第3話[悪意]
アリスは真奈を抱き枕かの様に抱きしめ、真奈の体温を肌で感じ、そして目を瞑る。
真奈の体温は温かく、背中に耳を押し当てると聴こえてくる真奈の鼓動。
それを聴いていると何だか落ち着きリラックスできる。
次第に眠くなり、アリスは寝息を立てながら眠った。
翌朝、真奈は目覚めると少し困惑していた。
足を絡ませ、軽く締め付ける様に抱きしめられている。
(コレ、抜け出したらアリスちゃん起きちゃうかな?)
真奈がそんな事を考えていると、アリスの部屋の扉からノック音が聴こえてくる。
「アリスお嬢様、朝食の支度が出来ております。」
「早くお目覚めを。」
奈緒香の言葉で目を覚ますアリス。
歯を磨きに洗面所へ真奈を誘うのだが…。
「あら、何をしてますの?」
「歯ブラシ持って来たから探してるの。」
そう言ってリュックを漁る真奈を見て、アリスは満面の笑みで話しかける。
「何だそんな事、だったら私の歯ブラシを一緒に使えばよろしいんじゃなくて?」
「えっ?」
場の空気が凍りつく。
えっ、私何か可笑しいな事、言いましたっけ?
「いや、その…、同じ歯ブラシは…。」
困惑する真奈を見て、アリスは更に傷ついた。
「歯ブラシを共有するのは友達として当たり前の事じゃありませんの?」
これまで友達と遊んだ事やお泊まりをした事が無いアリス。
修学旅行や林間学校も無く、歳の近い奈緒香位しか学校外で時間を共にした者は居なかった。
それらの事情を聞き、アリスを気遣い真奈は笑顔を作る。
「なーんてね。」
「アリスちゃんの歯ブラシ借りてもいいかな?」
「ええ、勿論ですわ。」
笑顔になるアリスを見て、ツツはアリスの耳元へ近寄った。
「あんな嘘ついていいの?」
小声で話すツツにアリスは小声で返答する。
「ああでも言わないと私が真奈に変態だと思われちゃいますわ。」
えっ、違うの?
などと言える事も無く、ツツは手を握り真奈を洗面所に連れて行くアリスを見送った。




