第3話[否定]
華の意識は無くなり、パートナーの妖精ミミの存在が消える。
その様子を見て、笑う桃香。
「ねぇ、私まだ生きてるよ?」
「死んでも殺すんじゃなかったのぉ?」
ケタケタと笑う桃香を囲む警察官。
事情を聞こうと桃香に近寄るが…。
「うるさいなぁ。」
華を引きずりながら、魔法で剣を作り出し、警察官の喉元にソレを突き刺した。
返り血を浴び、体を赤く染めながら桃香は笑う。
「いい加減、離れてよ。」
華を引き離し、周りに居る警察官や野次馬を皆殺しにする。
変わり果てた桃香を心配そうに見つめるモモ。
どうする事もできない。
彼女のする事を咎めれば、彼女を否定する事になる。
それは、今の桃香が一番嫌う事。
妖精はいつ如何なる時も、パートナーの味方でいなければならない。
愛する桃香の唯一の理解者でいなければならないのだ。
全てを殺し終えた桃香は手土産を持ち、真奈達を追った。
華を心配する真奈の手を握り、引きずる様に走る狂美。
真奈は狂美に「待って」と言うが、狂美は止まらなかった。
何としてでも、真奈だけは守らないと…。
真奈だけは…。
真奈に手を振り解かれて狂美は止まる。
「助けに行かないと…。」
「華ちゃんが殺されちゃう。」
「あいつなら大丈夫さ。」
「真奈、どうして華がお前を連れて逃げろって言ったか分かるか?」
「私を守る為?」
「確かにそれもあるだろう。」
「だが、一番の理由じゃない。」
「あいつは、あの魔法少女を殺す気でいる。」
「その姿をお前に見られたく無いから、あいつはお前を連れて逃げる様、私に頼んだんだ。」
これは今思いついた嘘だ。
真奈を大人しく逃す為に吐いた嘘。
こんなので真奈を引き留められるなら、私は何度だって嘘を吐く。
だから真奈、そんな顔をするのは止めろ。
大人しく私について来てくれ。
「私は、どんな華ちゃんだって受け止めるよ。」
「だから私…。」
決意に満ちた表情。
真奈の言葉が耳に入って来ない。
だから私は、子供みたいに我儘を言う。
真奈をキツく抱きしめ、私から離れて行かない様に…。




