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116 パワーレベリング メアと剣

「本当に剣で良いの?」


「槍だと相手にすらならないぞ」


 俺は得意な槍の代わりに剣で一騎打ちをする。ダンピールの職業レベルと連動して上がった今の『剣術』レベルならメアを圧倒できる。『剣術』レベル1のままなら純粋な剣術ではメアに押されるも、ステータス差で勝っていた。それとガングフォールの槍とモーリックの剣では武器の性能差があり過ぎて、武器のおかげで勝ったと言われる。実戦なら問題無いが、この手の実力を測る一騎打ちではある程度武器の性能を合わせないと駄目だ。俺がモーリックの槍を使う事も考えたが、そうしたらメアが武器の性能を落として手加減されたとごねる。なら同じ『剣術』スキルと同じ鍛冶屋が作った剣で戦うのが一番後腐れが無い。


「行くよ!」


「さあ来い!」


 メアが勢い良く踏み込む。かつてクロードが教えた基本に忠実な一撃だ。ダイアウルフには届かなかったが、十分格上を狙える一撃だ。


 剣と剣がぶつかり、激しく鍔迫り合う。


「うぅぅ!」


 メアが唸り声を上げるも、俺の剣は動かない。このままメアが力攻めするのならメアの体力切れで勝てるが、メアはそんな簡単な相手ではない。


「その程度の膂力では押し切れないぞ?」


「分かっている!」


 言うが早いか、メアは後ろに飛びのき連続攻撃に切り替える。一撃一撃は軽いが、手数が多い分一発でも当たればかなり痛い。重装甲の相手には通用しないが、メアが近い内に戦う人間とモンスターの9割は軽い一撃でも十分倒せる。俺は向かってくる剣を全て目でとらえて確実に弾く。


「次はどうする?」


 少し挑発してみるか。メアは力重視から素早さ重視に攻めの型を変えた。なら次は技重視の型になるだろうか。だがそれは余りにも読みやすい。俺ならフェイントの一つか二つを入れる。カーツほどの戦い上手になればそのフェイントが実は本命だった、みたいな戦いが出来る。俺の『剣術』レベルだけならカーツと比肩するはずだが、今の俺ではそこまでの技を使えない。よりスキルレベルが高い『槍術』でも無理だから、武器のスキルレベル以外に何か条件があると睨んでいる。


「『二段斬り』!」


 どうやら馬鹿正直に技重視で来るか。『二段斬り』そのものはオーソドックスな技だ。最初の一撃で相手の武器か盾を強打して硬直させる。そしてその硬直が解ける前にもう一撃入れる技だ。


「ならば『パリィ』!」


 俺も付き合って技で応じる。メアの攻撃を受け流し、硬直を回避する。


「この……くそ!」


 メアは苦し紛れに2段目の攻撃を繰り出すが、硬直失敗の代償として体が隙だらけだ。それを見逃すほど俺は甘くない。


「そこ!」


 振り下ろされるメアの剣を全力で迎え撃ち、そのままメアの剣を彼女の手から弾き飛ばす。


「痛……」


「続けるか? 剣を拾うのを待ってやるぞ?」


「あたしの負けだ」


 メアは首を数回横に振って負けを認める。クロードの記憶ではメアに剣で勝ったら拳が飛んできた事が何回かあったので警戒する。


「そうか」


 こういう時はなんて言えば良いんだ? 健闘を称えるべきか慰めるべきか。メアが努力と根性で俺に追いつけるのなら発破をかけて再戦に持って行く。だが『プロトブレイバー』スキルの関係で位階レベルが上がるたびにステータス面ではメアを引き離す。『剣術』レベルに関しても、メアが『剣術』レベル5になるのに10年以上は掛かる。その問題を全て解決出来たとしても、最大レベルの差が立ち塞がる。ダンジョンコアを砕いて最大レベルを上げるのは流石に非現実的過ぎる。


 俺は考えに没頭し、メアが何をやっているのか視界に入っていなかった。俺はてっきり飛ばされた剣を拾いに行っていると思っていた。


「アッシュ、こんな感じ?」


「え~と、何が……」


 四つん這いで尻を俺に向けているメアの姿に何と返せば良いんだ?


「ルビーが『アッシュは男だからこういう服従のポーズが好き』だって」


 顔を真っ赤にしながらメアが説明する。俺はルビーを一発ぶん殴っても許されると思う。メアはバカ……じゃなくて真っ直ぐな子だから本気で信じているぞ?


「ああ……即ち『剣術』スキルを伸ばして欲しいと言う事か」


「う、うん」


 なるほど! これで合点が行った! メアが勝てないダイアウルフと戦ったり、絶対に勝てない俺と一騎打ちをしたのはこのためだ。メアの心の中で上下関係が出来た事により俺の『プロトブレイバー』の効果が発動する、とルビーが考えたに違いない。


「しかし急だな」


「アッシュが留守になるなら、あたしがルビー達を守らないと」


「そう……だな。分かった、上げられる所まで上げるぞ」


 そう言って俺はメアの背中に手を乗せ『プロトブレイバー』を発動する。


***


名前 メア


種族 人間(15)


職業 剣士3


位階  6/15


SP  6/10


職業スキル

 剣士

 └03/10 剣術

 └02/05 HP増加


個別スキル

 生活系

 └01/05 共通語


***


 メアのスキル構成は記憶のクロードと全く一緒だ。生涯で19ポイント手に入る前提で考える。剣士スキルに10、共通語スキルに2か3。一つスキルを追加する余裕はありそうだ。俺のストックスキルでメアがもっとも強くなれるのはどれだ。『跳躍』で俺と同じにするか? 俺の場合は『ヴァンピール』の再生力頼りの半分自爆技だからメアには向かない。メアが無理に真似をして足が壊れたり、ルビーに俺の秘密がこれ以上露見するのは避けたい。『「体」アップ』も悪く無さそうだが、メアは防御より回避重視の剣士だ。ベターだがベストではない。


 そこでこの間ハーフオークから手に入れたスキルを思い出す。『先読み』なら剣術にも使えるはず。ルルブ通りならこのスキルは多少のステータス差をひっくり返す事が出来る。


「行くぞメア!」


 一気にスキルの付与とレベルアップをやった反動でメアがばてたのでいつもの半分しかモンスターを狩れなかったのは仕方が無い。ルビー達から白い目で見られたのだけは解せない。


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