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王宮主催の交流会(フローラ)

今日は久しぶりの王宮主催の交流会があった。

フローラ・フォルダン公爵令嬢は、ローゼンシュリハルト・フォバッツア公爵と共に、

涼し気な空色のドレスを着て、金髪をアップにあげた上で髪を肩に垂らして、白に金糸を織り交ぜた貴族服のローゼンと共に、王宮の会場に現れた。


周りの貴族令嬢達の羨望の眼差しに、フローラはいつもながら、幸せを覚える。

隣でエスコートしてくれるローゼンは本当に美しかった。

何度見ても、その碧い瞳に、整った美しい顔、綺麗な柔らかそうな、軽くウエーブがかかった肩まである金髪に…何もかも愛しく、見とれてしまう。


用意されていた席に座り、給仕が運んで来る、オレンジジュースを飲んで、

正面の席に座ったローゼンは赤ワインを優雅に楽しんでいる。


「ローゼン様。緊張しますわ。今日は色々な貴族の方がいらっしゃるのでしょう?」


「そうだな。君も大変だろうが…しっかりと頼む。先々、私と結婚するのだから。」


頼みの父、フォルダン公爵は、国王陛下とアイルノーツ公爵と、東の港へ視察に出かけている。

何とも心もとない。


そこへ、ディオン皇太子殿下がセシリア皇太子妃と現れた。


他の貴族達が立ち上がって、頭を下げる。

ローゼンとフローラは席を立ちあがり、頭を下げて優雅に挨拶をする。


セシリア皇太子妃と共に二人の傍に近寄って来て。

ディオン皇太子は声をかける。


「今日も又、美しいな。二人とも注目の的だぞ。」


ローゼンは、頭を下げて。


「有難うございます。」


「ローゼン様はともかく、私なんて、お二人に比べたら、まだまだですわ。お二人ともとても美しく麗しいです。」


フローラがそう言うと、セシリア皇太子妃は、


「有難う。ああ、王妃様がいらっしゃったわ。御挨拶してらっしゃい。」


そして、にっこりとセシリア皇太子妃は笑って、


「私はフローラ、貴方の事を気に入っているのよ。それを忘れないで…。」


「セシリア様。」


フローラは嫌な予感がした。


マディニア王国の王妃は、アイルノーツ公爵家の出で、アイルノーツ公爵と言えば、ライバル派閥である。


王妃オイスティーヌは、沢山の貴族達に囲まれ、挨拶を受けていた。


ローゼンとフローラは、王妃の前に進み出て、


「王妃様。御挨拶に伺いました。」

「パーティにお招き下さり有難うございます。」


二人で頭を下げれば、王妃は、


「もう一人の公爵令嬢、アイリーンは婚姻前に子を作ったどうしようもない女らしいですが、フローラ、貴方はそのような事は無いのでしょうね。本当に婚前交渉だなんて、公爵令嬢として常識を疑うわ。魔族だから人間の常識を知らないのかしら。」


「王妃様。私、フローラは、婚前交渉をフォバッツア公爵と行っておりません。まだ学生ですし、今は勉学が大事という事は良く解っております。」


「それならば良いのですけれども。」


その時に、二人を押しのけて、一人の女性が、


「失礼致しますわ。わたくし達もご挨拶したいものですから。」


公爵位のある、二人を押しのけるとは無礼極まりない女性である。

彼女は金髪で、薄緑色のドレスが似合う、楚々とした感じの女性であるが、

チラリと意地悪そうに、ローゼンとフローラを見つめ、


「何か文句でもありますか。わたくしはマーレリー大公夫人。これから大公様がご挨拶致しますわ。」


ディミアス・マーレリー大公と言えば、ディオン皇太子殿下の双子の兄弟である。どちらが弟かはわかっていないが、双子は縁起悪いと、小さかった頃、身体の弱かったディミアスは王家から冷遇されて、王宮の図書館長をしている人だ。

