそろっているものだと感心する。

「船長さん……自分なんだか不安っすよ。ここはなにか嫌な感じがするっす。生き物がいないのに声が聞こえてくるっすよ」

「ジーバはこういうの見たことないのか? ただのホログラムだ。ほら」

 手をかざしてホログラム案内係をすり抜けると、ジーバは小さく悲鳴を上げた。

「ホログ…何とかって、もしかしておばけっすか!? まじで怖いっす……」

「道案内をする機械みたいなもんだよ。そんなことより子供がいないか探してくれ」

「子供っすか。船長と同じ生き物の幼体のことっすよね? 光輝丸さんに聞けばすぐわかるんじゃないっすか?」

「光輝丸は船の中しかスキャン機能がついてないから、ダメ」

「そうなんすね……。自分、目はいい方なんで何とか探してみるっす」

「たのむ」

 ジーバと無駄話をしつつ道案内を聞いていたが、どうやらレストルームから温室まで直通ではないらしいということが分かった。月面移動用のホバーがあったのでそれを勝手に借りて移動することにした。平時はレンタル料金がかかるが今は非常事態なので勝手に借りていくことにする。大きめなので子供全員が乗れるだろう。

 温室まではホバーにのって30分ほどかかるようだ。念のため防護服を着て、俺とジーバは月面用のホバーに乗り込んだ。


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