第2部第1話[弱者]
夕方、両親が仕事で遅くなるとの事なので、私は勇気を出してファーストフード店に向かい、ハンバーガーセットを頼んでいた。
特に待たされる事も無く、出来上がった商品を渡され、私は店内の適当な席へ座る。
「マズい。」
ハンバーガーもポテトもドリンクも、全てにおいてマズかった。
早く食べて帰ろう。
そう思い、ハンバーガーを何口か頬張り、ドリンクで流し込む。
ポテトも数本手に取り、一気に口に入れ、食べ進めていく。
そんな時だった。
「ここのナゲットヤバくない?」
「ヤバいよね。」
「超美味しいんだけど。」
ポテトを頬張りながら、近隣の歳の近そうな子達の会話に耳を傾け、私は席を立ち、追加でナゲットを注文した。
出来上がり、席にそれを持って行き、一つ口に運ぶ。
「チッ、マズいじゃねぇか。」
私は頼んだ事を後悔しながら食べ終える。
ゴミを片付け、テーブルを布巾で拭き、私は大きな舌打ちをして、お店から出て行った。
家に帰り、教科書を開き、独学で勉強し、両親の帰宅を待つ。
両親が帰ると私はリビングに向かい、家族揃って笑い合う。
深夜になるとスマホゲームをし、朝になると眠りにつく。
そんな生活を送っていたある日の事、珍しく朝早くに起きてしまった。
私は欠伸をし、歯を磨き、用意してくれた朝食を家族揃って食べる。
「狂美、今日は学校に行くのかい?」
「んっ、ああ、珍しく朝早く起きちゃったしね。」
「そうか、ならパパと一緒に家を出ないか?」
「いいよ別に、学校の奴に見られたら恥ずいし。」
そんな会話をし、朝食を済ませる。
そして、制服に着替え、母さんに挨拶をする。
「行って来ます。」
「あっ、それと朝食美味しかったよ。」
私はそう言って家を出た。
家を出てから数歩、何だか眠たくなってきた。
授業中は昼寝して、暇な時はスマホで音楽でも聴こうかな。
そんな事を考えながら、私は学校へ向かい、教室へ向かう。
すると複数人が私の席を取り囲んでいた。
「チッ、どけよ。」
私は適当な奴のケツを蹴り、睨む。
「ちょっと、いきなり何すんのよ。」
「テメーらこそ、私の席を囲んで何ハシャいでんだよ。」
「はぁ?」
「何言ってんのよ。」
「ここは…。」
「ああん。」
私はそう言って威嚇し、睨みつける。
「もうやめよ。」
「こいつヤバいって。」
そう言うと奴らはそそくさと何処かへ消えて行った。
ふぅ、これでのんびり出来る。
そう思った時だった。
「誰だテメー。」
私の席に座り、俯いている一人の生徒が居た。
「何ずっと座り続けてんだよ。」
「さっさとどけよ。」
そう叫ぶが、彼女は一向に退こうとはしなかった。




