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009 廃寺院 地下10階

 骨の山を一時間ほど漁って銅貨数枚と先が尖った骨を三本見つけた。この三本をボーンソードと名付けよう。もっと時間を掛ければ何かありそうだが、ゴブリンと遭遇するリスクが上がる。長期戦を出来る装備を持っていたらもっと粘るのに。


 そろそろ部屋を出ようと思った矢先、遠くから灯りが見えた。


「ゴブリンか!」


 ゴブリンは暗視を持っていない。クロードの記憶と俺の読んだルルブ通りだ。だがそれは同時にゴブリンは火をつけることが出来るだけの知恵があると言う事。ゴブゴブ喚きながら群れて突っ込んでくる雑魚ではない。俺は気を引き締め奇襲する覚悟を決めた。


 一分と掛からずゴブリン3匹が入口を潜った。最初に入った奴が松明を持っている。ゴブリンは蟹股で無ければ165センチ前後はある人型のモンスターだ。緑の肌と大きな鉤鼻が特徴的だ。弱いと言われているが、今の俺では1対1でも苦戦するかもしれない。1対3では言わずもがな。


 幸い知能はあまり高くないのか、俺が息を殺して突っ立っている真横を通り過ぎた。外なら一発でバレただろうが、松明の灯りが無いと何も見えない闇の中だ。俺が落ちたであろう部屋の中心に気が向いていた。


 スンスン。


 松明を持っているゴブリンが鼻を鳴らして獲物を匂いで探し出した。落ちているはずの場所に匂いだけが残っていたら、何処かに逃げたと考えるのは当然の事か。そして頭を俺の方に向けた。


「うおおおおおおお!!」


 目と目が会った。そして俺は大声を上げてボーンソードを大上段に構えて走り出した。とにかく一匹を先に倒して数的不利を解消だ!


 バキッ!


 攻撃を受けると思っていなかったゴブリンの頭に思いっきり剣を振り下ろした。その衝撃で剣が折れたが、ゴブリンの方も頭から血を流して倒れた。


「ゲゲ!」


 武器を失った俺を笑うゴブリン達。武器が壊れたのは予定外だが、油断してくれるのならありがたい。何せ後2本アイテムボックスに入っている。


「笑っているんじゃねぇ!」


 アイテムボックスから取り出しボーンソードを大ぶりする。二匹のゴブリンは大きく回避した。


「よっしゃー!」


 固まっている二匹を引き離せた。俺はそのまま松明を持っているゴブリンに突撃した。片手が松明で塞がっていれば俺の攻撃は回避出来ないはず!


「ちぇすとー!」


 とにかく気合いだ! ブラック企業でも「とにかく気合い」が魂の合言葉だった。ここで役に立つとは思いたくないが、とにかく喉が枯れんばかりに声を張り上げる。


 ゴブリンは生き残るために俺の一撃を松明で防御した。そして松明はそのまま吹き飛び、床を転がって火が消えた。辺りは闇に閉ざされた。


「……」


 先ほどとはうって変わって俺は静かに行動する事に全力を傾けた。ゴブリンと殺し合っている恐怖を払しょくするために大声を上げたい。でもそうすれば俺の唯一の勝ち筋を失う。


「ゲゲ?」


「ゴゲゴ!」


 まだ動ける二匹のゴブリンが突然の闇に対応できずに所かまわず腕を振っている。俺が近づけば当たると期待しているのだろう。だが俺は見える。当たりはしない。


 まずは松明では無く武器を持っている方のゴブリンの後ろに回って一撃食らわせる。


 バキッ!


 武器が壊れる音とゴブリンが床に倒れる音はほぼ同時だった。最後のゴブリンは音から遠ざかり、必死に鼻を動かしている。


 不用意に近づくと危険かもしれない。どうするか一瞬迷う。ボーンソードのリーチを信じて突っ込むべきか? 倒したゴブリンの持っていた錆びたナイフを投げるべきか? 短剣術にポイントを振ればナイフは使えるはずだ。だが俺のビルドには合わない。スキル数に余り余裕が無い俺が無駄スキルを取るわけにはいかない。


 俺は覚悟を決め、今一度大上段からの一撃に賭けた!


「きえぇぇぇぇ!」


 どこぞの時代劇で見た奇声を発しながら真っ直ぐゴブリン目掛けて走った。ゴブリンもまた俺が来るのを察知して両腕を頭上で交差した。


 バキッ!


 三本目が折れた。ゴブリンは両腕が折れたはず。しかしまだ立っていた。


「残念だが、ボーンソードは折れても尖っているんだ!」


 そう言ってゴブリンの喉元に突きを放つ。


「グゲッ……」


 それだけ言ってゴブリンは息絶えた。


 実はまだ生きていた残り二匹のゴブリンの止めを刺して一息付けた。


「ハァハァ……」


 死の恐怖と人が建を殺した罪悪感がドバっと押し寄せてきた。胃の中に何かあれば盛大にリバースしていただろう。それでも休むわけにはいかない。震える手でゴブリンの持ち物を漁る。錆びた鉄のナイフと骨のナイフ二本、そして松明。ハッキリ言ってゴミだ。


「そう言えばゴブリンの両耳って換金出来たはず」


 孤児院を卒業した先輩孤児がそう言っていた。俺は錆びたナイフで耳を切り落とそうとして、思いとどまった。


「ゴブリンは思っていたより賢い。耳を切れば冒険者だと思われる。放置すればゴブリン同士の喧嘩だと思うか?」


 耳を取る行為は不自然だ。ゴブリンに少しでも知恵があれば異物が紛れ込んだと判断する。死体を放置する事で俺の望む効果があるか分からない。だが少なくても異物が居る事は確定出来ない。換金する宛も無い小銭のために不要なリスクは侵せない。いっそアイテムボックスにポイントを振ってゴブリンの死体を全部持って行こうかと考えた。しかしゴブリンのために無駄なポイントを使う気にはなれなかった。


 そして俺は部屋を出て、次のゴブリンを狩りに向かった。

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