第1話[可哀相]
そんな退屈な日々を過ごしていたある日の事、私はこの日、妊娠中のハムスターをトカゲに餌とし与えていた。
「フフフ、最高だわ」
お腹の子を含め、一度に幾つもの命が失われていく。
本当に可哀相。
でも、それが止められない。
「素敵」
気付くと私の側には羽の生えた小さな少女が飛んでいた。
うっとりとした表情を浮かべながらトカゲの捕食を眺める彼女を私は見つめ観察する。
「流石朱音ね」
「これは正に芸術よ」
「生と死をテーマにした芸術品」
「母親のハムスターの命に産まれてくる子達の命、様々な生がこのゲージにありながら様々な死を迎える」
「誕生という喜びも愛も失われ、欲だけが満たされている」
そう熱く語る妖精を私は冷めた目で見ていた。
「それであなたは?」
ヤヤと名乗る彼女は魔法少女を捜す為に人間界にやって来たと私に語る。
そしてどうやら私は、彼女に選ばれたらしい。
本来なら誰かの為に悪い人間を殺したりする何て面倒臭い事はしないが、普通の人間を殺したらどうなるのか、その疑問に好奇心を抱き、私は魔法少女になる事にした。
詳しい話しを聞き、私は公園に向かい一人で遊んでいる小さな子供をヤヤの目の前で殺して見せた。
「ねえ、ヤヤ」
「この子は魔獣かしら?」
私の問いにヤヤは興奮した様に答える。
「子供は騒音を撒き散らし人を苦しめるからね、ハッキリ言って魔獣だわ」
何を馬鹿な事を言っているのだろうか。
少なくともこの子は公園内で一人大人しく遊んでいたわ。
もしかして、人間なら誰でも殺していいのかしら?
だとしたら、この力を悪用して正義の味方に成敗されてみるのも面白いかもしれないわ。
いや、どうせ殺されるのならその子の心に傷として残りたいわね。
そうね、それがいい。
私を忘れられない程憎ませて、その子の心の中で傷としてその子の中で生きていく。
最高にロマンティックじゃない。
私はヤヤから魔法少女が何人いるのか聞き出して、ヤヤとは別行動をしながら魔法少女を捜して回った。
一人一人、名前と住所、その他性格などを調べ上げ、そして私は真奈と出会った。
名前も分からない妖精を連れ、人助けをする彼女を見て、私は一目惚れしてしまう。
彼女素性を調べ、そして日に日に彼女に殺されたいという思いが強くなっていくのが分かる。
確か、彼女は人を殺すのを止めて回っている筈。
なら、私は逆に人を殺して行こう。
そうすれば彼女は必然的に私の所へ来る事になるでしょう。
それまで、出来るだけ多くの仲間を集めるのよ真奈。