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220 さらばラディアンド

2部スタートです。


ダンジョンと南の帝国が舞台になります。


1部1章~5章は2部と整合が取れるように少しずつアップデートします。

 王国歴503年に発生したオークの南進。北方の国境を越えられたユーグリン王国は常勝無敗の地である城塞都市ラディアンドでオークを迎え撃った。多大な犠牲を出すも、ラディアンド辺境伯の指揮下でオークを撤退させる事に成功する。されど戦いの混乱と後処理でラディアンド籠城戦が終了した日は確定しない。縁起が良いとして戦いで戦死した第4王子マクシミリアンが蘇生した3月26日を勝利の日と選定する動きがある。ラディアンド地方以外では特に抵抗なく受け入れられている。


 城塞都市ラディアンドの6割が焼失する大激戦を生き残ったのだからもっとゆっくりしたい。しかし俺は辺境伯のお願いで4月5日にラディアンドを退去させられた。マックスかヘンリーが居たらもっと激しく抗議出来たが、辺境伯の怨敵である俺は殺されないだけ幸運と言われたら反論出来なかった。それに辺境伯が語る政治と軍事上の都合は正当なもので、反対できる雰囲気では無かった。


 南進したオークの本隊は撤退中だが、未だ2つの城塞都市は10万人規模のオーク軍に包囲されている。さらに1つの城塞都市が落とされ、夥しい死傷者が出ている。最悪30万人のオークがまだこの地に居座っている。辺境伯は5伯爵を率い総勢1500人の軍で2つの城塞都市の解囲に向かう。他の貴族の兵を残して辺境伯はラディアンドを去る事は出来ない。なので俺は辺境伯が発つ前に出ないといけない。俺だけなら準備に1日あれば問題無い。だが俺は復興支援の名目で奴隷を90人も買わされた。スキルがあってもスキルレベルが低い売れ残りと言う完全な嫌がらせだ。それで食糧と10日ほどの旅程に必要な物資を追加で購入しないといけない。馬車を買えれば楽だったが、それを引く馬は全部戦争のために徴発された後だ。


「リル、必要な物は揃ったか?」


「はい主君。侯爵家と王家の分も【アイテムボックス】に入っています」


 今回の大移動はラディーフェル侯爵家とロドニー・ヘインモア子爵が率いる王家の人間と奴隷が一緒だ。都合1300人の10日で食べる食糧を俺とリルの【アイテムボックス】に入れてある。俺とリルがいなければ1000人近くの奴隷は道中に餓死していた。


「助かるぜ。と言うか俺と南方戦線に来てくれよ」


「あんな死地に好んで飛び込む気は無いぜ、将爵様?」


「カーツで良いって言っているだろうが! こっちも未来の城爵様と呼んでやろうか?」


「出来れば永遠に延期したい未来だ」


 今回の復興支援で一番割りを食ったのは傭兵団を率いるカーツだ。念願の陞爵が叶い、一角の将軍として南方戦線に凱旋出来ると思った矢先に50人の奴隷を購入する羽目になった。購入資金は当然ない。維持する資金も当然ない。大規模な奴隷を運用するノウハウまで当然ない。ノウハウに関しては俺も無いので笑えない状況だ。そこに救いの手を伸べたのがロドニーだ。資金援助と引き換えに王家の兵と奴隷を王都まで護衛する仕事をカーツに持ちかけた。カーツも王都に行く必要があったのでちょうど良かったと言える。


 予定では10日掛けて1300人はラディーフェル侯爵家の本拠地である侯都を目指す。途中アメリアが与えられた村があるので、アメリア個人と俺の100人ほどの手勢はそこでお別れだ。1200人が侯都に到着した後、ロドニーは20日以上かけて800人を引き連れて王都を目指す必要がある。ロドニーとカーツに取っては想像を絶する苦行だ。何せその800人に【アイテムボックス】持ちは一人もいない。なので俺の右腕であるリルを王都に派遣する事を認めさせられた。見捨てると寝覚めが悪いし、ロドニーが宰相家を動かして【アイテムボックス】持ちをグリフォンで侯都に呼んだところで彼らの収容面積はリルの10分の1以下だ。


 無論リルを派遣する見返りはしっかり宰相から書面で貰ったのは言うまでもない。リルは500年ぶりに陞爵するダークエルフなので色々と入り用な物が多い。そこら辺の面倒な雑事と子爵領を差配できる代官を紹介して貰う事にした。宰相の紹介なら代替わりするまでリルを裏切る事は無いだろう。それに俺をこの世界に転移させた秩序神が正しいのなら世界は10年以内に滅亡するんだ。余り先の事を考えても仕方が無い。


「皆さん! そろそろ出発します!」


 1300人の先頭でアメリアが赤い長髪を靡かせながら出発を宣言する。籠城戦の最中に発見された行方不明の侯爵の孫娘として八面六臂の活躍をしたアメリアは侯爵家譜代の心を掌握している。籠城末期で両腕を引きちぎられた侯爵に代わりこの大移動の音頭を取っている。侯爵の両腕はここにいないシーナがくっつけたので、数少ない馬車で移動する侯爵は仮病だ。ラディアンドを出る時の先頭にアメリアが居る政治パフォーマンスだ。


 殿軍を務めているのでラディアンドの東門を最後に出る。振り返って10年近く住んだ城塞都市をもう一度見る。次にこの門を潜る時はラディアンドを落とす軍の先頭になっている予感がする。オークの南進で関係者の予定が狂ったが、王家と辺境伯家は既に戦争不可避な抜き差しならぬ状態にある。未来の戦争の事は忘れて、この大移動に集中しないと! 絶対に俺とリルに必要以上の負担がかかるのは分かっているんだ!

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