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114 パワーレベリング 光魔法

「そんな事があっただなんて……」


 ルビー達を狩りに連れて行く次の機会ハーフオークの件を話す。ルビーは思案顔で感想を最後まで言えなかった。


「なので俺が突然消される可能性はある」


「そうなったら主君の仇を討ちます!」


 リルが両手で拳を作りながら力説する。


「殺るなら確実に殺せる位階レベルになってからだ。勝てないと分かっている仇討ちはただの自殺だ」


「肝に銘じておきます!」


「そもそも辺境伯様に何かあれば王国全体が困ります。少なくても今は私は仇討ちに反対します」


 ルビーは俺が何も言わずとも状況が見えている。前世の記憶が無く専門的な教育を受けていないのにこれだけ視野が広いのは血筋のなせる技か。前世とは違い、間違いなく血筋による何らかのボーナスが発生している。クロードの記憶にある「死に辛い」以上に様々な恩恵があるみたいだ。


「とにかく! 知らないふりをすればルビー達にまで手は伸びない」


 そうやって面倒な政治談議を打ち切る。


「ふふ、契約を破った場合の罰則でも加えておけば良かったかしら?」


 小悪魔的な笑みを浮かべて上目遣いで迫るルビーの迫力に押されて一歩下がる。


「破ると決まったわけじゃない」


 王家と辺境伯の暗闘は話していない。それに『魔物化』スキルも依存性の強い麻薬と誤魔化している。ルビーに伏せているカードは強い。後は俺がどれだけ綱渡りをしながら転落を回避出来るか次第だ。


「なるほど。信じましょう」


 ルビーはその場でクルっと半回転して俺から数歩距離を取る。


「だが無策で過ごすのはバカのやる事だ。そこで出来る強化を今日の内にやっておく」


 明日消えると言う事は無いと思うが、時間は必ずしも俺の味方では無い。少なくてもこれから50日間ほどは時間が敵だ。雪の季節が終わりマックスがラディアンドに到着すれば時間は味方になってくれるかもしれない。


「私は無理ですね」


「ああ、全然発動しない」


 ルビーが差し出した手を握り『プロトブレイバー』を発動するが、何の効果も発動しない。ルビーは俺を信用しているが信頼はしていない。本人のプライドが高く、俺に頭を下げる事を良しとしないから上下関係は無い。話し合いの内容だけ切り出せば、俺の方が下だと思われそうだ。


「リルとシーナをお願いします」


 心底残念そうな顔でルビーが続ける。ルビーは『火魔法』スキルを伸ばしたいから対象外なのが不満なんだろう。


「そう言う事だから今日も限界まで位階レベルをあげるためにダイアウルフ狩りだ!」


「今度こそ斬ってやる!」


「え~皮を剝ぐのが面倒なのに」


「これも神の与えた試練なのです」


 やる気のメアと露骨に嫌そうな顔をするミリス。シーナは無視だ。


「ダイアウルフの皮は良く売れます。金貨を剥いでいると思えば苦になりません」


 ルビーがパーティーを鼓舞する。多少の計算が出来れば良い値で換金出来るダイアウルフの皮はルビー達の財布に取ってのボーナスタイムだとすぐ分かる。ミリスにもまだ『プロトブレイバー』は発動しないが、発動したら『共通語』レベルを上げよう。ミリスだってちゃんと教育を受ければこの状況がどれだけミリスに有利か分かるだろう。ミリスは考えが足りないが、これでも同年代孤児の上澄みだ。冒険者になった孤児のほぼ全員が冬を越せずに死ぬか犯罪者になる理由が身に染みて分かる。


「そう言う事だ、頼むぞリル」


「お任せを!」


 そう言ってリルがダイアウルフを釣りに行く。もう何度もやっているから皆慣れている。


「アッシュ、ダイアウルフとサシで戦いたい」


 そんな中でメアがいつもと違う事を言う。


「かなりきついと思うぞ?」


「それでも!」


 メアはメアで何か思う事があるのだろう。


「危なくなったら俺が介入する。それとシーナの『光魔法』レベルを上げてからだ」


「分かった」


 とにかく戦える事が分かってメアが納得する。


 流れとしては初回のダイアウルフを倒した後にシーナを強化する。そして二回目のダイアウルフが一体ならメアが戦う。即死さえ回避すれば死ぬ事は無いはずだ。最善は止める事だが、メアは聞かない確信がある。次善は理由を聞く事だが、一回戦った後じゃないと話してくれそうにない。


「大丈夫かしら?」


 ルビーが心配そうに言う。彼女の目の動きから本当は俺に止めて欲しかったのが分かるが、ここで止めたら俺が悪者になるだけだ。


 そうこうしているうちに初回のダイアウルフ戦は何事も無く終了する。皆が剥ぎ取りをしている間に俺はシーナを少し離れた藪の中に連れ込む。


***


名前 シーナ


種族 人間(15)


職業 町人4


位階  6/12


SP  2/10


職業スキル

 町人

 └04/10 祈祷

 └04/10 掃除


個別スキル

 生活系

 └02/05 共通語


 魔法系

 └02/10 光魔法


***


「なんで『祈祷』で伸びているんだよ!?」


「日々の祈りを欠かした事はありません」


 背中を向けているとはいえ、裸になっても両手を合わせて祈っているシュールな光景から飛び出す狂った発言。祈るよりももっと大事な事があるだろう! ……落ち着かなくては。


「とにかく『光魔法』レベルを4まで上げる」


「お任せします」


 『祈祷』のレベルが上がっていなければ俺の左腕を今日くっつける事が出来たのに残念だ。この流れだと俺の腕を治療出来るのはシーナが位階レベル8になった時だな。位階レベル7になったら自動的に『祈祷』が上がりそうだ。位階レベル8到達に試練などは無いからとにかくダイアウルフを殺しまくれば来月には到達出来る。『光魔法』レベル4でもラディアンドに一人か二人って感じのヒーラーなんでそこは心配だ。例え位階レベルは同じでも職業レベルの差でルビーの思う様に制御出来ない可能性はある。ここは孤児院時代の絆を信じたいが、シーナは狂っているから絆がどう作用するか読めない。


「メアは怪我をするだろうから、治療できるかはシーナ次第だ」


 シーナにはハッキリ言っておく。ここで治す自信が無いと言うのならメアの挑戦は俺の独断で断る。


「問題ありません。神は癒せと言っています」


「そ、そうか」


 本当に大丈夫だろうか? そんな心配の中でメア対ダイアウルフの戦いが始まる。


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