稀術教育 異世界らしいことを見てみよう。
なんとか書き上げましたが、前後半に分かれてしまいました。
問題が山積みと答えが出たの領地教育が終わり、待ちに待った魔法の教育。なに?40近いオッサンが恥ずかしい?そんなことはない。新しい技術・知識と言うのは何時でも心を豊かにしてくれる。
「それに男に100%のリアリストはいない。現実的なヤツでもどこかでロマンを感じるのよ。…なんてね。」
と、夜明けとともに質素だが大きすぎるベッドで目を覚ましたアドルフは両手を天に掲げて一人話す。護衛がアドルフが起きたことを察し、扉を開け朝の挨拶をしてくる。
(慣れてはきたが自分のことは自分でやりたい。)
挨拶を終えると隣室に控えていた侍女やお世話役が服を着替えさせ、歯を磨き、髪を整える。
貴族のしきたりとやらではあり、仕方のないことではあるが時間がかかりすぎるので自分でやりたいのが本音だ。
「ありがとう。あとは大丈夫。術の教育って汚れるらしいからね。」
そう言って護衛以外を下がらせたアドルフは長い通路を進み、中庭に向かった。本日はココで実技を兼ねた教育を行う予定だ。
「おはようございます。アドルフ様。」
準備を終えていたオトワットが頭を下げつつ、近寄り耳打ちをする。
「お耳を防がれた方が良かろうかと。」
「?? わかった。」
理由はわからないが、オトワットの言葉に従い、耳を塞ぐが、その塞いだ耳ですら貫通する大音声が中庭に、城全体に響いた。
「「「おはようございます!!!若様!!!」」」
音の発生源は中庭に集まっていた騎士や兵士たち。キーン。と、鳴る耳を擦りつつアドルフはオトワットに視線で問いかける。
「実はアドルフ様に術の教育をすることを伝えると、カール様。もとい、伯爵並様が次の当主の手並みを見るぞー!と、おっしゃられまして。」
わっはっは。と、笑いながら兵士や騎士の詰め所に突撃する父の姿を思い浮かべ納得したアドルフは大きくため息を付いた。
「皆々、ありがとう。」
「「「うぉおおおおお!!!」」」
アドルフが手を振って礼を述べると両手を上げ、喜ぶ騎士や、涙を流す兵士たち。本当に悪い人たちではないんだけどなぁ。と、再度ため息をつくアドルフ
「はい!お静かに!これよりアドルフ様への教育を行います。」
オトワットが告げるとピシャリと水を打ったように静かになる中庭。周りからの視線に何処か緊張してしまうアドルフ。
「では。まず術。これは稀術。レア・アーツとも言う技能です。つまりは個人の資質や主観によるものが術を使う・覚える・学ぶことに重要とされているからです。」
パシ!と教鞭で黒板を叩くトワットそこに、大素・個人・発動と書かれ、教鞭で大素を指す。
「大素。これは例外はありますが、自然で生まれるエネルギーや人間がもつ生命力などの無色のエネルギー。」
続いて個人を指す。
「個人。これは個人の資質や、状況、思想。染まってい使用者。」
続いて変化を指し、
「最後に発動。つまり、『大素』という無地の布を扱い、『個人』の資質等の色で染色して『発動』したものを『術』と言います。」
「なんで稀なの?使い方次第で誰でも使えるんでしょ?」
「全く同じ資質を持つ人間はいません。なので、似ている術は出来ても、技術や工芸品のように同じものは出来ません。なので、『個人個人で一つの世代に一つだけ』な『稀な術』と言うのが語源。と、言われております。」
(そんなもんなのか。同じように見えるけどな。でもそんな感覚的なモノを教えられるの?)
と、アドルフが考えているのを見透かしたのか。オトワットが、3人の騎士を近くに呼ぶ。
「バルド、ベルン、バルド!あの的を打ち壊せ。」
オトワットが指差す先には厚い鉄板で出来た鎧に包まれたカカシが3体立っていた。3人の若き猛者たちは全速力で駆け出し、木製の訓練剣で鉄製の鎧を中身ごと叩き壊した。
「ご覧になられましたか?動かない的ではありましたが、一例としてあれだけの事が出来ます。3人とも若様にやり方を教えて差し上げろ。」
三人は喜び勇んで、体の強化の方法を教える。いや、教えているつもりだった。
「ガッ!と、腹に力を入れて、バン!と弾けます。」「相手をぶっ飛ばすときに気合を入れてドーン!と。」「歯を食いしばって口から火を吐くように!」
「ごめん。わからない。」
その後も目一杯説明してくれている三人だったが、擬音が多い上に、例えがわかりにくかった。
「といった具合に、個人の資質が重要で、慣れていけば行くほど感覚的になります。ですが、基本の中の基本は、『大素を溜め込む。』『自分の資質に染める。』『発動させる』というのは変わりません。私は大した術は使えませんが、基礎を教えることに関しては一廉の自負があります。」
胃痛を覚え、青い顔をしていたオトワットが、大きく頼もしく見えた。
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