1日目(満side)
大が私の前に現れたのは11月11日。
実家暮らしの私が自分の部屋で起きた時、満面の笑みで私の名前を呼んだ。
「満っ!おはよう。」
いや、夢だ。大がいるわけない。
「満?おーい。」
大は死んだはずだ。だって、望が言ってた。大は交通事故で死んだって。
「満ってば!無視すんなよ。」
私は大学生になって大に会いに行かなかったことを後悔したし、何日も泣いた。
大がいないっていうことが信じられなくて、高校の近くのゲームセンターをのぞいたり、一緒に行った映画館を見に行ったり…
「…もう、満。こっち見てよ。」
「…本当に大?」
「そうだよ。」
大が満面の笑みで私を見る。
「だって、死んだって…」
「うん。死んだ。満、知ってたんだ…」
「望から聞いた。」
「なるほど。まだ望とは連絡とりあってたんだ。」
「うん。でも望くらいかな、高校のメンバーで今でも会ってるのは。」
「そっか。満、望と仲良かったもんね。」
大だ。大が私の前にいる。普通に会話をして笑っている。
ただそれだけで、涙が溢れてくる。
「…あぁ、ほんとに満は泣き虫だな。」
少し困ったように笑って大が言う。
「だって…死んだって…もう会えないと思って…なのに、こんなふうに私の前に現れて…どうなってるのか訳分かんないし…」
「…そうだよな。俺もよく分かんないんだ。ただ死ぬときにもう一回満に会いたいって思って、気がついたらここにいた。」
「もう、なにそれ。」
「多分さ、神様が願いを叶えてくれたんだよ。もう一度満と笑い合いたい、満の名前を呼びたいっていう俺の願いをさ。」
泣き止まない私の頭を撫でようとした大の手。でもそれは叶わなかった。大の手は半透明で私をすり抜けた。
一瞬、ショックを受けたような顔をする大。けど、それはすぐ苦笑に変わった。
「ははっ…どうやら神様は満に触れたいっていう願いは叶えてくれないらしい。」
少しの沈黙。
「俺さ、幽霊になったんだよ。多分。」
「うん。」
「満は?今、彼氏とかいるの?」
「ううん。」
「そっか…」
「うん。」
「ねぇ、もう少しだけ満のそばにいていいかなぁ。」
「うん。」
「満?聞いてる?」
「うん。」
「もう、反応薄いなぁ。まだ泣いてるの?」
「ううん。もう泣いてないよ。」
目を擦って、大を見る。
「良かった。満が泣いてると俺、困っちゃうよ。」
「もう、大には敵わないなぁ。」
二人して笑いあう。もう叶わないと思っていた私の願い。
「にしても幽霊かぁ。ねぇ、私の前に現れて良かったの?彼女とか、いたんじゃないの?」
「へっ?いない、いない。俺、満と別れてから一回も彼女作ったことないから。」
「あ、そうなんだ…」
大が生きてる間に会いに行けば良かった。そうすればきっと…