第1話[想い他人]
テレビ収録から暫く経ったある日、私はクラスの皆んなに囲まれていた。
皆んなが口を揃えて「テレビ見たよ」と言ってくる。
他にも共演した俳優はカッコ良かったかや、女優は可愛かったかなど聞かれ、私は精神的に疲れていた。
何が俳優よ、何が女優よ、漆に勝る人間なんてこの世にいる訳無いじゃない。
でもまあ、人付き合いは大切だし、面倒臭いけど笑顔で接しないとね。
私は作り笑顔で皆んなと接し、受け答えをする。
本当に学生って大変だわ。
無理に他人と合わせないと学園生活なんて上手くやっていけないんだもの。
ホントヤダ。
その日の帰り、私は漆と何処か寄り道をしないかと話しながら下駄箱へ向かう。
そして漆が下駄箱を開けた時だった。
「何してんの?」
嫌な予感がする。
どうしてさっさと靴を取らないの?
何、紙切れ何か手に持ってんの?
「初めてラブレター貰っちゃった」
漆のその言葉に私は動揺していた。
「い、今時ラブレター何てキモいよね」
「う、うん」
どうしてハッキリ「うん」と言ってくれないの?
私に合わせているつもり?
何なのよ。
私は漆の為にお洒落を勉強して、モデルもやって、勉強だって頑張って……。
なのに、何で。
何でそんなラブレター貰って顔を赤くしてるのよ。
「ごめん、先帰るわ」
「愛ちゃん」
「いいから、一人にして」
私はそう言って漆の前から去って行く。
一体、誰が漆に告白する気なんだ。
どうせ、気持ち悪い男に違い無い。
「それでお前、三芳にいつ告るんだよ」
「明日、ちゃんと手紙にも待ち合わせ場所書いた」
何だお前か。
校門の前で馬鹿騒ぎする男子を見て、私は吐き気を覚えた。
クソ気持ち悪りぃ顔しやがって。
何?
私以上にお洒落も何も勉強して無いじゃない。
そんな努力もしないで私から漆を奪おう何て……。
許せない。
奴が憎い。
殺してやりたい程憎い。
だけどそんな事できない。
そうすれば私は犯罪者となり、永遠に漆の側に居られない。
狂おしい程の殺意に苦しみながら、私の前に小さな妖精が現れた。