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226 横やり 中

 以前使った会議室に俺、アメリア、グイード、スフィー、そして侯爵家の騎士達のリーダーを自認するレイナーが揃う。幸い四人の騎士達はまだ何も問題を起こしていなかった。レイナーはラディアンド籠城戦に参加していて、宰相家の騎士達には戦友に似た感情を抱いているのが幸いした。となると留守番を命じられた残り三人の方が心配になる。とにかく話を聞くとしよう。


「姫様、アッシュ卿は部外者です。聞かせても良いのですか?」


「席を外せと言うのなら外そう」


 レイナーの言い分は尤もだ。後で必要な事をアメリアに聞こう。


「いえ、それでは二度手間です。それにアッシュ卿無くしてこの村は立ちいかない状況です」


「姫様がそれで良いのなら」


 レイナーはあっさり引き下がる。アメリアが許可したと言う状況が大事なのだろう。


「では、僭越ながら私が状況を説明します」


 なんで未成年のスフィーが説明をと思ったが、彼女の話を聞くにつれ、彼女以外では説明できないと知る。侯爵家に忠誠を誓う大人では口が裂けても話せない。


「侯爵閣下は4月15日に侯都に到着しました。ロドニー様は4月16日に王都を目指して出発しました」


 侯都は大きい城塞都市だ。数日休む余裕はあったはず。それなのに到着した次の日に出発するとはおかしな事だ。アメリアも不思議そうに首を傾げるが、スフィーの話の腰を折らない様に無言を貫く。


「4月16日に戦勝記念の晩餐会が開かれました。私も父にエスコートされ参加しました」


「私も参加した」


 スフィーがレイナーの方を見ると、彼も参加したと告げる。ここで何か問題が発生したか?


「侯爵閣下はラディアンド籠城戦が人間の勝利で終わった事、辺境伯様が残存オーク軍と戦っている事、そして参加者には働きに応じた報酬を約束する事を宣言しました。……最後にアメリア様を侯爵家の長女と認めると宣言しました」


「え?」


 驚いたアメリアが最近は付けるのが上手くなっている貴族の仮面を落とす。分からなくもない。アメリアの存在は出来る限り隠すのが基本方針だ。奇跡が起これば学園入学まで正室から隠し通せるかもしれなかった。まさか侯爵が帰還して一日でばらすとは思わなかった。


「父も驚いていました。予定と違うと呟いているのを聞きました」


 侯爵の独断か? またはそうしないといけない事情があったか。続きを聞く前に頭が痛くなってくる。


「それを聞いた正室様が半狂乱で『偽者だから殺せ! 皆が騙されている!』と大騒ぎしました。その後は病気療養として離れの方に移ったと聞きます」


 軟禁までは行ったが、殺す事は出来なかったか。


「それは良い事を聞いたわ。あの女は父母の仇。勝手に処断なんか許すものですか!」


 アメリアの髪の毛から戦闘時の様に火の粉が舞う。可燃性は無いが、視覚的インパクトは恐ろしい。スキル練度が高いとこの火の粉をある程度コントロール出来、それが侯爵家を継ぐ基準の一つとなっている。


「姫様、落ち着いてください!」


「落ち着いているわ、スフィー。でも貴族は家族を殺されて優雅に笑みを浮かべるものかしら?」


「そ、それは……」


 スフィーは言葉に詰まる。はいかいいえ、どっちを答えてもアメリアの不興を買う。


「折角来てくれた子相手に凄む事は無いだろう。とにかく! アメリア相手に両親の事は禁句だ。以後気を付ける様に」


 部外者の俺が仲裁に入る。パワハラと圧迫面接は前世で懲り懲りだ。


「アッシュの甘さの半分が私にあればと思う事はあるのよ?」


 落ち着いたアメリアが冗談を飛ばす。屋敷が燃える前に鎮火出来て良かった。


「アッシュ様、ありがとうございます」


 なんか滅茶苦茶睨まれている。もしかしてドMであの状況を楽しんでいたのか!? 侯爵家の逸材は粒ぞろいだ!


「アッシュが何を考えているのか分からないけど、たぶん間違っているわよ」


「俺の考えをさも当然のように読まないでくれるか?」


「ならもうちょっと隠すのが上手くなりなさいよ」


 表裏があまりない良い男になんたる言い草だ!


「ゴホン! とにかく正室様は病気療養で姫様が学園に入る時までは動けん。一安心だと考える」


 レイナーはそう言うが、果たしてそうだろうか? 侯爵の知らない手勢の一つや二つは当然存在しているはずだ。病気療養中だからこそアメリア殺しの責任を回避出来る、と言う考えが成り立つ。勿論許されはしないが、視野が極端に狭まった状態ではどう動く分からない。


「そうね。そうだスフィー! あの女がなんて言っていたか覚えている?」


「大まかには……」


「なら第三者の存在を示唆する言葉は?」


「!? ……そう言えば『あの男は本当の事を……』と言っていた様な気がします」


「すまん。事態の制圧を急いで詳しい所まで聞いていない」


 レイナーは聞く余裕が無かったと言う。


「お爺様より先に情報を伝えた誰かさん。いつ接触したかで仕込みの度合いが変わりそう」


「閣下に調べて貰う必要がありそうだ」


「そうね。少なくてもラディアンド籠城戦の間に接触できる侯爵家の人間なんて限られているはず」


 俺とアメリアは簡単な調査になると思い込んだ。この時点ですでに手遅れな事態に片足を踏み込んでいるとは想像すら出来なかった。


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