第1話[変化]
「ねえ華ちゃん、何かあったの?」
「えっ、何にも無いけど……、何で?」
「いや、何でも無いならいいんだ」
いけない。
私ったら表情に出てたんだ。
しっかりしないと。
ハル達にイジメられている何て誰にも言えない。
特に、静香だけには絶対に言えない。
悟られてもダメなんだ。
翌日の朝。
登校した私をハルが呼ぶ。
「ねぇ、華」
「私、華の事が好きなんだ」
「華も私の事、好きだよね?」
何が好きだ。
好きなら私をイジメたり何てしない。
だけどそんな事を言える訳も無く、私はハルに好きだと言う。
「だったらさ、今度静香の家に行って静香を殴って来てよ」
「あいつに逃げる場所何て無い事を教えてあげて」
「できるよね?」
「だって私達、両思いなんだもん」
「そんなのできる訳ないでしょ」
ハルの平手が私の頬を打つ。
それでも私は心の中で笑っていた。
言ってやった。
ハルにキッパリと言ってやったんだ。
声が震えてみっともなかったかもしれない。
先の未来に恐怖して体が震えていたかもしれない。
それでも私はハルに言ってやったんだ。
「ねぇ、ハルちゃん」
「制服切っちゃおうよ」
「そしたら、この馬鹿も立場分かるって……」
「あっ?」
「馬鹿はあんたでしょ」
「そんな事したら私達がコイツをイジメてた事がバレるでしょ」
ハルに睨まれ、取巻き達が恐怖で縮こまる。
私もこの取巻き達と同じだったんだな……。
そう思うと胸が苦しくなった。
「華、さっきは殴ってごめんね」
「そしてこれからも私達と仲良く遊ぼうね」
そう言うとハルは私の前からいなくなった。
完全にイジメの標的にされてしまったなぁ。
まあ、それでもいいか。
罪を少しでも償えるならそれでも……。
そう思っていたのに……。
給食前に静香が学校へ登校して来た。
「アハッ、静香」
嬉しそうに笑みを浮かべて静香の名前を呼ぶハル。
そんなハルとは対照的に私は暗い表情を浮かべていた。
どうして静香が学校に?
まさか昨日、私が辛そうな姿を見て来たって事?
そんな……、そんな……。
給食の時間になりハルが静香に向かって給食を運ぶ。
「静香の為に給食持って来たよ」
「ほらっ、食べて」
ハルの運んできた給食の中には虫が入れられていた。
恐らく私に食べさせる為に捕まえてきたのだろう。
「ありがとうハルちゃん」
ハルに笑顔を向け、静香はスプーンで虫をすくい口に運ぼうとする。
そんな中、私はスプーンをはたき落とした。
「こんなの食べちゃ駄目」
「華ちゃん」
騒ぎを聞きつけた担任の先生が駆けつけて来る。
その間、ハルはスプーンを拾うと同時に虫をこっそりと回収していた。
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「いえ、別に」
笑顔で担任の先生に対応している中、ハルは一瞬だけ私を睨んだ。
私はハルから視線を逸らし恐怖からか俯き体を震わせた。