第1話[加害者]
私だって被害者。
加害者で被害者なんだ。
そんな言葉、あの子の前では口が裂けても言えない。
言える訳ない。
何でこんな事になったんだろう。
学校のプリント、仲が良かったからという理由で担任の先生から、あの子の家に届けるように頼まれた。
「今更、どのツラさげて会えっていうのよ。」
あの子の両親に殴られるんじゃないだろうか?
少なくとも、怒鳴られるのは確実だ。
だって、私は彼女をイジメてたんだもん。
ハァ、気が重い。
彼女の家に着き、呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、ドアが開いた。
「華ちゃん、久しぶり。」
あの子は前と変わらない笑顔を私に向けてくれた。
どうしてなの…。
どうして、私にそんな笑顔を向けてくれるの。
私は…、あなたに酷い事をしたのに。
「ほら華ちゃん。」
「あがって、あがって。」
「どうしてなの…、どうして、笑っていられるの?」
「私はあなたに酷い事をしたのよ。」
「それなのに…。」
「仕方ないよ。」
「ハルちゃん、怒らせると怖いから。」
「それに私をイジメなかったら、華ちゃんがイジメられてたじゃない。」
「そんなの、私は絶対に嫌だもん。」
静香の優しさに涙が出る。
「私、貴方に虫を食べさせたんだよ。」
「美味しかったよ。」
美味しい訳が無い。
冗談を言って場を和ませようとしてくれているのは分かるが、今はそういう雰囲気ではない。
「変な冗談は止めて。」
「ごめんなさい。」
落ち込む静香を見て、私の気分が沈む。
ハァ、やってしまった。
静香は別に悪くないのに謝らせてしまった。
謝らなきゃいけないのはこっちの筈なのに…。