第2話[強者]
少し銃で脅してやればいい。
そうしたら、ビビって友達を置いて逃げる筈だ。
そうだ。
何も幻覚なんて見せなくても弱者かどうか脅せば分かる。
そう思い、静香の近くの地面に玉を撃ち込み分からせる。
本物の銃弾並に威力がある事を…。
さあ、逃げろ。
さもなくば私に殺されるぞ。
手を震わせながら笑う狂美に静香は猪の如く突っ込み、狂美の腰にしがみ付いた。
そして真奈に向かって叫ぶ。
「真奈ちゃん逃げて。」
予想外の静香の行動に戸惑いながら、震える手で静香の足を狙う。
手の震えで上手く玉が当たらない。
何発か撃ち、ようやく静香の足に玉を命中させた。
足から血を流し、静香は悲鳴を上げる。
だが、それでも静香は狂美から離れようとしない。
その様子を見た真奈が雄叫びを上げながら静香同様、狂美に突っ込んで行った。
「静香ちゃんを離せ。」
そう叫び真奈は狂美にしがみ付いた。
離せも何も静香が勝手にしがみ付いて離れない。
そんな状況下で狂美はボソリと呟いた。
「何なんだよコレ。」
「何でお前らじゃねーんだよ。」
「どうして、お前らが私の友達じゃなかったんだよ。」
涙で視界が歪む。
「カカ、コイツの傷を治してやってくれ。」
そう言うと狂美はモデルガンを地面に落とした。
ずっと弱者は罪だと思っていた。
香恵の様に弱いから平気で人を裏切る。
そう思う事で私はただ辛い現実から目を背けていたんだ。
結局、弱者は私の方だったんだ。
力無く地面に膝をつき、涙を流す狂美を見て静香が優しく語りかけた。
「何があったの?」
その言葉に狂美は全てを話した。
裏切られた事も人を殺した事も全て…。
「もうお終いだな。」
落ちた銃を拾い、頭にソレを突きつける。
本当、弱者は悪で罪だ。
今の私を見て、改めてそう思う。
私の心がもっと強ければ、こうはならなかったのかもなぁ。
弱者が強大な力を手にした成れの果て、潔く死のうじゃないか。
そう覚悟を決めた時だった。
「あなたが死ぬのなら私も死ぬ。」
「だからお願い、死なないで。」
真奈の言葉に驚く狂美。
いきなりコイツは何を言い出すんだ。
真奈の思考が読み取れず戸惑う狂美を前に、真奈は覚悟を決める。
石を魔法でナイフに変え、そしてそれを自らの足に突き刺した。
その様子を見て、咄嗟にハンカチを取り出し、止血しようとする静香を真奈は止めた。
そして、痛みに顔を歪ませながらも真奈は真っ直ぐと狂美を見つめた。




