第3話[無関心]
そう、分かる筈が無い。
人の気持ち何て所詮、本人にしか分からないのだから。
それなのに、コイツは、私を打ちのめしたいのか、私の反論に答えを返して来る。
「分かるわよ。」
「だって、私達妖精は言葉を色で見る事ができるんだもの。」
彼女は話す。
例えば、上司が部下を怒鳴る際、その言葉の色が青ならば、悲しみながら怒鳴っている事が分かる。
逆に、悲しみの言葉を発し、泣いていても、その言葉が赤ならば怒りを抱いているのが分かる。
人は必ずしも言葉通りの感情を抱いているとは限らない。
「その中でも、あなたの家族は異常よ。」
「だって、あなた達が発する言葉は無色透明。」
「何の感情も抱いていないんだもの。」
「まあ、さっきのあなたの言葉には色が付いていたけどね。」
嘘だ。
私は信じない。
所詮、妖精の言っている戯言に過ぎない。
言葉の色何て、結局妖精にしか分からないだけで本当かどうかも怪しい。
信じられない私に対し、妖精は溜め息を吐く。
「分かった。」
「なら、証明してあげるわよ。」
「あなたの両親がどれだけ異常かをね。」
そう言って妖精は私を自宅へと転移させた。
妖精が言うには、魔法で私は死んだ事になっているらしく、周囲からは認識される事は無いらしい。
「お母さんは…、買い物かな?」
自宅を捜し回っても、お母さんの姿は無く、行きつけのスーパーの道を辿る。
「あっ…。」
近所のおばさんと話しをしているお母さんの姿を発見した。
ハンカチを手に泣いている。
それを見て、私は何だか嬉しくなった。
「娘さん、本当に気の毒だったわ。」
「あんなに仲が良かったのにねぇ。」
何故だか、近所のおばさんも泣いている。
お母さんは近所のおばさんの話しに何度も相槌をうちながら、ハンカチを濡らしていく。
「フッ、何が機械よ。」
「何が無色透明よ。」
「お母さんは私を愛しているじゃない。」
魔法を解いたら、お母さんにウンと甘えよう。
無感心だった、私の心が潤う気がした。
だが…。
「これ、旦那さんと食べてね。」
「ありがとうございます。」
近所のおばさんから、何かを受け取り、別れた後の事だった。
妖精がニヤリと笑う。




