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148 撤退戦 ルビー強化

 ルビーのスキル構成は俺の予想を裏切る。『火魔法』スキルを持った『魔法使い』職業という鉄板構成と言う前提で強化プランを練っていたのに、この構成では白紙撤回するしかない。なんでルルブでは特殊NPC専用の『貴族』職業に付いているんだ? そのおかげでスキルポイントに余裕があるのだから良しとしよう。


***


名前 ルビー


種族 人間(15)


職業 貴族3


位階  8/21


SP  5/12


職業スキル

 貴族

 └03/10 火魔法

 └03/10 指揮

 └01/05 青い血


個別スキル

 特殊系

 └01/03 炎神の加護

 生活系

 └03/05 共通語


***


 『貴族』に2ポイント振って『火魔法』と『指揮』のレベルを5にする。『青い血』のレベルも連動して2になる。『青い血』は血の記憶とでも言うしかないパッシブスキルだ。孤児院で育ったルビーが自然と貴族的振る舞いが出来るのはこの血の記憶のおかげだ。デメリットとして、過去の記憶に振り回されるのと譜代家臣を切り捨て辛くなる。俺を含め、歴史ある貴族家の人間なら大抵は『青い血』の影響を受けているが、ルビーみたいにスキル化するほど濃いのは稀だ。一体どれだけ古い血筋なのか想像もできないが、次のスキルで凡そ先祖がどういう人間だったか分かる。


 『炎神の加護』はルビーの『火魔法』の威力を底上げする。ルビーの髪の毛が赤くなったり、火の粉が舞うのはこの加護が関係している。しかし、もし火の大精霊の加護なら『火の加護』になる。即ち、ルビーの先祖は今の人類が崇拝する神々とは違う神々と何らかの契約を交わしたことになる。幸い、炎神はドワーフの神なのでラディアンド地方に居る限り迫害されることはない。それ処か崇拝されるだろう。


 この地の人間で『炎神の加護』を持つのは旧ラディアンド王家にして現侯爵家だけだ。クロードは本家の分家筋、俺は本家に近い血筋とルビーの事を見ていたが、これはもうほとんど「本家の人間」だろう。侯爵家の嫡子と同年齢の女性が居た噂なんて聞いた事が無い。死産か行方不明なら酒の肴として話題に上がるのに、俺もリルもそんな話を耳にしていない。


「ハァハァ……終わりました?」


「『火魔法』と『指揮』をレベル5、『青い血』をレベル2まで上げた。残り3ポイントでどんなスキルを取るか迷っている」


 『炎神の加護』の加護なら鍛冶系と適性が高そうだが、ルビーは余り手先が器用じゃない。同じ理由で『魔導鎧操縦』も無しだ。魔導鎧を操縦しながら詠唱をするなんて芸当が出来るのは勇者か聖戦士かそれに匹敵する存在くらいだ。ルビーみたいな固定砲台を担いで逃げる際にも魔導鎧は邪魔になるし、見た目のインパクト以上の価値は無さそうだ。


 TRPGなら本命扱いの他系統の魔法は『火魔法』とどういう化学反応が発生するか分からないからパス。どこかで複数の魔法スキル付与の実験しないといけないが、一つのスキルを付与できる数が少ないので捨て駒相手に使うのは勿体なさ過ぎる。二つの魔法スキルを一人に付与する効果は不明なのに、二回一つの魔法スキルを一人に付与する効果は絶大なだけにおいそれと試せない。


「取っておきますか?」


「それは避けたい。オークと戦う際に全力を出さないのでは命に係わる」


 より良いスキルがストックに入るまで無駄遣いしない。またはルビーが位階レベル10到達時のポイント振りのために残す。通常ならこっちを選ぶのが正しい。しかし今のルビーの限界まで強化してもあっさり殺されそうな脅威が近くに迫っている。多少ルビーのビルドと合わずともスキルを増やす価値はある。


 更に捕捉するのなら人間を幾ら殺しても経験値は加算されない。固定砲台と化したルビーがオークを殺しまくって位階レベル10になると同時に『火魔法』レベル6に上がる状況は絶対に発生しない。神々が人間同士の争いを望まないため、と言われているがどこまで本当か分からない。オークを殺してもレベルが上がらない事に疑問を覚えない人間もどうかと思うが、これは考えても無駄か。


「やはり魔法系が良いと思います」


「『MP増加』辺りしか無いぞ。う~ん、他には……」


 俺はストックスキルに目を通す。オークから色々スキルを手に入れたが、整理が追い付いていない。ストックスキルを余裕持って確認するなんて北の砦に発つ前にラディアンドでリル達を強化して以来だ。使えそうな候補を読み上げる。『戦術眼』はパーティー戦では役に立つが、固定砲台に取っては半端に戦況が見える状態になり判断を誤る結果になりかねない。『占術』は戦場での即効性に疑問が残る。


 ずらっとリストに目を通しながら『闇魔法』の件まで来る。そう言えば『闇魔法』の入手までは確認したが、他にスキルがあったか気にもしなかった。『拷問術』と『魔法拡大』が増えている。こいつが何をやっていたのか分かるスキル構成だ。それと『魔法拡大』は範囲魔法の範囲を文字通り拡大する。拠点と密集した敵には絶大な効果を発揮する。欠点として味方を巻き込みやすくなる。


「『魔法拡大』はどうだ?」


「ならそれを限界まで」


「『MP増加』と合わせた方が継戦力は上がると思うが?」


「この規模の戦闘だと一発撃って乱戦になります。重視すべきは最初の一撃です」


「分かった。ルビーに考えがあるのならそれを採用だ」


 『魔法拡大』を付与しようとするが、思わぬ抵抗に会う。レベルを上げるのは問題が無かったのに。


「んぐぅ……」


「ルビー、肩の力を抜けって」


 それでも少しずつ入っている辺り、全力で拒絶しているわけではない。加護系スキルには魂を保護する効果があるとルルブで読んだ事がある。となると俺の付与を外部からの攻撃と認識して自動防衛しているのか? 分からなくはない。この力は悪用するハードルが余りにも低い。俺は心の中で「『魔法拡大』だけだから」と炎神に祈りながら事を進める。


「うはぁ……」


「ふぅ」


 たっぷり5分掛けて『魔法拡大』スキルを押し込む。これほど強い抵抗を受けるとは想像していなかった。二つ目の魔法なんて試そうものなら弾き飛ばされるかもしえれない。それと一度入った『魔法拡大』スキルをレベル3に上げるのには何の抵抗も無かった。ちょっとセキュリティがガバガバ過ぎないか?


 ぐったりするルビーをどう介抱するか悩んでいると外が騒がしくなる。


「お楽しみでしたね?」


 天幕にシーナが入るなり、誤解を招く発言で俺とルビーを凍らせる。


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