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第2話[強者]

誰にだって後悔や後ろめたい事はある。

真奈もまた、後悔している事があった。

人によっては大した事では無いにしろ、その人にとっては取り消せない過去なのだ。

狂美に見せられた幻の中で、真奈の目の前には母親が立っていた。

悲しそうな表情の母親を見て、真奈の心が締め付けられる。

誰かを傷つけない様に生きなさい。

そう両親から言われ育てられた。

成績が悪くてもいい。

運動ができなくてもいい。

ただそれだけを守って生きていく。

それが一番大切な事で、それを守り続けている限り立派な人間なのだと教えられた真奈だが、初めてスマホを手にした時、真奈はその約束を破ってしまう。

夜遅くの通話、その事を母親に叱られ、真奈は生まれて初めて母親に反抗してしまう。


「うるさいなぁ、ちょっと位いいじゃん。」


真奈のその言葉が原因で母親と大喧嘩。

しばらく口もきかなかった。

その間、母はとても辛そうな顔をしていた。


「真奈ちゃん、ごめんね。」

「お母さん、いい過ぎちゃった。」


そんな母親の謝罪も、真奈は無視し、口をきく事はなかった。

自分が悪いのに…。

謝らなければいけないのは私の方なのに…。

頭では分かっていても、素直になれないでいた。

時が経ち、母親との関係も改善されたが、真奈の中であの時の出来事が今も引っかかっていた。

そして…。


「お母さん…。」


あの時の母親が真奈の前に立っていた。


「ごめんね。」

「私、お母さんを傷つけて…。」


謝罪する真奈を母親は険しい表情で睨む。

そして、母親は真奈を叱咤した。


「何をやってるの。」

「あなたがやるべき事は他にある筈よ。」


母親の指差す方を見る。

そこには、涙を流し苦しんでいる静香の姿があった。


「私に謝る暇があるのなら、友達を早く助けてあげなさい。」

「彼女を救えるのは、あなたしか居ないんだから。」


真奈は涙を拭い、強く頷いた。

そして、静香を強く抱きしめた。


「静香ちゃん、落ち着いて。」

「私が居るから、私が側に居るから。」


真奈の温もりを感じ、そして涙ながらに真奈の顔を見つめた。

まだハル達の幻は消えていない。


「真奈ちゃん。」


縋る様に真奈の胸の中に顔を埋める。

心が落ち着く。

ハルちゃん達の声が聞こえない。

聞こえるのは真奈ちゃんの温かい言葉だけ。

静香の周りからハル達の幻は消え、そして静香は顔を上げて真奈に言う。


「真奈ちゃん、ありがとう。」


真奈はハンカチで静香の口の周りについている土を拭き取りながら笑顔を向ける。

その様子を見ていた狂美はモデルガンを取り出した。

本来、幻覚を見せて、その幻覚に打ち勝った者は生かすというルールを決めていた狂美だったが、二人を見て自らそのルールを曲げる事にした。

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