007 新しいキャラシート1
【A級ダンジョンコアを破壊しました】
【最大レベルが5上がります】
【スキルポイントが5増えます】
【スキル『アイテ……ぐががぎぐげご……クラス『プロトブレイバー』を与えます】
頭を強打した様な激痛を感じてしばしのたうち回った。何が起こったのか分からないと焦る半面、強制的に流れ込んでくる少年の記憶を処理するのに忙しかった。記憶を後で再視聴出来るのなら後回しにしたが、一回限りだとするのならこのチャンスを失うわけにはいかない。俺は真っ暗闇の中で目を閉じ、意識を集中した。クロードの生まれから冤罪での処刑までが走馬灯の様に流れた。理不尽に抗いながらもピットの上で刺殺された少年の一生に涙を禁じ得ない。
「聞いていた話と違う」
それが俺の率直な感想だった。198と言われて19800円ぼったくられたレベルで話が違う! 勇者に相応しい肉体とそれを使えば人生バラ色の謳い文句は何だったんだ? この少年の体ではどんなに逆立ちしても不可能だ!
「待てよ……」
ブラック企業時代は「不可能は嘘だ」と上司にこっぴどくどやされていた。今生では「不可能は不可能」を押し通す! だがまずは自分で確認してからだ。本当は目から調べたいが、真っ暗なので何も見えない。
「見える?」
両目で周りが見えた。失った右目も完全に機能している。俺がインストールされたためか? クロードのあの状態でスタートと言われたらGMをノータイムでぶん殴る。ネットでやっているから痛むのは俺の腕とモニターだろうな。良し、ちょっと落ち着いた。
体の状態は気になったが、まずは周りだ。隣にゴブリンが立っていたら悠長な事は出来ない。卓ゲーの望まぬ冒険者がホットスタートに巻き込まれてゴブリンの集団と死闘を繰り広げる展開には慣れている。
昔の黒白テレビみたいな感じで見える周りを確認する。半径10メートルほどの円形な部屋だ。俺が倒れている中央部は不自然に綺麗だ。壁を見ると色々な骨が山積みになっている。出入り口は一つ。そこも骨が無く綺麗だ。定期的にゴブリンが掃除に来ているみたいだ。折角落ちて来る餌が古い骨に突き刺さって傷むのを好まないのだろう。ゴブリンが豚の生贄とピットの生ごみを結び付けられる知能があれば早い段階でここに来る。早く動いた方が安全だが、自分の状態を確認する余裕はありそうだ。
まずは指を見ながら手を開けたり閉めたりした。
「この手なら剣を握れる」
左足をゆっくり動かす。動くの確認して、空を2~3回蹴ってみる。イメージ通りだ。
「この足なら走れる」
失っていた歯と体中に合った生傷も完璧に治っていた。暗闇の中で立ち上がってみたが、明らかに目線が以前より5センチは高い。この少年の記憶が正しければ、今の俺の身長は平均的な15歳児より少し高いくらいか。
「良かった、最低限のケアはしてくれたか」
前世の経験から善意を疑い過ぎる癖がついた。どうも秩序の神は思ったほどブラック上司では無いみたいだ。この身体なら使いようによっては何とかなるかもしれない。勿論、モンスター蠢くダンジョンの地下10階から生きて脱出出来たら、と注釈が付くが。
「ブレイブシステム!」
動いてくれ、頼む!
祈るような気持ちで与えると言われたスキルを使う。これが駄目なら俺は終わりだ。転生して1日弱で死ぬのは早い方じゃないかな?
