最終話[地獄]
「もう止めて」
ミミの叫び声が聞こえ我に返る。
私の体は血で赤く染まり、振り返るとそこには無数の死体があった。
周りには誰も居ない、あるのは私を囲んだパトカーと大勢の人の遺体。
「何よ……、これ?」
「私は朱音と戦っていたんじゃ……」
「朱音なら大分前に華が殺したわ」
ミミがそう言って語り始めた。
朱音を殺した私は街に出て、道行く人達を殺して回ったらしい。
そして、パトカーに囲まれても私は人を殺し続けたという。
何度も呼びかけるミミの声を無視して。
「頭が痛い」
「魔力の使い過ぎかしら」
「一度家に帰って休んだら?」
「うん、そうする」
私はミミに魔法をかけて貰い、体中についた血を落としてもらう。
それでも何だか気持ちが悪いので帰ってお風呂に入って、そして寝ようと考えた。
自宅にワープして、家に上がる。
リビングに着くとそこには両親の変わり果てた姿があった。
「何よコレ……」
ふと朱音の言葉が頭を過ぎる。
まだ復讐は終わっていない。
その言葉の意味を理解し、私は膝から崩れ落ちた。
愛歌を殺して終わりだった筈なのに、どうしてこんな……。
悪い夢だと思いたい。
そう思いながら私は瞼を閉じた。
この世界では理不尽な事で溢れている。
だってそうでしょ、華にとって私や愛歌の命なんて何の価値もない。
そこら辺に転がっている石ころの方がまだ価値があるわ。
子供が蹴って遊ぶ程度にはね。
そう言って、朱音は私の前で笑ってみせた。
「私はね、前から可笑しいと思っていたの」
最も重い刑罰、死刑ですら全く釣り合いが取れていない。
だって、被害者の命と比べて加害者の命なんてゴミそのものじゃない。
そんなゴミと掛け替えの無い大切な命が釣り合う訳が無い。
それでも、人々は死刑を望む。
加害者に生きていて欲しく無いから。
憎くて苦しみ、そして日々が悲しくて寂しい。
自分はそんな日常を送っているのに、相手は幸せそうに生きている何て、想像しただけで許せないじゃない?
「華、あなただってそうでしょ」
「愛歌や私が憎くて堪らなかったでしょ」
「でも、あなたも同じ事をしちゃった」
「大勢の人達があなたを憎み、そして死んで欲しいと願っている」
違う、私は……。
朱音が私を背後から抱きしめる。
「そう、あなたが悪いんじゃない」
「全てはこの世界が悪いのよ」
「人の死でさえ、理不尽に訪れるこの世界が」
「華、私が力を貸してあげるわ」
「だから、この世界を一緒に滅ぼしましょう」
「この理不尽に覆われた世界を」
私はリビングで目を覚ました。
両親の死という現実は変わらない。
もしかしたら静香もこの世に居ないのでは無いだろうか。
この世界を滅ぼすか……。
私は服を着替えて、外に出た。
そして……。




