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薄幸ポジションだけど幽閉ルートは断固拒否します  作者: つぶあん
私が薄幸キャラなんて冗談でしょう
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中学生から高校生の頃にハマった物ってその後の人生変えるよね

「痛い」

本日3回目の頬抓りに顔を歪ませながら、私ーーことロザムンドはため息をついた。

もう叫ぶ気力もない。


朝ご飯を食べ終わり、落ち着いた所で私は状況を整理してみた。

この容姿は人生を捧げに捧げた狂愛ゲーム『ジュエルパレス』のいちキャラクター『ロザムンド・シャポー』の容姿を丸っと幼児化させた物なのだ。発売から早15年、中学生の頃からやり続け、続編も続々編も勿論やったがやはり無印の世界観は唯一で、それこそ病めるときも健やかなるときも、人生の起き伏し浮き沈みを共にした乙女ゲーム。私をオタクへと誘った恐ろしい不動の人気を誇る同世代のオタクなら誰でも知っている、それが『ジュエルパレス』だ。

その長年プレイしてきたゲームのキャラクターになってしまっているのだ。当然周りは私をロザムンドだと思っていて、見かけもしっかりと彼女の姿をしている訳で...。ここでもし『気がついたらゲームのキャラクターになっていますが、私はロザムンドではありません。これは夢でしょうか』とでも口にすればそれこそ心配されてしまうか医者に連れて行かれてしまうに違いない。

どうするべきかーー悩み始めるや否や天使か悪魔かがこう囁いた(気がする)。

『夢でも、妄想でもどちらでも良いじゃないか。とにもかくにも大好きだったゲームの世界に居るのだから楽しんでしまえ!』

確かに。こんな経験そうそうない。生まれてこのかた地味に暗くおまけにボッチで生きてきたのだ。夢が覚めるまでの間思いっきり満喫してみようではないか!!


......いやまて、ちょっと待て私。思い出してみろ。『ロザムンド・シャポー』のゲームでの立ち位置を。

ロザムンド・シャポー。一応主人公格の一人ではあるが、メインヒロインではない。ポジション的には薄幸美人。性格は大人しく自己主張のない女で、特徴は『影の薄さと陰気さ』である。

ファンの中でも「一巡したらもう使わないよねー」とまで言われる存在感も人気もないキャラクターだ。(私は三巡したけど)

おまけにグッドエンディング以外では誰にも目をかけられないでひっそりと消えていくーー他のキャラクターを使っていると最後の行方すらも説明されない、製造元に愛されない『不憫』ヒロインなのだ。

さらに付け足してしまえば、バッドエンディングでは『他のヒロインに悪意ある行為をした』として僻地の塔に幽閉されてしまうのである。

『悪意ある行為』ってなにしたんだよ。


独り言でがっくりと肩を下げ、持っていた刺繍に目を落とせば・・・・・・ガタガタである。いや、言い訳させて下さい。刺繍とか初めてやるからね、こちとら家庭科とか小学校くらいでしか真面目にやってなかったからね。刺繍とかカリキュラムになかったから、悪いのは私ではなくて日本の学校カリキュラムだから!

「・・・ねぇメアリ、外に出ても良いかしら?」

刺繍はもうやりたくないんじゃー、と言いたいのを飲み込んでそうお願いするとメアリが驚いた顔をしていた。

「お嬢様、今なんとおっしゃいました?」

「え、外に・・・出たいなぁ~なんて」

「『外』!?お嬢様がですか?」

あれなんかダメなの?深窓の令嬢って文字通り日光に当たっちゃダメな感じ??

「だめなのかしら」

おずおずとそう問えば、メアリは相変わらず目を見開いて言った。

「ダメではございませんが体調はよろしいのですか」

「体調??」

首を傾げながらハッとする。そうだ、ロザムンドは体力がないというか病弱とかいう設定だった。うーーん?でも私熱もないし、咳き込んでいる訳でもだるくもない。朝ご飯はおいしかったし、外は良い天気で窓からのぞけば庭にはでっかい犬が居る。犬、犬、わんこ様なわけで、私は犬が大好きなのだ。ちなみに猫も好きだ。犬猫派の戦いには心が痛むばかりである。どちらも違ってどちらも良い。

犬良いよ、もふもふ出来るし可愛いし。今の気分を癒す為にもわんこと戯れたい。

「元気だし、あのワンちゃんと遊びたいのだけど」

「ジョゼフとですか!?」

「そう、ジョゼフと」

やばい、飼い犬の名前知らないってどうなんだろ。変なのがバレちゃう。

そう思いちらりとメアリを盗み見ると信じられないと目を見開いている。けど、なんか名前を知らないことではないところに驚いてるっぽい。

「お嬢様、ジョゼフのこと怖いと言って避けていたんじゃ・・・」

おおぅ、まさかのそっちか。確かにでっかい、子どもの私と同じくらいの大きさがあるけど、ふさふさした毛並みで温厚そうなわんこじゃないか。怖いはずがない。子どもの頃から犬を飼うのに憧れていたけど、賃貸マンション育ちじゃ飼えなかったのよ。こんな素晴らしい状況見逃せますか。

「・・・今日は遊びたい気分なの」

「そうですか・・・そう言えば今日はお食事も良く召し上がっていらっしゃいましたものね」

「そ、そうね。体調が良いの」

うふふ、と知る限り最高の上品っぽさで笑ってみせた。

いやいや、朝ご飯抜くとか無理ですから。起きた瞬間お腹がすいているタイプです。

「ですが、本日はこれからおば様がいらっしゃいますので、遊ぶのはその後になさって下さい」

申し訳なさそうにメアリは言った。

おばさま??ロザムンドにそんな関係の人居たっけか?

誤字のご指摘ありがとうございます。

修正しました。

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