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124 ドワーフ兄妹 朝の一幕

「朝か?」


 ボロ屋の隙間から差し込む朝日が俺の目に当たり、俺は疲れた体に鞭を打って起き上がろうとする。


 倒れる前に大熊討伐を請け負った集落まで到着出来たのは運が良かった。死んだはずの男が女を抱えて突然現れたのは流石に驚かれた。幸い意中の幼馴染と結婚していたティグが一晩泊めてくれた。と言っても、彼が結婚前に使っていた寒風が容赦なく吹き抜けるボロ屋だ。彼はもっと良い家を宛がいたかったらしいが、ボロボロな身分不確か二人を泊めてくれただけでも十分だ。


 明日に備えて準備をしたかったが、一騎打ちの怪我とベルファを担いでの全力疾走で俺の体は限界を超えていたみたいだ。気付けば朝だった。


「体が動かない?」


 想定以上の大怪我だったのか。もしくは集落の者に何か盛られたか。


「ベ、ベルファ! 無事か?」


「はい、起きていますよ」


 俺の胸元からベルファの声がする。なんでそんな所から?


「ベルファ……」


 俺が下を見るとベルファが裸で俺に跨っている。


「え~と、何を?」


「あら、命を賭けて戦った騎士様にお礼をするのは当然では?」


 そう言えばクロードの記憶に、寄る辺の無い女性を守るために一騎打ちを行った騎士にはその女性が夜にお礼に来ると言う行為が一般的だとあったな。あれ、俺はその条件を満たしている?


「……」


 何と言えば良いんだ? ベルファを責めるのは違うと思う。だが俺は色々政治的な爆弾を抱えている身だ。女性とこういう関係になるのは少し不味い。


「ふふ、一夜の事です。それとも明日もやります?」


 小悪魔的な笑みで話すベルファにドキッとする。


「今はとにかくデグラスに急ぐぞ。二人目の騎士が来る可能性がある。それに別ルートからデグラスに行った騎士が居るはずだ」


 デグラスへの道は二つ。片方に追っ手が放たれたのなら、もう片方にも放たれたはずだ。そしてもう片方の方が俺達より早くデグラスに到着する。前回は俺がデグラスに入らない事で問題を回避した。今回はベルファが門を潜る必要がある。そこで殺されたら終わりだ。


「もうちょっと私を見てもバチは当たりませんよ?」


 俺がベルファの体から目を逸らしたのに怒っているみたいだ。


「いや、その綺麗だと思うぞ?」


「本当ですか」


 一転心配そうな顔になる。


「ああ」


 何を困惑しているんだ? ハーフドワーフだと言うのは特に美醜のハンデにならない。分からん。


「お兄はモンスターになりました。私も同じ釜の飯を食べた身です。そして私はお兄と一つに……」


「!!」


 そうか! 『魔物化』なんてスキルを持っていれば女性として結婚は絶望的だ。俺の『ダンピール』レベルだってバレたら即殺されるレベルの厄スキルなのに、それに思い至らなかった俺はなんて鈍感なんだ。


「私はいつモンスターに成り果てるのでしょう」


 気休めで「大丈夫」と言えるが、そう言えば余計傷つくのは俺でも分かる。


「一つ確認したい」


「はい?」


「ベルファは俺に言っていないスキルを持っているか?」


「はい。知りたいですか?」


「いや、逆に知らない方が都合が良い」


「それって?」


「ベルファのスキルを当てたら俺の言う事を信用してくれ」


 そう言って俺は『プロトブレイバー』を発動する。肌を重ねる程度の深い関係なら発動するはず。発動してくれ!


***


名前 ベルファ


種族 ハーフドワーフ(22)


職業 裁縫職人2


位階  6/18


SP  3/10


職業スキル

 裁縫職人

 └02/10 裁縫術

 └02/10 裁断


個別スキル

 生活系

 └01/05 共通語

 └02/05 ドワーフ語

 └01/10 目利き

 └01/10 魔物化


***


「ベルファは裁縫職人だったのか!? それに『目利き』スキルまで持っているとは驚いた」


「そうですよ。……あれ、どうして?」


「俺のスキルでスキルレベルを見ることが出来る」


「では! 私の『魔物化』スキルは!?」


「レベル1だ」


「……」


「心配するな! そのスキルは俺が何とかしてやる! だから少しだけ待ってくれ」


 出来るか分からない。だがここで言わないでいつ言うんだ!


「……はい」


 ベルファは涙ぐんだ瞳で答える。


「良し!」


「あの、他にスキルは?」


「後は『共通語』と『ドワーフ語』だ」


「そんな……」


 一転、絶望的な顔になるベルファ。


「どうした?」


「お兄のスキルが……」


「まさか!?」


「はい。私が継承するはずです」


 恐らくこれはドワーフの双子限定だからこれに気付けなかった俺は悪くない。


「モーリックは……糞!」


 モーリックの魂は変質し過ぎていたのか。逆に考えるのなら継承出来なかったからこそベルファの『魔物化』レベルが上がらなくて助かった。ベルファがモンスター化に必要以上に恐怖していた理由がやっと分かる。もし『魔物化』レベル6になっていたらいつ前後不覚になるか心配になって俺の寝床に忍び込むのも頷ける。


「……」


 ベルファは今にも自害しそうなほど悲壮な顔をしている。今のままデグラスには帰れない。


「モーリックはこうなると知っていた。だから俺にスキルを全部託していった」


 なら俺が助け船を出す。


「え?」


「俺がベルファのスキルを分かるのならベルファにモーリックの残したスキルを付与出来る。それが俺のスキルの真の力だ」


「では!」


「ああ。どのスキルから付与する?」


 ベルファにスキルを付与した影響で出発が昼前までずれ込むが、ベルファの笑顔が戻ったのだから結果オーライだ。


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