第3話[嫉妬]
真奈達と別れ、桃香一人を狙う筈だった。
なのに何故か真奈が戻って来て私達は真奈と桃香、二人と対峙していた。
「大丈夫、桃香ちゃん」
「二人共、どうしてこんな事するの?」
どうして?
そんなの決まってるじゃない。
ソイツが偽りの愛を語る魔獣だからよ。
あっ、そうだ。
いい事を考えた。
真奈にあの事を教えてやろう。
そして、振られて悲しみと絶望を与えてから殺してあげるの。
真奈もきっと私達に感謝する筈だわ。
気持ち悪い奴を殺してくれてありがとうってね。
そう思い、私は真奈に桃香の全てを話してあげた。
「止めて、言わないで」
そう必死にお願いする桃香。
そんな彼女の態度が返って私の話しの信憑性を増す事に。
全てを話し終え、私は真奈が何て言うのかを待った。
「桃香ちゃん……」
「ごめん、私、恋愛とか良く分からないの」
思わず口元がニヤけてしまう。
ふざけた愛を求めるからこんな目に遭うのよ。
ざまあみろだわ。
そう思っていた。
なのに……。
「それでも、私は桃香ちゃんと一緒に居たいと思ってるよ」
「恋愛とか良く分からないけど、桃香ちゃんが求めるのなら私は……、頑張ってみようと思う」
「だから泣かないで」
はあ?
何よソレ。
何幸せそうなオーラ出してるのよ。
こんなのってあんまりじゃない。
ふざけないでよ。
どうして偽りの愛を語るコイツが幸せで、漆一筋で頑張って来た私が幸せになれないの。
どう考えても可笑しいじゃない。
心が抉られた様に苦しい。
何故だか涙まで出てくる。
そんな私に気づいてか、真奈は私に優しい言葉をかけてくれた。
「大丈夫?」
「何かあるなら話しを聞くよ、相談にも乗る」
「だからもうこんな事は止めて」
「お願い」
そうか……、コイツこそ悪の根源だったのね。
人を垂らし込み、偽りの愛を与える。
そうよ、コイツさえ居なければ……。
などと数分前までの私なら思っていたのだろうか?
今はそんな事は思わない。
今の私にあるのは醜い嫉妬心だけ。
私も漆にああ言って欲しい。
どうしてアイツだけあんな言葉が貰えるの?
そんなのズルいじゃない。
自分を磨く為に稼いだお金を費やした。
漆に自慢だと言って貰う為に、寝る間も惜しんで勉強や仕事を頑張った。
なのにどうして、私の努力は報われないの?
「予想外の事態ね」
「此処は一旦引きましょう」
「私が上手く話しをつけるわ」
引く?
馬鹿言わないでよ。
引ける訳無いじゃん。
私に……。
愛歌にこんな思いをさせたコイツらを生かしておける訳無いじゃない。