第1話[弱者]
四つの遺体を前にし、狂美は改めて思う。
弱者は罪だと。
弱いから香恵の様に平気で人を裏切り、弱いから、いじめっ子達の様に自分を強く見せようとする。
そう、弱いから…。
「ところでカカ、お前何やってんだ?」
遺体を貪り食うカカを見つめながら狂美は問う。
カカは全身、血で汚しながら答える。
「ああ、これ?」
「肉を食べてるの。」
「魔獣の肉を食べれば食べる程、魔力を得られるからね。」
「そうねぇ、あなた達、人間で言うところのお金があればあるほど困らないって感じかしら?」
そう言うとカカは遺体を食べ続けた。
その日から狂美は魔法少女として魔獣狩りを始めた。
魔法で幻覚を見せ、弱者かどうか見極め殺す。
この繰り返しの日々。
そんな日々の中、狂美は学校に行かず、公園のベンチに座り体を休めていた。
「すごいわ狂美。」
「魔法で幻覚を見せる魔法少女なんて、あなた以外、誰もいないわ。」
「あなたは天才…。」
何かの気配を感じたカカは急に黙り込み、辺りを見回した。
そして、狂美に他の魔法少女がこの公園に居る事を告げ、カカは狂美をその魔法少女が居る所へ案内した。
言われるがまま、カカの後を追う狂美。
「あそこ、あの二人の内の左側の子。」
狂美と年が近そうな少女が二人、ベンチに腰をかけ、お喋りをしている。
「カカ、お前が気づく位だ。」
「向こうも私の存在に気づいているんじゃないのか?」
ならばコソコソする必要何て無い。
そう思っていた狂美だったが…。
「いや、多分だけど向こうは気付いていないと思う。」
「それに、あの魔法少女のパートナーの妖精、何か変よ。」
カカの言葉を聞き、狂美は考えを改める。
「あの子のパートナーの妖精、私は見た事が無い。」
カカはそう言うと私に人間界に来た妖精は自分を含め七人だと言い、六人全ての顔を知っていると教えてくれた。
(存在する筈の無い八人目の魔法少女か。)
狂美は八人目の魔法少女の存在が気になり、魔力の気配を消して、二人のベンチの近くに座り、スマホのアプリを起動させ、ゲームをする振りをして、二人の会話に耳を傾けた。




