稀術実践 異世界らしい便利と弊害
これで、幼年編を終わります。次からは少年編となります。稀術に関しては後々說明が入ってた行く予定です。本職の小説家は設定説明を、わかりやすくしてるのは本当にすごい。
オトワットから、一通りの大素の吸い方・貯め方の学んだアドルフは実践してみる。確かに人の呼吸の仕方や癖のように扱い方も教えられるままのやり方では中々出来なかった。すこしばかり時間が経って、
(あ、浮遊するような。沈殿するような。変な、気持ち悪い感覚が。)
胃もたれのような。胃痛のような嫌な感覚が腹から体全体に広がる。
「はい!そこまでです。息を吐くようにその感触を体から追い出すように。慎重に。」
オトワットの言葉に従い、ムカムカともイガイガとも言える不快感を吐き出すと一気に気分が楽になった。
「今のは体の中身が急に入り込んだ大素に驚いて気持ち悪いかもしれませんが、しばらくすると落ち着くと思います。」
ゆっくりとその場に座るアドルフ。たしかに上手く說明はできないが、体に何かすっ。と、入っていく感じがする。
「この稀術を使えれば何でもできるんだね?」
アドルフは思わず口走った。話を聞く限り、大素を個人の思考で変化させれば何でも出来る。個人の資質はあれど、こんな便利なものがあるとは異世界恐るべし。と。
「いえ、何でもできるわけでも無制限に使えるわけでもありません。」
「おーう!間に合ったか!」
仕込んでたのか?と思うほどのタイミングでカールが巨大な獣。例えるなら5m近い犬である。見た目もその辺りの野良犬がただ大きくなったので、怖さやおぞましさより、間抜けな感じが先にくる。
「大素を吸い込みすぎ、自分の限界点を大きく超えると供給が止まらなくなり、自分の色に染まった大素によって、変異していきます。動物なら魔獣。人間なら悪魔と呼ばれるものです。」
この犬は「大きくなりたい。」と、第一に思っていたんでしょうね。と、死骸となった巨大犬を見る。
「基本的に魔獣も悪魔も本能と、染められた願い、思想、欲望を中心に動くので周りの被害を考えません。アドルフ様も万能の力があると思わぬように。それに近づけることは努力次第ではできますが。」
ゾットする話だ。どんな技術も知識も同じように毒にも薬にもなる。先程の不快感とは別の感情を追い出すために大きく息を吐くアドルフ。
「ですが、術を補佐したり、強化する道具もございます。例えばカール様がお持ちの武具。初代様より使われているため、力と頑丈さを引き立てます。まぁ、一気に話しても覚えられませんと思いますので、ここまでです。」
「おいおい!俺の仕事はこれだけか?父のカッコよさを見せてもいいのではないか!」
ムスー。カールは不機嫌になる。オトワットは、しょうがありませんね。と、先程筋肉3人組が破壊した鎧カカシの横をを指さす。
「あと一体ありますから、ガッツリやってくださいませ。ですが、手加減はお願いします。」
「よし!任せろ!」
グルグルと肩を回すカールは喜色満面に鎧カカシの前まで歩き、拳の届く場所で泊まる。
「せーの…とう!」
拳を構え、振りかぶり、気楽に振り下ろした。成人男性と同じ高さだった鎧カカシは、重々しくも間抜けな音を立て、足元ほどの大きさに潰された。
「うっそー。」
「我が家は力の家だ!お前も鍛えればできる!」
周りから兵士の賞賛をうけ、マッスルポーズをとるカール。アドルフは改めて常識外のバカバカしさに稀術の不快感も将来の不安も一瞬にして吹き飛んだ。
後世、アドルフの側近たちがまとめた『蛮王記』には、こう記されることとなる。
『蛮王。父と師より術を学ぶ。これより武の始まり、大望の始まりである。』と。
歴史書は異世界でも大げさに書かれるものである。
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