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イメージトレーニングの成果〜料理編〜

3月、他作品の書籍化などでバタバタしてしまうため感想のお返事が滞ってしまうと思いますので、一旦感想欄閉じさせてもらいます( ; ; )

もしどうしても景華に伝えたいよぉぉぉっていう場合、メッセージかTwitterで愛を伝えてください(笑)


「ゼウス。いるか?」

 特に会話もないままに厨房へと連れられ、旦那様が声をかければ、奥の方から少し長めの金髪を後ろで一括りにした渋めのイケオジが姿を現した。


「旦那様、いかがなさいましたか?」

「あぁ、すまんな、仕込み中に。これはこの間妻になったメレディア。メレディ、こっちがこの屋敷の料理長ゼウスだ」

「あなた今朝の……」

 そういえばあの謝罪大会の時にいたわね、この人。

 初対面だったし料理はきちんと用意してくれていたから、実害など何もなかったのだけれど、きっととても生真面目な方なのだろう、深々と頭を下げ謝罪してくれたのを覚えている。


「奥様、今朝は大変失礼いたしました」

「なんだ、知り合いだったのか?」

 不思議そうな顔をして私とゼウスの顔を行ったり来たりと見守る旦那様に、私は曖昧に笑った。


「え、えぇ。今朝、朝食の際カトラリーを忘れていたみたいで、急いで持ってきてくれたんです。ね?」

「え? あ、あの……」

「人間、なんでもないことを忘れてしまうことなんてよくあるんだから、気にしないでね」

 使用人に大謝罪大会されてましたなんて、そんなゴタゴタ知られて離縁でもされたら私の静かなるスローライフ計画が水の泡だ。

 おとなしく、トラブルなんて起こさずに、静かに余生を過ごしたい。


「そうだったのか。ゼウス、これからもこれを頼んだ」

「は、はい、もちろんでございます、旦那様」

 そう言って頭を下げたイケオジもといゼウスに、旦那様が続ける。

「で、だ。少し厨房借りるぞ」

「あ、はい、どうぞ」

 ゼウスの許可が降りた後、旦那様はすぐに私に視線を移した。


「早速だが、その野菜の冷凍のやり方を教えてもらえるか?」

「あ、はい」

 まさかこんな大事になるだなんて。

 旦那様に素晴らしい条件で拾っていただいたご恩、今こそ返さねば──!!


「まず、さっき取れたポティを冷凍してみましょう。皮を剥いて、一口サイズに切ります」

 ちょっと包丁借りるわね、と、そばにあった包丁をホルダーから取り出すと、私はゆっくりと包丁の刃をそれに沿わせて入れていく。

 もちろん前世を含めて料理などしたことがない。

 だがそこは任せてほしい。

 水泳の時と同じで、イメージトレーニングはバッチリだ。


 このポティという作物は、前世でいうポテト、つまりジャガイモと同じ形、同じ味、同じ食感で、違うところと言えば、中身も皮も赤いことぐらい。

 だからきっと、保存方法も同じはずだ。


「ほう、手際がいいようだが、伯爵家で料理を?」

 しまったぁぁぁぁっ!!

「え、えぇ、まぁ、少し……」

 イメトレです、なんて言えない……!!

「ゼウス、お鍋にお水を入れて、沸騰させてくれる?」

「わかりました」


 えぇっと……猫の手猫の手……。

 トン、トン、トン、とリズム良く先ほど皮を剥いたポティを棒状に切りながらも、内心では初めての包丁にドキドキだ。


「よし、切れた。後はこれを茹でます」

 私はゼウスに沸騰させてもらっていた鍋へと、棒状に切ったポティを入れていく。熱湯が跳ねないように、ゆっくりと。

「本当は茹でる前にアク抜きと言って、水にさらしておく工程があるんですが、少し時間がかかるのでとりあえず今回は無しで。しばらく茹でて柔らかくなってきたら、ザルに移して水気をとります。水分が出たら残った水気を拭いて、平たくしてパックにつめて、空気が入らないように密閉してから冷凍します。これで大体1ヶ月程保ちます」


「すごいな。1ヶ月も保つのか」

 感心したように旦那様がつぶやいた言葉に、私は頷く。

「まぁ、ポティの場合何もしなくても3ヶ月ほどは保ちますし、冷凍すると食感が悪くなりがちなので、重要度は低いかと思います」

 グジュグジュのスカスカになりがちだものね、じゃがいもの冷凍って。


「向き不向きがあるということか……」

「えぇ。キノコ類は冷凍したほうが逆に旨味も増して、栄養も上がるのでおすすめです」

「キノコ……あまり食欲をそそられる色はしていないが、背に腹は変えられんな」

 この世界にもキノコ類は存在する。

 ただこちらの世界のキノコは少しばかり色形が毒キノコみたいな奇抜なものばかりなので、あまり好んで食べられないのだけれど、ちゃんと食べても大丈夫なものもある。


「キノコは健康に良い食材ですし、色や形が気にならない何かで包み込むような食べ物やビーフシチューなどに入れれば気にならないかと思います」

 せっかく栄養が摂れるものがあるのだから、摂らないと損だ。

「なるほどな……。確かに、冬の間に栄養不足になっては元も子もない。その案でいこう。早速山林の管理者にキノコの確保を頼んでおく。これで領民も、少しは楽に冬を越せるだろう」


 腕を組み頷く姿は威圧感はあれど嫌悪感はない。

 本当に領民のことをしっかり考えているんだ、この人は。

 人嫌いで有名なのに。


 そういえば使用人を次々に辞めさせた冷酷公爵なんて噂があったけれど、ここの使用人は皆旦那様のことを慕っている様子だ。

 とても仲が悪そうには見えないし、虐げられている様子もない。

 やっぱりあの噂はデマだったのかしら?


三章構成になり、もうすぐ一章が終わります♪

面白いよーと思っていただけましたら、ブクマ登録、評価等していただけると嬉しいです♪

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