第2話[強者]
「あんたに何がわかんのよ。」
華の叫び声が辺りに響く。
「何も知らない癖にいい加減な事、言わないでよ。」
「だったらテメーは、その事を静香に言えんのか?」
「いじめっ子が居ないと分かりゃぁ、静香も学校に行けんだろ。」
「無理よ。」
「あの子の記憶にハル達は存在しない。」
「あるのは、いじめを受けた事実のみ。」
そう言うと華は自分が静香にしてきた罪を告白した。
そんな中、狂美はある事を考えていた。
静香は一体、誰の幻を見ていたんだ。
あの様子から見て、華の幻だけじゃ無い。
しばらく考え、狂美はある可能性について口にした。
「悪りぃ、もしかしたら、ハルとかいう奴の記憶を蘇らせてしまったかもしれねぇ。」
そう言うと狂美は静香に幻を見せた事を話した。
それを聞いて激怒した華は狂美の胸ぐらを掴んで罵倒する。
慌てて二人の間に割って入り、真奈は華を落ち着かせた。
「くっ、取り乱して悪かったわ。」
理由はどうあれ、今こうしてコイツは静香と仲良くやっている。
静香も私に友達が二人できたと嬉しそうに語っていた。
あの子は強いから、あんな目に遭わされてもコイツを許したんだろう。
なら何故、私は怒った?
結局、コイツの言う通りだったんだわ。
ハル達を殺した事を静香に知られたくなかった。
だから、あんなに腹を立てて…。
静香は溜め息を吐き、ハル達を人間だと認めた。
「はぁ、静香に何て言えばいいんだろう。」
「友達が殺人犯だと知ったら嫌われちゃうかな。」
壁にもたれ、そのまま地面に座る華。
そんな華にパートナーの妖精のミミが慰める。
「大丈夫、ハル達の事なんて思い出してないって。」
「そもそも、魔法で幻覚を見せる何て難しくて完璧にできないって、適当なクラスメートがハル達の代わりになって登場しただけでしょう。」
その言葉にカカは腹を立て、反論する。
うちの子は優秀だと自慢する母親の様に、妖精達が互いのパートナーを自慢し貶し合う中、真奈が口を開いた。
「無理に打ち明けなくてもいいんじゃないかな。」
静香ちゃんにとっても嫌な過去だろうし、もしかしたら狂美ちゃんの魔法がかかっている間だけかも知れない。
下手に打ち明けて嫌な思いをさせるより、その時が来るまで黙っていてもいいんじゃないかと真奈は華に自分の考えを語った。




