最終話[後悔]
「そんな訳無いじゃない」
「あの時、私達はちゃんと真奈達の存在を消したわよ」
「写真を見て思い出したとか、そういったレベルで魔法が解ける程ヤワな魔法を掛けていないわ」
当然ながら存在を消された人達には家族が居て、友達も居る。
写真や動画なども撮ったりするだろう。
だけど、妖精に存在を消されれば写真や動画に写っていても、消された人物だけ見えなくなってしまうらしい。
そこから独自の解釈が加わり、完全に存在を消されてしまうのだとか。
「でも、魔法少女達の記憶を変える事はできないのでしょ?」
「だとしても、妖精の掟で記憶を変えられた人の記憶を戻す事は禁止されてるわ」
「そうじゃないわ、華達の会話で思い出したんじゃないかって言ってるの」
真奈達が殺され、復讐の話しをしている所にハルがやって来た。
そこで、真奈達の名前がトリガーとなり、ハルの記憶が蘇ったの。
「だったら華達はどう説明するのよ」
「魔法少女は愛歌と朱音のみ、誰も華達の事を話題にする人は居ないわよ」
「そこだけど、一度記憶が蘇った人の記憶は変えられないんじゃないの?」
「なっ、それは……」
ニニが押し黙る。
下を俯き悲しそうな表情を浮かべている。
正直、私には朱音の推測が正しいのかは分からない。
だけど……。
「朱音、ニニを虐めないであげて」
「愛歌……、ごめんなさい」
「私が頼りないから、だから漆が……」
ニニが悪いんじゃない。
私が全部悪いんだ。
初めから朱音の言う通りにしていれば、こんな事にはならずに済んだのだから。
そう言ってニニを慰める私を朱音は見下ろし、酷くつまらなそうな顔でこう言った。
「あなたの愛はそんな物なの?」
「えっ?」
「これだけの魔力を持っていながら、あなたは何故、何もしないの?」
「人を生き返らせる事が出来るかも知れないのに」
人を生き返らせる。
漆が生き返る……。
私の目に希望が宿る。
「それとも好きな人に魔法を掛けるのは嫌?」
「嫌じゃない」
漆が生き返るんだ。
「フフフ、調子が戻ってきたようね」
「さあ愛歌、私にあなたの愛を見せて、あなたの側であなたの愛を感じさせて」
朱音ったら相変わらず何言ってるのか分かんない。
もしかして私に告白しろって言っているのかしら?
だとしたら、頑張ってみようかな……。
でも、その前に……。
「朱音、力を貸してくれる?」
「私ね、真奈ちゃん達を生き返らせようと思うの」
生き返らせて謝る。
許してくれないかも知れないけど、今の私じゃ漆に相応しく無いと思うし、何より後悔している。
そしてハルちゃんを救うんだ。
あの子が私から漆を奪った様に、私は彼女から大切な人達を奪ってしまった。
だから彼女を救わないと……。
「それでね、真奈ちゃん達と一緒に困っている人達を救うの」
「朱音、あなたも一緒に困っている人達を救いましょう」
「ええ、分かったわ」
そう言うと朱音は私を抱きしめてくれた。
嬉しい。
私、幸せ者だな。
こんな素敵な親友に巡り会えたんだもん。
朱音が困っている事があれば力になろう。
そう彼女の事を想っていると、背中に激痛が走った。
彼女から離れ、背中に手をやるとナイフが刺さっていて、そして私の視界はグルグルと回り、頭に激痛が走った。
目の前には噴水の様に血を吹き出している私の体と、笑顔の朱音。
「驚いたわ、頭だけになってもまだ生きているのね」
「頭から再生するのか、それとも体から再生するのか、興味あるわ」
「それとも、このまま死ぬのかしら?」
声帯を失った私は喋る事ができない。
それでも聞かずにはいられなかった。
どうしてこんな事をしたのか。
一生懸命に口を動かして伝える。
それが伝わったのか、朱音は私にこう言った。
「言ったでしょ、私は愛歌の味方だって」
これが私の聞いた最後の言葉となった。
完
愛歌END
実は私、魔法少女なの…。第六部完結しました!
また、いつもの様に読み返しと編集、休んだりして第七部を書いていこうと思います!
これからもどうかよろしくお願いします!