月への旅4
一日この宇宙人ジーバと過ごしてみてわかったことは、こいつの生態はほとんど地球上の動物と変わらないということだ。食事と水を必要とし、呼吸をして生命を維持しているようだ。外見は不気味だが敵意や害意はないようで、基本的には大人しくしている。どうやら文字の概念もわかっているようで、船室に必ず置いてある聖書を手に持って眺めたりしていた。知能はもしかしたら高いのかもしれない。
意思の疎通が出来るとわかったので一連の船員失踪に関する情報を得られるかと思ったが、そこまでの意思の疎通をするにはどのくらい時間がかかるかもわからない。明日にはもう月へ到着するのだからこいつの扱いも考えなくてはいけない。そうこうしているうちに一夜明け、残り1日で月へと到着する時間になった。
「おいジーバ。お前はどこから来たんだ?」
「ジーバ……わからない」
カタコトながら一日で言葉を操れるようになったジーバはしょんぼりした顔をした。
「ジーバはなんであそこにたおれていたのだ」
「……?」
「まだ言葉が分からないか」
「わからない」
「まぁいい。お前が何者かは後にしよう。明らかに人間臭い動きをしてるから多分放射能にやられた新人類なんだと思っておく」
「……」
ジーバはわかっているのかいないのか首を前後に振ってうなづいた。
「明日にはこの船は月へ到着するんだ。そしたらお前が……まさか月に住む月星人なわけはないとおもうが……、自由に行動しても俺は何も言わない。もし月星人なら月に帰ってもいいし、ここに居てもいい」
「……」
ジーバはまたうなづいた。
「俺は月で子供を助けて、地球へ帰るからな」
「ジーバも手伝う」
「そうか」
まだまだ信用できない相手だが、このジーバと言うやつ妙に人間臭い。歩いているときに何かに躓いて転んだり、痛がり方も人間そっくりだ。俺はこいつに対して初日ほど警戒しなくなっていた。ジーバの腹の虫が鳴る音がしたので簡単なシリアルを持ってきてみることにした。
「おいジーバ。腹が減っているだろうからこれを食え」
差し出したシリアルを不思議そうにみつめるジーバに、俺はスプーンですくって一口食べて見せた。
「ほら。食い物だって事だ」
「食い物……」
おそるおそる手に取るとジーバはそれをぺろりとなめ、食べられるとわかったのか口に運び出した。俺はジーバがシリアルを食べ終わるのを待ってから自分の部屋に戻ることにした。




