第4話[逃避]
道に迷いながらもアリスは華の家に辿り着く。
一応開店まで待った方がいいのかしら?
そう思い、近くの喫茶店で時間を潰し、再び訪れるが、まだお店が開かない。
どうしたものかと考えていると、同い年位の少女に声をかけられた。
「あの、もしかして華ちゃんのお友達の方ですか?」
「ええ、まあ、そうだけど」
静香と名乗る少女はアリスを手招きし、お店の裏口へ案内してくれた。
インターホンを鳴らし、華の母親が玄関から出ると、静香はアリスを紹介し、家へ上げて貰う事に……。
終始暗い表情の二人に嫌な予感がする。
そして案内された部屋へ入るとアリスは「嘘よ」と呟いた。
「何なのよコレ」
「こんな事って……」
膝から崩れ落ちるアリスを見て、静香はアリスから視線を逸らした。
愛しい愛娘を亡くしハンカチを濡らす華の母、その横で静香は線香をあげ手を合わす。
アリスも同様に線香をあげ、それから静香と共に部屋を出た。
玄関で靴に履き替える途中、アリスは華の母親に呼び止められて、しばらくして花束を持って来て、それをアリスに手渡した。
「カスミソウって花なの、あなたに似合うと思って持って来たわ」
「良かったら受け取って」
「ありがとうございます」
そう言ってアリスは華の家を出て行った。
帰り道、静香がアリスを公園に誘った。
自販機でお茶を二つ購入し、アリスに一つ手渡すと静香はアリスの隣へ座る。
「あっ、お金を払わなくては」
お財布から小銭を取り出そうとするアリスを静香が慌てて止める。
「いいよいいよ」
「私の奢り」
明るく振る舞う静香にアリスも笑顔で応える。
「ねぇ、華の身に何がありましたの?」
しばらく沈黙が続き、静香はお茶を一気に半分程飲むと華がどの様にして亡くなったのか語り始めた。
此処とは別の公園で華の遺体は見つかった。
明け方に公園をランニングしていた男性が華の刺殺体を発見したそうだ。
警察は犯人の行方を追っているそうだが、今だに手掛かりはゼロだとか……。
一通り静香から話を聞いた華は静香に別れを告げ、帰宅しようとする。
そんなアリスを静香が大声で呼び止めた。
「無理しないでね。」
彼女の言葉に笑顔で返す。
自宅に着きアリスはカスミソウを優衣に渡し、部屋に飾る様に指示を出す。
部屋着に着替えたアリスはベッドに座り、一人考え事をしていた。
そんな中、高価な花瓶に入ったカスミソウがアリスの部屋に届けられる。
部屋に置かれた花に近寄るツツ。
「カスミソウ何てアリスにピッタリじゃない。」
そう言って、ツツはうっとりと花を眺めていた。