しかし俺の心配は杞憂に終わった。頭の中で俺のステータスと言えるものがはっきりイメージできた。
***
名前 無し
種族 人間(15)
職業 ダンピール1、プロトブレイバー1
位階 2/14
HP 26/26
MP 20/20
SP 6/11
体 16 (12/20)
技 10 ( 9/20)
心 8 ( 4/18)
魂 12 ( 6/18)
複合スキル
試作勇者
└01/10 限界LVアップ、取得SPアップ
└01/05 スキル操作
ダンピール
└01/10 剣術
└01/05 吸血
└01/03 マナ呼吸、暗視
個別スキル
生活系
└03/05 共通語
***
色々気になる表記があるが、上から見て行こう。
名前は無い。今の俺は前世とクロードの燃え尽きた灰だ。そんな俺が前世の名前やクロードの名前を名乗る資格はない。う~ん、それならアッシュと名乗ろう。クロードの記憶と俺の読んだルルブから考えて余り不自然じゃない。
種族は人間で年齢は15歳だ。ここはクロードのままだ。
職業はダンピールとプロトブレイバーか。プロトブレイバーは秩序の神由来だから今は措いておこう。それより俺はいつ人間を辞めたの? クロードが死んだ時か? となるとこの地はどれだけ呪われているんだろう。ここからは俺の推測だが、死んだクロードの恨みがピットに溜まる闇の力と化学反応を起こして彼をヴァンパイアにした。ルルブにも強い恨みを抱いた人間が穢れた地で死んだら強力なアンデッドとして蘇る事があると書いてある。ここで俺の魂が入る事でこの身体は生き返った。そうなるとヴァンパイアとしての存在に矛盾が発生する。結果的に生きているヴァンパイアとかハーフヴァンパイアと呼ばれるダンピールにランクダウンした。
弱体化したと言ってもヴァンピールはPCが使うには強すぎるクラスとしてGMが嫌っていた。詫び石として強いクラスをくれたのか? ヴァンパイアだったらキャンペーンのラスボスとして君臨出来たろうが、それだと俺が勇者に倒される立場になってしまう。詳しいスキル性能は後で説明するとして、ステータスの『体』と『技』の値と限界を+2する鬼畜な基礎性能だけでも如何に強いか分かる。
位階は俺の総合的な強さだ。レベルはクラス合計と覚えると簡単だ。しかしクラス合計はレベルを超える事が出来ない。NPCなどにはレベル8でクラス合計が4みたいなのが平然といる。ルルブによると最大レベルは生まれた時から決まっている。クロードが孤児院に逃がされたのも最大レベルが8と低かったおかげだ。生まれた日に殺されなかっただけ幸運だった。この情報は一般に秘匿されているが、限界レベルは各地にあるダンジョンコアを壊す事でしか上がらない。俺はA級ダンジョンコアを壊して限界レベルが13になった。プロトブレイバーのスキルで更に+1して今は14だ。限界レベル次第で就ける職業や身分が決まる世界では14は低すぎる。せめて20は欲しい。
HPとMPは名前の通り体力と魔力を表す。どんなにHPが高くても即死攻撃を食らったら死ぬので過信は出来ない。HPは『体』と『技』の合計値でMPは『心』と『魂』の合計値だ。ルルブには『魂』が無かったので後のルルブで追加されるのか、この世界特有のステータスだ。どうやら持てるスキル数に影響するらしい。
SPを使用する事でスキルを覚える事が出来る。人間は初期値4でレベルアップ事に+1される。俺はその上でA級ダンジョンコアを破壊して+5、プロトブレイバーのスキルで+1されている。そして既にスキルに4ポイント振られている。今の俺の様にこの世界の人間は生き方によって自動的に割り振られる。そのためにSPがただ余りの人が多い。その点、俺はブレイブシステムのおかげで任意で振れるので常にレベルに見合う強さを発揮できる。
『体』『技』『心』『魂』の4つは俺を表すステータスだ。現在値(基礎値/最高値)だ。『体』は筋力などのフィジカル面、『技』は技量や身のこなし、『心』は魔力や知恵、『魂』はいまいち分からない。レベルアップするたびに基礎値までの値がランダムで現在値に加算される。人間は最高値が全部18だ。俺はヴァンピール効果で『体』と『技』が20になっている。基礎値は10が平均なんだが、クロードは『体』10と『技』7と『技』がかなり低い。『技』が低かったのは怪我の影響だろう。実はクロードは『心』12『魂』14と魔力素養が恐ろしく高かった。それが『心』4『魂』6に落ちたのは俺のせいだ。前世の俺の弱さがそのまま数値として反映されている。知識はステータス計算に反映されない項目の様だ。
さて、次はスキルを見てみよう。スキル次第でとんでもない産廃ビルドになっているかもしれない。
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クロードのキャラシート
名前 クロード
種族 人間(15)
職業 剣士1
位階 1/ 8
HP 7/ 7
MP 23/23
SP 2/ 5
体 6 (10/18)
技 1 ( 7/18)
心 12 (12/18)
魂 11 (14/18)
複合スキル
剣士
└01/10 剣術
└01/05 HPブースト
個別スキル
生活系
└03/05 共通語
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