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060 渓谷のダンジョン 地下18階

「違う」


 地下18階に到達した俺たちだったが、ヘディンの一言で静まり返った。


 地下14階の隠し部屋を見つけてから地下15階から17階までは必要以上に隠し部屋探しを慎重にやったが、残念ながら一つも発見できなかった。そのため地下14階の隠し部屋は採掘エリアと近すぎた関係で見落とされていたと言うのが主流の意見になりつつあった。地下18階が当初の情報通りの最下層なら確定だった。しかし地下18階はダンジョンボスがボス部屋で待ち構えている階層では無く、一般のダンジョン階層になっていた。


「偵察……は無しか」


 ヘディンが何か言おうとしたがボルガが首を横に振る。ドロットは無言で先を睨んでいる。


「未知のダンジョン探索とはドワーフの血が騒ぐ」


 ガングフォールが意気消沈しそうな皆を鼓舞する。


「歳なんだから無理をするな。ここからは若い俺が一人で行っても良いぞ?」


 俺も負けじと名乗りを上げる。カーツ達は冗談と思ったみたいだが、俺は本気だ。『マナ呼吸』に切り替え、『跳躍』でダンジョンの通路を飛べば数時間で1階を走破出来る。それをやったら俺は自分の事を人間だと誇って言えるか分からない。少なくとも一緒に潜っている俺より強い人間でこれが出来そうなのは一人もいない。


「ここは進むべきだ。Dランクのダンジョンは地下20階までだ」


 マックスが力強く言う。10階も残っているのなら即時撤退だが、現実的には2階の探索で終わる。撤退時に歩く距離なども考えるのならここは前進一択。


「幸い時間的余裕はあります。それに全員揃っています」


 ヘンリーが実務的に有利条件を列挙する。全員生きているのは確かだが、地下11階以降は怪我をする者も多く出ている。モンスターの一撃は厄介だが、それ以上にモンスターにトラップに誘導されて怪我を負った方が重傷化する傾向にある。それでもポーションを湯水のごとく使い、重傷者はヘディンのヒーラーが頑張って癒したから脱落者はいない。それでも怪我を負ったストレスと失った血までは回復していない。カーツ傭兵団の数人は貧血でお荷物化している。彼らの代わりに俺が前線で戦う時間が増えたのでここまでは俺に取っては嬉しい展開だ。ただこれ以上お荷物が増えると守り切れない。


「俺の傭兵団はまだ少し行ける。流石に地下21階があるのならまた相談させてくれ」


 カーツがしばらく考えて話す。個人としては進みたいが、団長としては退きたいと言う葛藤が見て取れる。初ダンジョンがDランクと思ったのにCランクだったとすれば悪夢以外のなにものでもない。しかしこの場でダンジョンの正確な情報を知る方法は無い。地下20階で終わりと信じて進むしかない。そして俺は卓上経験からカーツの望みが叶わないのを知っている。俺は俺自身が感じた『毒感知の杯』が地下14階で出た時の違和感を信じる。


「了解した。とにかく進もう。地下19階で終わりの可能性も十分ある」


 ヘディンが軽口を叩くもそれを言った本人が信じていないのが丸わかりだ。ヘディンは『演技』スキルでも取った方が良さそうだ。幸いにもヘディンは自分のパーティーの状態を把握している。そして全員が進む事を望んでいるのを知っている。道中で彼らと小言を交わした限り、彼らは地下20階まであると想定している。一年で一階層が増えると言うダンジョンを潜る冒険者の信じるジンクスと照らし合わせても彼らの判断は妥当に思える。


「方針は?」


 ボルガはマッピングで階層全体を把握するのかとにかく下行きの階段を探すのか聞く。俺なら後者を選ぶが、未知の階層は宝の山だ。例えダンジョンを攻略しても得た知識と財宝には値千金の価値がある。だから冒険者なら時間が掛かっても前者を選ぶ。ヘディンは一瞬ガングフォールとマックスを見るが、二人はヘディンに任せる選択をした。ヘディンの判断を信じているのと同時に地下14階で採掘に時間を取ってくれたお礼でもある。


「ペースを落として完全攻略だ」


 ヘディンは折衷案を指定した。ペースを落とすのは傭兵団の回復を期待しての行動だ。ダンジョンに慣れていない傭兵団が滞在日数の増加で回復するかは甚だ疑問だ。


「ペースが落ちるのならもうちょっと滋養強壮に効く料理が作れそうね」


 エルフ伝来とか言うゲロ不味いスープの味を更に濃くすると宣言するキスケを見て傭兵団の生気が抜ける。本来なら日持ちしない材料が多いが、俺の『アイテムボックス』に入れる事で劣化速度を大幅に抑えられる。流石に時間を止める事は出来ないが、いずれレベル6に上げたらそれも可能になるはずだ。


「話し合いは十分だ! 行くぞ、ここからの宝箱は分配じゃ!」


 ガングフォールが太っ腹な事を言う。これには冒険者と傭兵団双方が色めき出す。マックスとヘンリーは既に貰っている。二つ目の新しい宝箱の中身はガングフォールが取るなんて予想しやすい。だが三つ目か四つ目の新しい宝箱なら冒険者と傭兵団が貰える目が十分ある。


 そして俺たちは地下18階の攻略に乗り出した。想定されるモンスターは脅威ではない。トラップも油断しなければ即死はない。これから下で俺達を待つであろう苦難を忘れる様に宝箱を求めて一歩踏み出した。

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