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059 渓谷のダンジョン 地下14階

1月に続いて2月も毎日更新達成!


3月も毎日更新できるように頑張ります。

「うおおお! 出ろぉぉぉ!!」


 カーツが必死にツルハシを振るっている。キスケを除いたカーツ傭兵団も似た感じだ。


「きっと深い所にあるぞぉ! そのためにはこのアダマンタイトでコーティングしたツルハシこそが鍵!!」


 ガングフォールがダンジョンの中なのを忘れたかのように売り込みをかけている。最初に普通のツルハシを売っていたのにカーツ達が熱中し出すと更に良いツルハシを出して来た。流石にこんな手に引っ掛かる事は無いだろう。


「買うぜ! ありったけを寄こせ!!」


 カーツ達が叫ぶ。


「ちょっと待ちなさい! 予算はどうするの!?」


 キスケが堪らず猛抗議する。


「金塊を当てれば一発逆転だ!」


「いかにも!」


 カーツの返答にガングフォールが同調する。キスケが仲間を探して他の者たちを見回すも、マックスとヘンリーは既にアダマンタイトのツルハシで掘り進んでいる。ヘディン達は顔を合わせない様に周辺の警戒を受け持ってくれている。ドワーフ達は酒を飲んだり、正しいのか分からないアドバイスを飛ばしている。


「アッシュが最後の砦よ! カーツに何か言って!!」


「俺がその鉄のツルハシを借りたら、アダマンタイトのツルハシは無駄にならないぞ」


「アッシューーー!!」


 キスケの悲鳴がダンジョン中にこだまする。採掘を始める前に地下14階のモンスターを全て駆除したから大丈夫だろうが、余り大きな音を出して欲しくないものだ。


「と言う事で俺も軽く掘ってみるか」


 カーツからツルハシを受け取って俺は採掘エリアの反対にある壁を軽くたたきながら歩いた。コン、コン、コン、カッ、カッ……。音が違う?


「ん?」


 ローグのドロットが瞬時に反応した。


「任せる」


 俺はそれだけ言って採掘エリアにツルハシを打ち込んだ。盗賊系技能を持たない俺では隠し通路か隠し部屋を発見する事は出来ない。素人が下手に手を出してトラップを発動させたら事だ。ドロットとドワーフがいれば下手な失敗はしないだろう。


「スイッチ型か。キスケ、風を流してくれないか」


「しょうがないわね」


 ドロットの頼みでキスケが壁に向かって風を流す。キスケは意外と頼られると弱いのか? ヘディン達の魔法使いは戦闘特化だし、キスケみたいなオールラウンダーは確かに珍しい。卓上ではオールラウンダーをサブクラスで作る事はあったが、器用貧乏過ぎてメインではとても運用できなかった。現実ではもう少しキャラビルドを見直す必要があるかもしれない。


「ここだけ風の流れが違う。ここに壁を固定するつっかえ棒があるとすると、壁を開くスイッチはここか……それともここか!」


 ドロットが壁の石を押す。そして5回目辺りでガコンっと壁の中から何か音がした。これには流石にカーツ達も採掘を一時止めた。


「おい、この壁を押すのを手伝ってくれ」


「財宝の匂いがする!」


 そう言っていち早く壁に体当たりするガングフォール。


「ガングフォール様!?」


 残ったドワーフが急いで追随する。ガングフォールを助けたいのか危険から引き離したいのか。人間なら後者だろうが、ドワーフの行動理念ではどうだろうか?


 ドワーフ四人の力技でゴゴゴと壁が後ろに下がる。


「隠し部屋か!?」


 マックスも興味津々で見る。


「私達も学院でダンジョンを攻略しましたが隠し部屋は初ですね」


「見ろ! 宝箱だ! ドロット、早く開けるんだ!」


 ガングフォールがドロットを急かす。


「お任せを。誰か灯りを」


 ドロットはそれから数分宝箱と悪戦苦闘して遂に開ける事に成功した。


「罠付きか」


 ヘディンが渋い顔で言う。


「ミスったら爆発するタイプだ」


 ドロットも厳しい表情だ。


「初だよな?」


「少なくてもこのダンジョンでは過去に出た記憶は無い」


「となると変化か?」


「ただ俺たちが気付かなかっただけじゃないか?」


 ヘディン達が話し込んでいる横でガングフォールはお宝の鑑定で喜声を上げている。


「これは『毒感知の杯』じゃな」


 名前の通り、杯に飲料や食糧を入れるとそれに毒があるか判定してくれる便利な魔道具だ。前世では銀がどう反応するかで毒を見極めていたが、それに似た効果があると思えば良いか。魔法と毒消しがある世界では余り重用されないのではないか?


「これが! 王家が主催する晩餐会では常に大事な役目を担う魔道具ですか! 私もこんな近くで見たのは初めてです」


 なんかヘンリーが感激している。


「これはマックスに与えよう」


 ガングフォールがマックスに『毒感知の杯』を手渡した。未発見の宝箱の中身はガングフォールが分配する決まりだ。一個だけなんで不公平に見えるが、名目上のリーダーを優先するのは分かりやすい。


「私で良いのか?」


「Dクラスのダンジョンコアを献上すると何も残らん。なら魔道具の一つを手元に残しておけば攻略の証拠になる」


 貰うかどうか迷うマックスにガングフォールがその理由を言う。


「それならありがたく!」


 マックスが満面の笑みで受け取る。


「やれやれ。宝箱が見つかったし、採掘はここらで切り上げるか」


 縁起を重視したカーツ。


「屑鉄しか出なかったものね!」


 お構いなしに雰囲気をぶち壊すキスケ。


「きっと次の財宝で取り返せる!」


 カーツが賭け事で連敗する様な男の台詞を吐く。


 しかしDランクのダンジョンの低階層にしては良いお宝が出た。この階層でこんなお宝が出るのはもっと上のダンジョンのはずだ。少し気になるが、最下層と目される地下18階まで進めば分かるか。


応援よろしくお願いします!

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