夫人のミリーは、ディオン皇太子の側室として、召し上げられたが、ディオン皇太子が無視を決め込んでいた所、ディミアスと恋に落ちて、結婚したのだ。

大公夫妻ならば、公爵より上の位である。特にディミアスは王家の血筋。

無礼な態度を取られても文句は言えない。


ディミアスは、自分の母の王妃オイスティーヌに、挨拶をする。


「お久しぶりです。母上。今日は交流会という事で、妻と共に参りました。」


「おおっ。これはディミアス。それからミリー。よく来てくれた。私は嬉しいぞ。」


フローラはローゼンと共に、頭を下げて、その場を離れる。


フィリップ殿下と、婚約者のソフィアが、フローラの方に近づいて来て。


ソフィアがすまなそうに。


「フローラ様。ミリーお姉様がごめんなさい。ああでもしないと、王妃様や、アイルノーツ派のうちの父の風当たりが強くなるから、大変なの。本当は良い姉なのです。」


フィリップ第二王子殿下も、


「兄上は大公と言っても、王家から冷遇されてきた。だから、夫人のミリーも大変なんだ。解ってやって欲しい。」


「ソフィアは私と仲良くしていて大丈夫なの?」


「私はフローラ様のお陰で、フィリップ殿下と婚約出来たのです。だから、

王妃様や父に嫌味を言われようが、フローラ様と仲良くしたい。その気持ちに変わりはありません。」


「ああ、有難う。ソフィア。でも、無理しないでね。」




フィリップ殿下とソフィアと別れると、向こうから良く見知ったカップルが優雅に歩いて来た。


シリウス・レイモンド公爵と、アンリエッタ・シャルマン公爵令嬢である。


アンリエッタとはローゼンをめぐって、過去に色々とあったが、シリウスと一緒なのには驚いた。


シリウスはローゼンに、


「騎士団長、フローラ殿、ご報告があります。今、俺はアンリエッタ・シャルマン嬢とお付き合いしています。いずれは結婚したいと。」


アンリエッタも軽く頭を下げて。


「シリウス様から、結婚を前提にお付き合いを申し込まれましたわ。私、シリウス様と結婚をしようと思っています。

本当にいままでご迷惑をかけて、申し訳なかったですわ。これから、社交の場で顔を合わせる事もあるとは思いますが、よろしくお願い致します。」


ローゼンは二人に向かって。


「それは良かった。おめでとう。シリウス。アンリエッタ。

アンリエッタ、君も知っての通り、シリウスは有能ないい男だ。幸せになって欲しい。」


アンリエッタは嬉しそうに。


「ローゼン様に祝って頂けて嬉しいですわ。」


フローラも、二人に向かって。


「レイモンド公爵家は、我がフォルダン公爵家との関係がとても親密ですわ。

これからもよろしくお願いします。」


シリウスは頷いて。


「こちらこそ、フォルダン公爵には世話になっている。よろしく頼む。」


フローラはほっとした。

ローゼンを愛でる会の会長をしている位の、アンリエッタはローゼンに執着をしていたのだ。


アンリエッタに近づいて、ファンクラブはどうするのか聞いてみる。


「アンリエッタ様、ローゼン様ファンクラブはどうなさいますの?」


アンリエッタは小声で。


「続けますわ。会長は他の方に譲りますけれども、私は名誉会長って事になりますわ。

今は色々な身分の令嬢達が親しく集う社交の場でもあるのですから、どうかお許し下さい。

シリウス様も許してくださっております。よろしければ、フローラ様、特別名誉会長に致しますから。」


「特別名誉会長ですって?」


「ええ…是非とも一度、皆さんの前で、ローゼン様について、お話を頂けたらと思いますわ。」


シリウスがアンリエッタに、


「あまり騎士団長とフローラ殿に迷惑をかけたらいけない。愛でる会は続けていいとは言ったが。」


「解っておりますわ。私はそこで知り合った令嬢達との交流を大事にしたいだけです。」


その時、教会の鐘がけたたましい音で、街中に鳴り響いた。

この音は非常事態の音である。


騎士が数人駆け込んで、ディオン皇太子に報告する。


「皇太子殿下、治安隊のザビト総監の報告によると、闇竜が3匹現れて、王都に向かっているとの事です。すぐに緊急事態の発令を。」


「解った。皆の者。パーティは中止だ。闇竜が王都に向かっている。

母上、セシリア、王宮の自室へ。ディミアス、フィリップ、留守を頼む。

俺は闇竜を退治しに行く。」


ディミアスが、ディオン皇太子に向かって。


「任しておいてくれ。」


フィリップ殿下も、


「気を付けて行って下さい。兄上。」



ディオン皇太子は、王宮の広間を退出した。聖剣を手に現場へ向かうのであろう。


ローゼンもフローラに向かって。


「私は皇太子殿下と共に行かねばならない。フローラ。君はフォルダン公爵家に戻ってくれ。」


「気を付けて行って下さいませ。ローゼン様。」



ああ…闇竜は恐ろしい化け物の竜。どうなるのかしら…



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