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053 渓谷のダンジョン 攻略開始

 ダンジョンまでの道中は大きな出来事は無かった。少数だと俺達を侮ったゴブリンの襲撃が数回あったが、特に語る事も無く殲滅した。非常に業腹だが、実際に戦う所を見せられると俺自身の自己評価を下方修正するのが妥当かもしれない。一対一のバーリトゥードなら当初の自己評価は正しいが、パーティー単位で見るとソロでやっている俺は大苦戦しそうだ。俺を襲って来たサウルみたいな奴らならパーティーの有無関係無しに絶対に勝てるが、あんな仕事をしているだけあって弱かったか。俺も仲間か、少なくても手駒を用意すべきかもしれない。ダンジョンが終わってからの課題の一つと覚えておこう。


「まじで酷い立地だな」


 カーツが呆れて言う。


「同意する。ダンジョンの調査も俺達が2年前に入ったのが最後だ」


 冒険者パーティーを率いるヘディンがカーツに同意する。リーダー同士で良い関係を築けているみたいだ。


 領主か冒険者ギルドは不人気なダンジョンに調査員を一年に一回は派遣する。ダンジョンのランクがCランクに上がるようなら急ぎ対応しないといけないため、かなり重要な仕事だ。去年と今年に誰も派遣されなかったのは大きい懸念だ。ヘディンは今回の攻略と同時に調査をやって報酬の二重取りを企んでいるのだろう。それくらい強かな方が逆に信用できる。


「調査がされなかった事に何か特別な理由はありますか?」


 マックスの危険に敏感になっているヘンリーが聞く。


「1年前は大雪だった。それで調査員が途中で引き返したらしい。俺から言わせれば雪を言い訳にここまで降りなかったんだろう」


 このダンジョンの入り口は地面に開いたクレヴァスから300メートルほどロープで降りた所に開いている。ロープを使って上り下りするだけでも大変だ。勿論ダンジョン前に攻略拠点を展開するスペースは無い。崖上に攻略拠点を作ってもダンジョンの攻略組とのやり取りが大変だ。出来なくは無いし、Cランクになったら赤字でもやるしかない。それでもDランクである限り放置が正解だ。


「今年は南の方にあったダンジョンがCランク化の兆しがあるってんで大半の冒険者はそっちに行った。結局はハズレだったが、俺達みたいなベテランは他の調査に行く余裕は無かった」


 俗に言うダンジョンの活性化だ。どうやらランクアップはしなかったが、ランクアップすれば精鋭部隊で即攻略を狙ったんだろう。Cランクのダンジョンから回収できるCランクのダンジョンコアの価値はDランクのダンジョンコアの10倍以上とも言われている。Cランクのダンジョンコアは裕福な貴族が装備する魔導鎧の動力の最低条件を満たしているため、高値で取引されたり、王族や上級貴族が配下に下賜する際に使われる。


「まあとにかく入ろう」


 カーツの一言でそのまま全員で入った。補助要員を外に残さなくて良いから精神的なストレスが無い。ガングフォールに聞いた話が本当なら、ダンジョン攻略失敗の3割は攻略拠点の失陥によるものだ。


「ボルガは先行しろ。地下10階まで罠は無いはずだが、用心するに越したことはない」


 スカウトのボルガが無言で先行した。ローグのドロットも一緒に行ったが、彼が動いたのを気付けたのは何人居るか?


「罠が無いのは良いな! それに本当に明るいし」


 カーツがはしゃぐ。ダンジョンは初めてなのは本当みたいだ。俺も初めてだが、卓上で嫌と言うほど遊んだしカーツほど浮足立っていない。


「ダンジョンによるが、大半のダンジョンは地下10階までは明るいし罠も無い。敵もゴブリンを始めとした雑魚だ。ま、その分お宝も期待できないんだがな」


 ヘディンが丁寧に説明する。そう言うタイプじゃないと思う。となると俺かマックスのために説明する様にガングフォールが言い含めたか?


 廃寺院の壁を覆っていた光苔と違い、ここは魔法の力で通路全体が明るい。この光源の種類でモンスターがねぐらにしている廃墟かダンジョンか一発で分かる。更に地下に降りると光苔で明るい階層があったり、真っ暗な階層も出て来る。Dランクダンジョンではそこまで特殊な階層が出るほど深くない。


「敵よ!」


 キスケが右側の通路を指差す。どうやら『生命探知』はダンジョンのモンスターに有効みたいだ。


「まずは俺達から行くぜ!」


 そう言ってカーツと彼の配下が迫りくるゴブリン5体を軽く屠った。倒されたゴブリンだが、少しすると魔石を残して塵になった。これが外とダンジョンの二つ目の違いだ。モンスターが魔石を持っている限り食べる必要も寝る必要も無いと言われている。そしてモンスターが何らかの理由でダンジョンの外に出ると、魔石が消えてモンスターが『受肉』する。世界に溢れるモンスターはこうして広まったと考えられている。


「これが魔石か」


 カーツはそれを拾い、ドワーフに渡した。契約に従い、算出する魔石は全部ガングフォールの商会の取り分となっている。


「分かっていたとは言え、ダンジョンなのを再確認できたし、早く攻略しよう」


 ヘディンが「急ごう」と言い、カーツも同意した。


 ダンジョン攻略をする限り、定期的なモンスターとの戦いは必ず発生する。そして戦って得られる魔石は全部ドワーフのもの。二人は急ぐことで「ただ働き」を最小限にとどめる積りだ。もしガングフォールが攻略ペースを速めるためにこの条件を入れていたら、彼はとんでもない策士になる。流石にこれを聞くわけにはいかないが、俺がダンジョン攻略をする時には参考にしよう。

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