最終話[?]
季節は夏。
我こそはと自己主張の激しい蝉達の鳴き声が街中を包む中、私は学校へ通っていた。
冷房の効いていた部屋から数歩出ただけで、額から汗が滲み出る。
「暑い」と独り言を口にだしながら、出来るだけ陰の方を歩いていると、一人の少女が私の名前を呼び、私は歩みを止めた。
どうしよう。
見た目は私と同じくらいかな?
だけど、私は彼女を知らない。
記憶に無いのだ。
だけど、向こうは私の名前を知っている訳で、顔見知りって事になると思うんだけど…。
やばい、完全に忘れちゃってる。
失礼だよね。
本当にどうしよう。
頭を抱え、困惑している私を見て、彼女はクスクスと笑った。
「リリ隠れてないで、ちゃんと挨拶しなさい。」
リリ?
私は犬の名前だと思い、彼女の足元を確認するが何もいなかった。
不思議な人だ。
そう思っていると、彼女の背後から、羽の生えた小さな少女が現れる。
「真奈に私の姿何て見えないわよ。」
いや、バッチリ見えてますけど…。
「あの、妖精さん?」
「で、いいのかな?」
私の言葉に反応し、妖精さんは自己紹介をしてくれた。
顔を赤くして、私から視線を逸らしながらも、握手を求める姿が、とても可愛いらしい。
私は人差し指を出し、彼女と握手をした。
「それでね、真奈。」
私は声をかけてきた少女に視線を移す。
彼女はモジモジと体を動かし、恥ずかしそうに、こう言った。
「実は私、魔法少女なの…。」
完
可奈END




