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188 ラディアンド籠城戦 魔導鎧戦線 下

 本来は『風魔法』を用意て足を切り裂きたいが、魔法を使うには詠唱が必要だ。なので魔力を剣先に纏ませ、かまいたちを放つ。スキルレベルが上がると物理攻撃による遠距離攻撃の方が魔法より早く発動する。魔法はそんな物理に対抗する事無く大規模化に舵を切る事で住み分けをする。


「「うわあああああ!」」


 悲鳴を上げて倒れる3人。良い様だ。


「離脱と言った。すぐに魔導鎧から降りろ!」


「味方を攻撃するか、この外道が!!」


「勘違いしているみたいだな? 貴様らの命に毛ほどの価値も無い。だが魔導鎧はラディアンド防衛の要。貴様らのバカで失うわけにはいかない」


 貴族が貴族に「無価値」呼ばわりされるのは憤死ものだ。俺としてはリアルに憤死してくれた方が『アイテムボックス』への収容が早くなるので希望したい。


「バカな……!?」


 バカは貴様だ。


「殺し間に誘い作戦が失敗してオークが混乱している内に早く! それとも背中から刺してやろうか?」


 背中傷を受けた日なんて一家揃って村八分だ。こっちは生きていれば傷が癒えた後に最前線に突撃して戦死すれば名誉が回復出来る。魔導鎧回収を考えるのなら生かせないので拭えぬ恥を未来永劫抱える事になる。


「操縦席が開かない!」


 前面装甲が開いて乗降する魔導鎧は前のめりに倒れると脱出できない事がある。俺ならまだ健在な両腕を使って体をひっくり返すが、彼らはこういう基本動作すら出来ないみたいだ。『魔導鎧操縦』スキルを持っているはずなのにスキルによる行動補正が機能していない? 俺の『槍術』とアメリアの『火魔法』から考えるに、使いこなせる前提知識が無いと最低限の基本動作しか出来ないのだろう。時間が出来たら『風魔法』の基本書を読んだ方が良さそうだ。


 俺は無言で3機をひっくり返す。出て来た3人は今にも俺を殺さんばかりに不満を露わにしているが、ラディアンドに帰還するまでは大人しくしているだろう。


「へし折れー」


「五月蠅い」


 シエルの言う事は尤もだ。こいつらはマチアスとの戦いを見ていないのか? 実力差を理解できないほど無能なのか? 前世のブラック企業時代は理解していてもワンワン吠えないといけない下請けとのやり取りが多かったが、あれと同レベルの存在と仮定すべきか。あっちはサプライチェーンから切ると言う大鉈を振るう最終手段があったが、こいつらには通用しそうもない。


 それに今の俺は滅茶苦茶凹んでいる。位階レベル10に上がるには無私の人助け精神が必要だった。片腕を失う大怪我を負ったが、結果的には良い方向に進んだ。悪魔化したマチアスを倒しても位階レベル19止まりだったのに、無能な味方を攻撃したら位階レベル20に上がった。位階レベル20に上がるには位階レベル10の覚悟の全否定が必要とは余りにも惨い。


「闇落ちー!」


「違うから!」


 俺が一番気にしている事をズケズケと! 


 本来そんな余裕は無いが、辺境伯の魔導鎧乗りを見る。必勝の策が敗れたので力攻めに切り替えるオークを見る。ラディアンドの高い城壁を見る。


「ふぅ。いつからこんな勇者の真似事をやり出したんだ?」


 なんでこんな絶望的な籠城で人間を守るために獅子奮迅の活躍をしているんだ。俺らしくない! こんな便利なスキルがあるんだし、何処かでゆっくり生活すれば良い。俺はどんなに頑張っても自分自身を救えるかすら分からない。欲張っても自分に大事な数人を救えるのが関の山だ。推定闇堕ちで何が大事か気付けたのは怪我の功名だ。


「やるー?」


「そうだな! やってやろうじゃないか!」


 前世のブラック企業時代じゃないんだ。上司の顔色とか同僚の裏切りを気にする必要なんてない。俺は俺のやりたい事を押し通す。


「た、隊長! オークが迫っている!? 早く飛ぶんだ!」


「この時を待っていた!」


「は?」


「オークども! 策を人間に見破られて悔しいか! さあ来い! 俺は逃げも隠れもしないぞ!」


 スキルポイントで取得した『オーク語』を使い大声で叫ぶ。当然『風魔法』で広く拡散する。人の言葉が分からずともオークの言葉で貶されれば沸点が低い脳筋戦士には効果抜群だ。興味が無いように見ていた近くのオーク部族まで雄叫びを上げて俺に迫る。付近のオーク全員で誰が俺に戦斧を一番最初に叩きこめるかレースをしている様だ。


 さあ風の大精霊よ、力を貸せ! 相手は悪魔じゃないが俺は貴様の力が必要なんだ! 「こいつ後で絞める」と言う感情と共に風の大精霊の力が魔導炉を満たす。


「シエル、制御は任せるぞ!」


「でっかいのぶちかませー!」


 この魔導鎧ではフルパワーでぶっ放したら一発でスクラップになりそうだ。なんとか城壁の上に帰還するまで持たせないといけない。そこら辺の調整はシエルが上手くやってくれるだろう。


「もう駄目だぁぁぁ!!」


 悲観に暮れる辺境伯の魔導鎧乗りが五月蠅い。


「黙っていろ! 真の魔導鎧乗りの力を見せてやる!」


 もはや彼らは眼中にすらない。


「「死ね! 大鎧の人間!」」


「風よ吹き荒れよ、『サイクロンテンペスト』!」


 風の大精霊に『風魔法』レベル7の広範囲殲滅魔法の詠唱と魔力を肩代わりさせる。『天魔法』と『火魔法』は指定したエリアで発動するが、『風魔法』は術者中心に発動する。俺自身が台風の目になる! ルルブでは英雄級の冒険者パーティーが悪魔の大軍に囲まれた際に時間稼ぎとして使った使用例がある。そんな感じで意外と使い勝手が悪い魔法だ。


 無色の風に突撃するオークは瞬時に細切れになり、血が辺り一面に飛び散る。同胞の血の匂いでオークは更に理性を失い凶暴になる。そして犠牲を払えば突破出来ると勘違いしたオークが自分からサイクロンに飛び込む。本来は無色のサイクロンが風に乗ったオークの血で真っ赤に染まる。ラディアンドの城壁を越える真っ赤なサイクロンが出現してパニックになっていないか心配だ。


「皆殺しー!」


「ふぅ」


 シエルが周りのオークが全部死んだと教えてくれる。結構無理して魔法を維持していたのだから、シエルの頑張りは助かる。魔法を停止すると宙を舞っていたオークの血がドバァっと広がる。俺を中心に真っ赤なドーナツを大地に描く。一部ラディアンドの城壁まで真っ赤になるが、雨が降れば流れるだろう。


「帰還する」


 返事が無くカチカチと言う音しか聞こえない。生きているみたいだし、気にする事はなかろう。それよりこのカチカチ音は魔導鎧にガタが来た時の異音に違いない。帰還途中で魔導炉の出力がダウンして少し冷ッとするも、無事に3人を連れて帰還する。嫌味の一つでも飛んでくると思っていたのに彼らは終始無言だ。去り際にチラッと彼らの顔を確認すると、化け物を見るような目で顔が恐怖で引き攣っている。5000人近くのオークが眼前で細切れになったのは流石に堪えたのだろう。


 ふらつきながらも迎えの馬車に乗ったまでは覚えているが、それ以降は何があったのか覚えていない。

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