第3話[無関心]
私は血塗れの仔猫を見つけ、抱き上げる。
リリに猫の記憶を弄って貰い、仔猫は暴れる事はしなかった。
「私がシャワーを浴びていた時、浴槽に死体があったわよね。」
「そいつがこの子を酷い目にあわせたのよ。」
私の言葉を聞き、彼女は俯き、何かを考えていた。
まあ、何を考えていようと、私には関係ない。
それより、せっかく家に上がらせたのだから、少し手伝って貰おうかしら。
私はそう思い、彼女に話しかけた。
「どうせなら、この子を洗うの手伝ってよ。」
「えっと…、名前は?」
「倉暗真奈。」
「あなたは?」
「中門可奈よ。」
ついでにリリを紹介し、私達は猫を洗いにお風呂場へ向かった。
暴れ回る仔猫に二人がかりでも苦戦し、何とか体中についた血液を洗い流す事ができた。
明日には動物病院に連れて行かなくては、そんな事を考えながら、紅茶を入れる。
真奈の膝の上で安心して眠る仔猫を見て、彼女に対し心を許している自分がいた。
「この子、さっきの人に酷い目に遭わされたって言ったよね。」
「ええ、人じゃなく魔獣だけどね。」
そう魔獣だ。
自分より、弱い生き物に暴力を振るい、苦痛を与えて殺していく、そんな奴、人間じゃない。
魔獣なのだ。
その事を話すと彼女は信じられない言葉を口にした。
「それって、悪い事なの?」
「だって、野良猫だよ。」
「周りに迷惑をかける害獣なんだよ。」
彼女の心無い言葉に怒りが沸く。
私は持っていた紅茶のカップを机に叩きつける様に置き、彼女を睨んだ。
「あなた、本気で言ってるの?」
「だとしたら、私はあなたを許さない。」
怒り、魔法少女に変身する。
コイツもまた、魔獣なのだ。
「どうして怒るの?」
「どうして?」
「そんなの決まってるじゃない。」
「野良猫だろうが、何だろが、人間が勝手に命を奪っていい訳ないじゃない。」
「あなた、そんな事も分からないの?」
「なら、どうして中門さんは魔獣を狩るの?」
それは…。
一瞬口籠ってしまった。
だが、直ぐに反論する。
「動物達を救う為よ。」
「救うだけなら、殺す必要は無いよ。」
なっ…。
反論せず黙る私に彼女は続ける。
「私、思うんだ。」
野良猫だからといって、虐待し殺す事は間違っている。
野良猫などの対処は保健所の仕事であって、私達が勝手にやっていい事ではない。
そしてそれは、私達、魔法少女も同じなんだよ。
「犯罪者は法で裁くべきなんだ。」
「私達、魔法少女が殺しちゃ駄目なんだよ。」
「勝手な事、言わないでよ。」
「その法に守られ無かった人達はどうするの?」
「私は何も間違った事はしていない。」




