074 ラディアンドの冬 状況整理
マックス達と別れた俺はデグラスとラディアンドを繋ぐ街道を歩いている。疎らだが雪が本格的に降り出す前にデグラスに向かう人々とすれ違う。中には普通に挨拶を交わして軽い情報交換をする旅人も居る。俺がデグラスに向かっていた時とは大違いだ。首輪が無いのは当然として、身なりがしっかりしているのが一番大きい。ゴブリンの腰蓑とどっちかマシか悩む孤児院のボロ着を着ている男なんて誰でも全力で回避する。今はヘンリーが用立てた従騎士が着るような小奇麗な格好をしている。これなら道中は安全だろう。
それでも俺の心は上空の曇り空並みに陰っていた。仲間扱いしてくれていた人達と別れるのは思った以上に堪えた。だが彼らに伝えた事とは別の理由で俺は去るしか無かった。それは俺のステータスが関係している。
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名前 アッシュ
種族 人間(15)
職業 ダンピール1、プロトブレイバー5
位階 9/ 21
HP 173/173
MP 96/ 96
SP 5/ 26
体 100 (12/20)
技 73 ( 9/20)
心 41 ( 5/18)
魂 55 ( 7/18)
複合スキル
試作勇者
└05/10 限界LVアップ、取得SPアップ
└02/05 スキル操作
ダンピール
└01/10 剣術
└01/05 吸血、毒耐性
└01/03 マナ呼吸、暗視
個別スキル
生活系
└03/05 共通語
戦闘系
└05/10 槍術
└02/05 跳躍
└01/10 魔導鎧操縦
特殊系
└05/10 アイテムボックス
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渓谷のダンジョンに入った時はレベル6。ダンジョンドレイクと戦う時はレベル9。ダンジョンドレイクを倒した後もレベル9。レベルが上がっていない。本当はそんな事はあり得ない。マックスなんてレベル12からレベル18に上がったんだぞ! ルルブの経験値テーブルが正しいのならレベル9から10に上がる経験値の方がレベル13から14に上がる経験値より圧倒的に少ない。本来なら俺はレベル15前後になっていないとおかしい。
考えられる可能性は一つ。レベル10に上がる魂の試練に合格していない。Cランクのダンジョン攻略と竜種のダンジョンドレイク討伐程度では俺はレベル10に相応しくないらしい。そしてこのままマックスと一緒に行動しては俺はマックスとヘンリーの好意に依存する。二人とつるんでいれば衣食住は生涯心配しなくても良いから。そんなぬるま湯で限界レベルまで問題無く上がるなら俺はぬるま湯を選ぶ!
「と言っても本当にどうするか」
あのダンジョンでの戦いを越える試練なんて思いつかない。いっそ違うダンジョンをソロで攻略しようかと考えたが、この位階では流石にCランクのダンジョンは厳しい。そして今更Dランクを攻略してもレベル10になりそうにない。待てよ! 俺はAランクのダンジョンを既に攻略している。まさかそれが基準になってCランクでは不足だったのか? 不味い。もしこれが本当なら非常に不味い。単独ではレベル10に到達できない。そしてダンジョンクリア時に押し付けられた『魔導鎧操縦』で俺が取得できるスキル枠が一杯になった。卓上なら、GMが次のキャラシートをそっと渡してくる頃合いだ。
「マックスが居れば……」
そんな軟弱で後ろめたい方法では駄目だ。だが前世がブラック企業だった俺に前向きな打開策は思いつかない。
「ならいっそ後ろ向きに全力を出すか」
俺の『プロトブレイバー』は他人にスキルを付与出来る。俺のために戦う人間を揃えて俺がレベル10に到達出来る様に動かすのが最善。……俺もクロードも人を使った経験が無い事を除けば完璧な計画だ!
「ふぅ……」
白む息を吐きだしながら出来る事をやるしかないと首を振る。そして使える手札に目をやる。
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ストックスキル
ブレイブシステム 0/1
吸血 0/1
アイテムボックス 2/3
最大LVアップ 2/3
取得SPアップ 2/3
『体』アップ 3/3
追跡 5/5
マナ呼吸 2/3
森林歩行 5/5
跳躍 9/10
盗掘 5/5
咆哮 5/5
HP増加 5/5
MP増加 5/5
暗視 2/10
毒耐性 9/10
剣術 9/10
短剣術 10/10
小剣術 10/10
槍術 9/10
斧術 10/10
盾術 10/10
弓術 10/10
投石 10/10
跳躍 9/10
天魔法 1/1
光魔法 3/3
火魔法 10/10
魔導鎧操縦 9/10
共通語 9/10
ゴブリン語 10/10
竜言語 3/3
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「マックスのスキルが増えているんだよな」
殺す以外でストックスキルが手に入るのは知っていた。だがこれまで増えたスキルは俺が敵を殺害して得た物が大半だ。何となくだがやっと自分のスキルが分かって来た。『プロトブレイバー』が発動する相手のスキルはストックに入る。それと共同討伐の場合は一定以上のダメージを与えるとストックに入る。ダンジョンドレイクから手に入れた『竜言語』がそれだ。
「まずは俺のスキルが発動する人間を探す事から始めるか」
多少時間が掛かっても今出来るのはそれだけだ。
道中でそんな事を考えていたらラディアンドの北東にある流民街が見えて来た。流民街はラディアンドの城壁の外に安普請の木製の壁で囲まれている。囲まれてはいるが流民街からラディアンドに入る方法はない。ラディアンドに勝手にくっついているコバンザメの様なエリアだ。元々は勝手に住み着いた流民を北東から攻めて来る敵にぶつける生きた盾としてあそこに隔離したのが始まりだ。
それが長い年月をかけて流民と犯罪と腐敗の温床となった。そして市民権を得られなかった孤児の行き付く果てだ。
「どんな所か分からないが、灯台下暗しって奴だ」
そして俺は流民街に入る唯一の門に入った。
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