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薄幸ポジションだけど幽閉ルートは断固拒否します  作者: つぶあん
私が薄幸キャラなんて冗談でしょう
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上からの命令とあれば断れないのが社会人

「ん」

連れてこられた席で私は落ち着かなかった。これまで体験したことがない注目に、頭が真っ白である。

他の子ども達が遠巻きで見ている中、ギルは何でもないように私のお皿にどんどんクッキーやらケーキやらを乗せていく。

他のテーブルと見比べてみれば、このテーブルだけお菓子が若干豪華だ。さらによく見ればカップや食器に王家の紋章が付いてるじゃないか。

これって王子専用テーブルなんじゃ?

さぁっと血の気が引く。

「嬉しいですがそんなに」

恐縮しすぎて青い顔をしていると思う。しかし相手は一向に手を緩めない。

「どーぞ」

この感じ知ってるー。俺の酒が飲めんのか!と飲み会でめっちゃ注いでくる部長と同じだー。

つまりこれを食べるのは義務ってことね。

今更席を離れても、もう注目され続けるんだ。お腹も空いているし、よし食べておこう。

目立たないという本日の目標を諦めて、お菓子を受け取った。

もそもそとクッキーから食べる。なんと美味しい。口に入れた瞬間、ホロホロと崩れ落ちて濃厚なバターの香りと爽やかな砂糖の甘みが広がる。

さすが王宮、こんなに美味しいクッキーは初めて食べた。

美味ぇ美味ぇ、おらこんなお菓子喰ったことない。クッキーもパウンドケーキも極上だ。

しかし美味しさの反面、ひたすら与え続けられる小麦粉系の食物で口の中の水分めっちゃ持っていかれる。口の中のパッサパサだ。

水分をくれないか、我喉は水を欲している。


詰まりそうな胸を叩いていると、

「よろしければこちらをどうぞ」

私の気持ちを察したかのように柔らかな声をかけられた。見上げると深い紫の程よいドレープのあるドレスに二連パールをつけた女性がお盆を持ったお付きの人を連れて立っている。美しいプラチナブロンドは編み込みで纏められており、甘い顔つきを程よく引き締めている。

「ロザムンド・シャポー、ルイーズの娘ね。本当にお母様にそっくりね」

ふわりと笑いかけられると思わず顔が熱くなってきた。この人は勿論知ってる。

「お、王妃様…」

「緊張しなくて良いのよ。邪魔をしてごめんなさいね。この子…ギルがあなたを気に入ったと聞いて飛んできてしまったの」

気に入る?いえ今小麦詰まらせようとされておりますが。

「ギル、ロザムンドを案内してあげたのね。社交としてエスコートはとっても大事な事よ」

王妃様の言葉にギルは何も返さずに、じっと見るだけである。すると王妃様は少し残念そうに眉を垂らしてみせた。

「やっぱりお話ししてくれないのねぇ」

「お話ししない?」

単語とはいえさっきから結構喋っているけど…。

「ロザムンドは今日が初めての参加なのね」

「はい」

「ギルフォードは物心ついたころからお話しをしたことがなくて、私たちとても心配していたの。体には問題ないって言われていたけど、とても心配で。実際に何かあるんじゃないかと何人も医師に調べさせたりしたのよ。それが今日、先ほどいきなりロザムンドとお話をしたって聞いてたものだから」

そうかだからさっきの男の人はあんな様子でいたのか。

何にせよ、不敬ってならなくて良かった。


ちらりとギルを見ると、母親の不安そうな顔にさえ興味はなさそうであった。その様子を見ていた王妃様はため息をついた。

「ロザムンドとはお話しするの?」

王妃様からのその問いにもギルは反応を示さない。その姿をみて少し考えてから、王妃様は私に耳打ちした。

「ロザムンド、ちょっとギルに何か質問をしてみてくれない?」

親しげに言われるが、王妃からの依頼である。断れる訳がない。

これが原因で、幽閉コースに入るかもしれないと思うと体が強ばった。

「ギ・・・ギルフォード様は、どの、っどのお菓子がお好きでしょうか」

我ながら酷いどもりだ。

ギルは私の問いに対して、先ほどの王妃と同じようなポーズで考えてから菫の花で飾りがされているケーキを指差した。

「これ、ロス、同じ。好き」

そう言えばさっきも藍色の飴玉くれたなぁ。紺色が好きなのかな。

「そ、そうなんですか!綺麗なケーキですね」

と返事をする。


王妃様は今度は演技がかった程盛大にため息をついた。

「ロザムンドとしかお話ししたくないのねぇ・・・。何でかはわからないけど、そう決めてるみたいね。ーーそうだわ!ねぇロザムンド、凄く申し訳ないんだけど、暫くここに居てくれないかしら?」

「ええ…え?」

今なんか不穏な単語を聞いた気がする。

「ロザムンドがギルに人との会話をするように説得して頂戴!」

そう言って、王妃様は両手でがしっ!と私の手を握った。


かしら?って言われても断れる訳が無いってことはわかる。王妃からの申し出を断るのは明らかに、印象が最悪だし、うちの状況から言っても断る方法がないだろう。

なんか王宮と縁が出来てしまったような・・・というか説得が上手く行かなかった場合、どうなるの?

掴まれた右手に心地好い温かさを感じながら、息を飲む。

幽閉コースまったなし?え、ちょ、なんだこれ。

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