最終話[?]
アリスは強かった。
その強さの理由は、彼女が魔法少女を殺したからだと妖精は説明する。
なら、全ての魔法少女を殺した場合はどうなるのか?
桃香はそう語った。
「今、あなたには、四人の魔法少女の力が宿っている。」
「私を殺せば五人目、後の二人を殺せば…。」
彼女の言葉を聞いて、私は冷静さを取り戻す。
正直に言えば、強くなったという実感はない。
だが、理性を失い易くなっているのも事実だ。
真奈の死。
それによって、私は正気を失っていたんだと思う。
だって、真奈の遺体にアリスの肉を食べさせようだなんて、いつもの私ならそうは考えないもの。
「別に全員を殺さなくていいのでは?」
生き返らせる程の力がついた時点で魔法少女を殺す必要は無い。
今、それが出来るのなら、桃香を殺す必要もなくなる訳だ。
だが、彼女は首を横に振る。
「魔法少女の力なんて、無い方がいい。」
真奈と出会い、自分のしてきた事に後悔している。
彼女はそう語り、そして今後の事を私に話した。
殺した魔法少女の遺体を魔法で妖精と出会う前まで時間を巻き戻す。
そうすれば、彼女達は自動的にいつもの日常を送る事になるのでは?
彼女はそう考えていた。
確かに、死ぬ直前まで時間を巻き戻しても、彼女達の魔法少女だった事実が消えなかったら意味がない。
だったら魔法少女になる前まで時間を巻き戻す方がいいってわけね。
納得はしたけど、ただ一つ疑問が残る。
どうして巻き戻す必要があるのかだ。
そんな事せずに、普通に生き返らせるだけじゃ駄目なのか?
私は疑問に思い、彼女に尋ねた。
「それでも、いいんだけど…。」
「生き返った場合、人としてなのか魔法少女としてなのかが分からないから。」
妖精もいないのに、魔法少女として生き返る事はあるのだろうか?
現に魔法少女の力が私に宿っているのなら…。
そんな時だった。
私の脳裏に一瞬だけ、アリスの姿が頭に過ぎる。
確かに、あれを見た後じゃ、遺体の時間を巻き戻す方がいいかもしれないわ。
「モモ、ごめんね。」
「私の我儘であなたを殺す羽目に…。」
涙を流す桃香に励ましの言葉を送るモモ。
こんなの見せられたら殺すに殺せないじゃない。
「別にあんたが死ななくてもいいんじゃない?」
「私を殺して生き返らせてくれてもいいし、他にも二人を殺した後に生き返らせる力が手に入るかもしれないし。」




